第五十一話 息子VS悪魔
―勝ちたいか?―声が聞こえた。それは重く、低い声だったが、明らかに聞こえる。
声の発生源を探すが、どこにもない。第二の声を待つが、声はしない。そして、決意し、言った。
ヒーズ「・・・勿論だ。」
―ならば我が力―先程よりも高く、強い声で、言った。―その身に刻もう!―叫ぶような声で言うと同時に、ダートの盾が輝きだす。
―この力を使うと、少々リスクを生じるが・・・最終兵器に対抗するにはこれしかない。名は―
ダート「プロミネンス・バースト!」
盾から発される光が、ヒーズを包み込む。だが、光は凍結し、吸収されてしまう。
驚く程の速さで・・・驚く程の増幅量で・・・その時、ヒーズの体からは氷が翼のように生えており、剣は既に氷と同化している。
ヒーズ「破天荒―開闢!終わりだ、裏切り者目!」
ダート「破天荒開闢だと!?」
ヒーズ「氷結紅蓮剣っ!」
氷が突然赤く光りだし、ダートを覆いつくす―そして、全て割れた。ヒーズが倒れると同時に。
ダート「はあっ・・・く・・・まさか・・・破天荒開闢・・・!南無三宝の力を侮っていたようだ・・・だが・・・俺の負けか・・・」
剣をしまい、傷だらけの鎧兜を消し去ると、ヒーズを抱えて、城へと向かった。
破天荒開闢(はてんこうかいびゃく)という力の謎を、頭に入れたまま―
ゼビリット「よお。息子さん!」
いつもの調子で、いつもの口調で、ゼビリットはブレストに話しかけた。
冷静なブレストは微笑すると、ゼビリットを嘲るような目つきで見て、鼻で笑う。
ブレスト「懲りずに現れたな。だが、今度は負けんぞ。」
ゼビリット「懲りてねーのはてめーだろ。俺様の悪魔の力を恐れて、来ないんじゃねーかと思ってたぜ。」
ブレスト「さあ・・・始めよう。」
赤い光を右手に宿らせて、ブレストは真剣な目つきへと変わった。ゼビリットは黒い光を両手に宿らせると、振りかぶる。
ゼビリット「暗黒弾!!」
黒い光の弾を撃ち、四方八方からブレストを追い詰める。だが、それのどれもブレストには当っていなかった。
それもその筈だ。空中と自分の間に、赤い光の薄い盾を張っているのだから。
ブレスト「無駄だ。さあ・・・「悪魔」と呼ばれるその力、拝ませてもらおうじゃないか。」
ゼビリット「へっ・・・いいぜ!お望みとあらばなア!」
動きが止まると、途轍もない黒い光が、ゼビリットから溢れ出した。「覚醒」でも、「名の解放」でも、「開闢」でもない。
これが、「悪魔」という名の力。この黒い光が・・・最大の憎しみの証。
ゼビリット「おらぁぁ!ひゃーっはっはっは!」
黒い光を一点に集中させ、撃ち捲くる。だが、ブレストの盾を破ることが出来ない。
その為、ゼビリットは一つの攻撃に黒い光を集結させ、補充した。
ゼビリット「おらああ!」
巨大な黒い光は、ブレストを包み、空へと消えていった―が。そこに、ブレストはいた。それも、無傷でだ。
ブレスト「・・・その程度か?」
ゼビリット「・・・まぐれか」
ブレスト「いや違う。折角だから教えてやろう。次の一撃で貴様は死ぬのだから。」
微笑するが、その目は本気だ。それが分かるゼビリットは、苦笑いしながらも、焦りが見える。
ブレスト「高密度に圧縮した僕の「赤い光」を―自らの周りに「光儀刀」として構える。つまり、破れる事の無い最強の盾というわけだ。」
ゼビリット「・・・それがわかりゃ安心だ。てめーは攻撃できねー!てめーが攻撃すると防御が外れるからなア!」
ブレスト「残念だが予想が外れたな。言ったろう?これは、高密度に圧縮した「光儀刀」だと!」
気づいたのが遅く、ゼビリットは赤い光をまともに食らい、吹き飛んでしまう。
黒い光を慌てて構えるが、赤い光が旋回し、ゼビリットを捕らえたので、身動きが取れない。
ゼビリット「・・・へっ・・・今回は見逃してやるぜぇ・・・だが次は必ず・・・てめーを殺す。」
ブレスト「待てっ―」
黒い光と共に、ゼビリットは消えた。そこには、赤い光だけが、残っていた。
ブレスト「ち・・・逃がしたか・・・」
続く