第五十二話 白
―師匠!貴方は正義そのものなのだ!それなのに貴方は何故!―
アール「・・・カイス・・・無理だ。お前では私に勝つことは出来ない。」
カイス「くどいぞ。私は勝つ!勝って・・・ホワイト様に報いる!行くぞ・・・師匠・・・否・・・デスベルグ!」
アール「その名は捨てた。今の私はアールだ。その名ではない―」
手早なカイスの攻撃を避けながらも、アールは喋っている。力が違いすぎるのだ。
だが、突然カイスは攻撃を止めた。急に暗い表情になり、アール、デスベルグをにらみつけた。
カイス「何故・・・時には・・・真剣に戦え!私は貴様相手に手加減などせぬ!私は貴様を倒す!」
ラリマ「ホワイト!カイスが・・・!」
ホワイト「分かってる。でも、今はお前を守るほうが先なんだ。」
力量の違いは、ゾルグから聞かされている。だが、敢えてその場に乗り込むのは、ラリマ姫を危険な目にあわせかねない。
ホワイト「・・・・・・何だ・・・この気配・・・んなっ!」
黒いフード・・・黒いマント・・・右手には、謎の紋章が刻まれている、黒いカケチャオ。港町、ヒュールズでであった・・・
ガルフ「久しいな、伯龍。さて・・・決戦だ。それとも放棄するか?」
ホワイト「ラリマ・・・下がってろ・・・」
一瞬、身動きが止まり、ガルフの表情に迷いが生まれたのが見えた。ホワイトが、白い刃の刀、「ミッドライト」を鞘から抜こうとしている。
ガルフ「何故・・・貴様がその刀を持っている・・・まさか貴様・・・彼の継承者・・・なのか・・・!?」
―その通りだ、ケルビム―急に部屋中に響き渡るこの声は、聞き覚えのある声だ。
といっても、顔を合わせたのは一度も無い。何故かと言うと、「夢」の中の存在だからだ。
いや・・・夢ではない。アレは確かに、ホワイトを助けていた。ウォリアの手から。
現れたのは、白いローブに身を包み、目だけが服から覗いている、チャオだ。
ガルフ「貴方は・・?死んだと聞かされていたが・・・そうなのか?」
『伯龍・・・俺がラリマ姫を守る。その隙にお前は、カイスを助けに行け。』
ホワイト「・・・信用していいんだな?」
『当たり前だ。信じられないというのか、自―兎も角、行け。さもないと、カイスが死ぬこととなるぞ!』
カイス「・・・ぐ・・・」
倒れながらも、立ち上がろうとするカイス。アール、いや、デスベルグは、冷酷な表情で、それを見つめていた。
アール「去れ。もうお前に勝ち目は無い。」
カイス「それでも私は・・・去らん。貴様を倒し、堂々と去ってゆく!」
アール「・・・ならば・・・我が手でお前を永遠にこの世から去ってもらおう。闇の―」
青い光がアールの体を吹き飛ばし、地面に倒れさせた。カイスの目の前に現れたのは・・・
白い体、赤い模様、ヒーロー・ハシリ・ハシリの・・・ホワイト=ザ=ラシアロストだ。
ホワイト「デスベルグ!今から俺が相手になるぜ!」
アール「私の名はアール。伯龍・・・ガルフ=ケルビムが相手になるのではなかったか。まあよい。闇の十字架!」
黒い光が十字架を作り出し、ぐるぐると回転して、衝撃波を飛ばした。
白い刃の刀、ミッドライトを鞘から素早く抜くと、刃が月光に照らされ、刃が黒ずんだ。
衝撃波は一瞬にして消滅し、ホワイト自身、その力に驚いていた。
アール「・・・!忘れていた・・・月剣、「ミッドナイト」か!」
ホワイト「ミッドライトだぜ。しっかしまあ、こうも綺麗に黒くなるもん・・・ヒーズ!それに・・・誰だ?」
鎧兜を付け、傷だらけのダートが、ヒーズを背負ってやってきた。デスベルグの前に立つと、ヒーズをおろす。
ダート「デスベルグ・・・ウォリアは敗れ去った。恐らく、この子らならば・・・大丈夫だ。きっと助けてくれる。」
カイス「何を・・・」
アール「その言葉を待っていた・・・やっと俺は元に戻れるというわけだ。」
その時、黒い光の気配は消え、デスベルグは笑顔になり、ヒーズに手を当てた。
カイス「何をするつもりだ!」
デスベルグ「我が名は闇の死者デスベルグ。城についたとき、真実を話す。が、今はこの子の手当てが先だ。息を止めて居ろよ。闇の異次元!」
目の前が真っ暗になった。すると突然、街中の風景が、「王座の間」の風景へと変わった。
そこには、元気そう・・・いや、特注品だ。とんでもなく嬉しそうなラリマ姫と、白いローブのチャオと、ガルフ=ケルビム、ゾルグ王がいた。
ガルフ「まさか生きているとは思わなかったぞ・・・」
ゾルグ「帰ってきおったか。」
デスベルグ「・・・お前は・・・そうか。「時」なんだな。」
続く