第四十九話 戦いの嵐
カイス「王・・・これをどう解釈する?」
ゾルグ「ホワイトは―記憶が無いと言ったな。ラステ!」
ラステ「無いだろ。俺らと会う前の記憶は・・・無いらしい。」
喋っている途中でホワイトが物凄く首を横に振ったので、慌てて最後の部分を付け足した。
すると、再び扉が開き、一匹の兵士が入ってきた。随分と取り乱している様子だ。
「た、大変です!組織の軍が攻め込んで来ました!五帝と思われる連中と、盗賊、ガルフ=ケルビムがいます!」
セザン「ガルフ・・・!?何故あいつが・・・!?」
ゾルグ「決まっておろう。奴等の狙いは「死の宝玉」だ。ホワイト!ラリマの護衛を頼む!」
ホワイト「俺なのかよッ!」
自分の名前が上げられたので、驚きながらもヤル気満々のホワイト。
アヴェン「敵の数は五。俺に、ルド、カイス、ヒーズ・・・大佐と中佐は戻るから・・・まあ、いい。兎も角、姫を頼んだぞホワイト!」
ホワイト「任せとけ!」
不思議な生き物に乗り、黒いチャオ達はガーランド大国を物凄いスピードで目指していた。
その生き物は、龍のようだが、胴体と手足がない。頭から翼が生えているようだ。
ゼビリット「チィッ!アール、無剣の兵士は任せたぞ!ボスの息子は俺がやる!」
相変わらず無言のまま、アールと呼ばれるチャオは同意した。
ダート「・・・まさか、テランの奴がやられるとは・・・思いもよらなかったが・・・ウォリア。お前は誰とやる?」
ウォリア「伯龍だ。私は奴にしか興味がない。」
ガルフ「奇遇だな、ウォリア。実は私も伯龍にしか興味がなくてね。」
仕方ない、といった様子で、ダートが呆れ顔になった。
ダート「俺が二匹、相手にしよう。お前等は伯龍を狙え。」
アヴェン「ここらの筈なんだけどな。あいつはいつもいつもいつもいつもここを通るから。」
自分に言い聞かせるかのように、そう呟くアヴェン。どうやら誰かを待っているらしい。
その誰かというのは、恐らく組織のものだろう。先程のブレストに引けを取るわけには行かない。
すると、上空に黒い光が見えた。それは怒涛の勢いで地上に落下してきて、アヴェンが構える暇もなく着陸した。
アヴェン「久し振りだな、ウォリア。元気してたかい?」
ウォリア「ほう・・・マリテールの生き残り、か。」
アヴェン「一族を滅ぼしに来て・・・以来か。お前をずっと探していた。」
右手でウォリアを指差しながら、宣言した。妖しげに苦笑しながら、ウォリアは言った。
ウォリア「最早、貴殿程度では私の敵ではない。私が興味を持つのは伯龍のみだ。」
アヴェン「俺に勝てたらいいぜ。そいつの所へ案内でもしてやるよ。」
ウォリア「・・・そうか。ならば・・・秒単位でおわらさせて貰う!」
右足を前に出したと思うと、ウォリアは体勢をわざと崩して、地面と体を平行にした。そこから黒い光を使い、ジェットのように飛び跳ねた。
だが、その動きを目で追って、アヴェンは鋭く「標準」をあわせているようだった。
黒い光を束ねて、ウォリアは放った。黒い光はアヴェンの緑色の光で防がれるが、ウォリアは素早くアヴェンの背後を取る。
すると、黒い光を暴発させ、両手からアヴェンに向けて放った。アヴェンは数メートル吹き飛び、地面に叩きつけられる。
ウォリア「貴殿の負けだな。さあ、失せろ。」
アヴェン「俺の負け?・・・何言ってるのか、さっぱりだね。」
何時の間にか、ウォリアの視界からアヴェンが消えていた。と思うと、上空から緑色の閃光が地面に突き刺さった。
上を向くと、そこにアヴェンの姿はなく、微かに緑色の光が残っているほどだ。
アヴェン「虚雷丸!」
背後から声がしたので、慌てて後ろを振り向くが・・・そこにもアヴェンの姿はない。
突如背後から圧力が襲い、吹き飛ぶと、黒い光を盾とし、衝撃を減らした。
ウォリア「・・・その力・・・絶対的な力は・・・伝説とされて来たあの力か・・・?」
アヴェン「ご名答。光の速度を最大限まで利用する遠距離法の術さ。但し―俺のはちと違う。さーいくぜ。光儀刀―!」
声がしたのは背後。つまり先程のパターンから言えば前にいる。しかし裏を取って背後の可能性もある。
一番いいのは、動かないことだと、知っているウォリアは、耳を済ました。それが手っ取り早い、捕らえる方法なのだ。
しかし、どこからも、何の音もしない。目だけで詮索するが、どこにも気配さえない。
ウォリア「どこへ・・・!?」
その時だった。地面から緑色の光が噴出して、ウォリアは上空へ吹き飛んでしまう。
上手く回転して、黒い光を右手に溜めると、放つべく振りかぶるが、今度は真上から衝撃が襲った!
続く