第五十三話 記憶の蘇生
白いローブに身を包んだチャオを見て、カイスは如何にも不思議そうな顔をしていた。
ホワイトはそのチャオに近付くと、ローブの胸倉を掴んで、睨みつけた。
ホワイト「てめえ、何モンだ?どっから来た?てめー・・・『何でそんな姿をしてる』!?」
違う。ホワイトは白いローブのことを言っているのではない。どうやら、ホワイトにだけは白いローブは見えないらしい。
デスベルグ「待て。まず、俺から事態を話す。」
カイス「私もそれが聞きたい。」
デスベルグ「・・・俺は、姫の命を優先に考えた。もし、組織に加担しなければ、即姫を殺すといわれ・・・だが、ホワイトだけは反抗した。いや、正確には、ホワイト将軍だけは。」
何故ここで、将軍とつけたのか、カイスには理解できなかった。確かに、この場にはホワイトがいるが、ホワイトはローブのチャオに夢中だ。
ダート「だから、ホワイト将軍を説得し、身を隠しているよう頼んだ。」
デスベルグ「しかしここで誤算があった。そうだろう、ゾルグ?」
黒いマントを脱ぎ捨て、ゾルグは姿を現した。青い、ダーク・ハシリの姿だ。目は、何故かは知らないが、黒い。
ゾルグ「不覚だった。まさか・・・まさか、白き刃が牙を剥くとは。闘いから避けたからだろう。」
『後は俺から話す。』
ホワイト「待ってたぜ。てめー、教えてもらおーか。それとも、この妙な服を取る方が先か?!」
『少年。いや・・・ホワイト=ザ=ラシアロスト。俺はお前であり、お前は俺であることを先に言う。』
それがどういうことなのか、理解できなかった。が、カイスは目を丸くして、驚いた。
そこにいる全員が、驚嘆した。ホワイトはいらだった様子で、「そいつ」を睨みつけていた。
ホワイト「さー・・・お前の名前を教えろ。」
『・・・ホワイト=ザ=ラシアロストだ。』
それは、紛れも無く、ホワイトと全く同じ姿だった。何一つ違わない。ホワイトと同じ姿だ。
名前も・・・口調も・・・容姿も・・・全て一致している。
カイス「ホワイト様・・・・・・」
ラリマ「あの・・・ホワイト・・・あ、ちがくて、えーっと・・・ローブを着ていない方!怒ってる?」
ホワイト「説明しろ!」
目つきを変えて、全員に訴えかけた。誰も、何も喋ろうとしない・・・だが、ガルフだけは違った。
ガルフ「伯龍。説明してやろう。こちらはホワイト=ザ=ラシアロスト。ガーランド大国三大将軍の一角。そして、おまえ自身だ。」
『俺は身を隠そうとする時、いびつな奴に出会った。そいつは「過去のミッドライトの持ち主」といって、俺にこう言った。「戦いを避けしものよ・・・罪を償うがいい」ってな。』
ホワイト「罪を・・・その罪で、俺が生まれたってことか。なんで?」
『お前は若くして、俺と同じ身体能力を持ちえている。そして、祖父、「ラシアロスト」の力をも受け継いでいる。お前は俺の分身・・・いや・・・正確には、お前が本物のホワイトだ。』
暗い表情で、「ホワイト将軍」はそういうと、ゾルグ王に目で合図を送ると、ラリマ姫の首にさがる宝石を外し、カイスに渡した。
『カイス。それを使え。それでこの俺と・・・ここに居る俺の「真実」を。』
カイス「・・・失敗すれば、死んでしまいます・・・」
『大丈夫だ。なあ、ホワイト。記憶が無いのだろう?この俺が記憶。お前が力。それが合わさり、初めて本物のホワイト=ザ=ラシアロストになる。さあ、やれ、カイス!』
ホワイト「・・・・・・いいぜ。賭けてやるよ。てめーが俺の記憶なんだったら、俺が力なんだったら、絶対に死なねえはずだろ!やれ、カイス!」
少しためらいながらも、「死の宝玉」を二匹のホワイトに向け、輝きだす。
それらは黒く、赤い光となって、ホワイトには、それが黒い服を着た、鎌を持った、仮面を被ったものに見えた。
爆発を起こすと、ホワイトの白いローブははじけ飛び、白い刀、ミッドライトは、煙を出して床に突き刺さった。
煙の中から現れたのは、一匹のチャオ。白い体に、赤い模様の、ヒーロー・ハシリ・ハシリ。そう・・・
ホワイト「・・・ただいまあっ!」
大歓声が起こった。ホワイトの帰還を、祝福して・・・だが、真の戦いは、ここからだった。
カイス「ホワイト様ぁっ!朝ですっ!」
かつて、三大将軍と呼ばれたホワイトは、同じ三大将軍のデスベルグ、ダートの裏切りにより、身を隠す填めに。
しかし、闘いから身を引いたため、白い呪いの刀、「ミッドライト」が反抗し、「記憶」と「力」は分離してしまう。
その「力」が、「記憶」のなかったホワイトの姿だ。
だが、「記憶」のホワイトが国の危機に現れた。そして、ラリマ姫の所持する「死の宝玉」によって、元に戻ったのだ。
ホワイト「起きてるっちゅーに。」
カイス「は、はあ・・・」
がっくりと腰を抜かして、ホワイトが呟いた。呆れた声で、カイスは二つ返事をする。
ゾルグ「準備はいいのか?」
続く