第五十話 対する属性、氷と炎
アヴェン「―望雀!」
光儀刀、望雀(ぼうじゃく)と叫ぶと、緑色の光が一本の大きな剣になる。
それを振り回して、ウォリアを上から叩き落すと、ウォリアは地面に叩きつけられた。
ウォリア「・・・如何やら、甘く見ていたようだな・・・臨界両断!」
アヴェン「虚雷丸!」
黒い光の刃を、呆気無く緑色の光によって消し飛ばしてしまう。するとウォリアは飛び上がって、黒い光を四方八方に纏った。
ウォリア「邪光―全方位発射!」
アヴェン「穿閃波!(せんせんは)」
剣を大きく振り回したまま、上空へ投げるアヴェンとは対照的に、地面へと黒い光を撃ち続けるウォリア。
剣は上空へと消え、アヴェンはどこにいるかさえ分からないが、ウォリアは勝利を確信している。
ウォリア「終わりだな。」
アヴェン「だな。」
黒い光に剣を突き刺し、黒い光はガラスのように割れた。ウォリアは地面に落下し、緑色の光によって貫かれた。
間一髪、ウォリアは黒い光で防いだが、ダメージが大きすぎて動けない。
アヴェン「マリテールの名の下に、黒き光を封じる!」
素早く緑色の光をウォリアの腹に乗せ、黒い光は全て消え去った。
呼応するかのように、ウォリアの体も無くなっている。
アヴェン「ふう・・・一件落着。後は・・・ガルフか。」
ダート「裏切り者?・・・ふ、何を言っているんだ?」
ヒーズ「そうだろう?その為に犠牲になった者がいると、王から聞いたぞ。」
微笑を浮かべて、ダートを目の前にするヒーズ。剣には少しも触れていない。
空は黄昏れ。ダートが剣に右手をかけながら、にやりと笑った。
ダート「俺は決して裏切っては居ない。何故ならば・・・これが俺の道だからだ。お前が俺の前に現れるということは、お前の死を意味する。」
剣をスッと抜き、構えを取るダートに対し、ヒーズは瞬きもせず、動かない。
不動のヒーズを見据えると、ダートは剣を振り上げ、炎を纏った。これは・・・ラステの言っていた、「能力の一つ」だろう。
四大元素、「土」、「水」、「火」、「空気」の中の、火。それを操って、ダートは剣を縦に振り下ろした。
ダート「覚悟するんだな。今、ここがお前の冥土時だ。」
走り出し、剣を前にしてヒーズを睨みつけるダート。少しも動じずに、ヒーズは冷観する。
ダート「炎―ダイナミック!」
炎が唸りを上げ、燃え上がった。ヒーズは剣を素早く抜き取ると、左手に手袋を填めて、右手に剣を持ち、飛び上がった。
炎は飛び上がる道を追跡し、空中を飛んで迫ってくるが、左手を近づけるだけで、炎は凍結した。
ヒーズ「何だ、あっけない。」
ダート「もう一撃、行くぞ。」
空中に浮かんでいるヒーズの背後に回ると、剣を振りかぶり、炎を放った。
が、ヒーズの右手に持つ「コールドソード」を逆手で持ち、空中に地面があるように踏みしらすと、回転した。
ヒーズ「氷結核弾刀!」
炎ははじけ飛んで、凍結していった。回転が止まると、ダートが懐に入って、剣を突きつける。
ダート「あっけ無かったな。餓鬼。」
ヒーズ「接近戦に持ち込んでくれるとは―敬意を表する。」
剣を振り上げ、ヒーズの体から氷が作り出される。あわてたダートは、素早く地面に戻るが、その光景には驚いていた。
何も無いところから・・・いや、「空気中の水分」を凍結させているのだろう。
それにしても、その量には驚く。まるで大きな盾だ。それが、ヒーズの「地面」となっている。
ヒーズ「空気中の水分を膨張させ、凍結させる―これが僕の、大氷晶「アトミック・グレイル」という技だ。」
ダート「ならば、それ相応に応えてやろう・・・覚醒っ!」
赤い炎が燃え盛り、ダートの回りを旋回した。空中へ飛び上がると、氷が微量、溶け、再び凍結し、増加した。
炎を回転させ、剣に鋭く纏わせると、叫びと共に放った。
ダート「インフェルノ・ブレード!」
ヒーズ「―開っ・・・闢っ!―」
驚いたことに・・・ヒーズの頭上には、氷の結晶が、「ポヨ」となって、作り上げられていた。
開闢は、内なる力を外部に作り出すことによって、更に強化させる力。「凍結」は剣の力のはずだが・・・この力は、「能力」だ。
瞬時に炎は凍結し、自らに加わった。
ダート「成程・・・開闢も使えるのか・・・ならば、手加減はいらんな。」
ヒーズ「な・・・!なんだそれは!」
炎が鎧兜を赤く変色させ、大きな赤い盾が作り出された。恐ろしいほどの波動を感じる。
ダート「もし俺が勝った場合・・・お前の持ちうる紅蓮石を頂こう。それが無ければお前は「開闢」なぞ仕えんはずだからな。」
ヒーズ「では・・・もし僕が勝った場合・・・我が父上に謝るんだな。そして、詫びろ。」
すると、少し暗い顔になったダートが、黙って頷いた。まるで・・・そのつもりだ、とでもいうように。
ダート「これは・・・この星で生み出された炎の最終兵器。通称、A−LIFE。さあ、ゆくぞ!」
ヒーズ「・・・勝てない・・・くっ・・!」
続く