第四十八話 えまあじぇんしー
白い刃の、大きな刀だった。それは、ホワイトが愛用していた、刀だ。
ゾルグ「残念だが・・・ダートとデスベルグの裏切りによって・・・奴は・・・」
カイス「ホワイト・・・様が・・・死んだ・・・?」
ゾルグ「兎も角、ことは一刻を争う。ホワイトの頼み通り、カイス・・・お前が将軍職に・・・」
最早、カイスの口からは何の言葉も出なかった。狂ったように扉を開けて、城を抜け出した。
着いた先は花畑。そこには既に、墓標が立っていた。
カイス「・・・ホワイト・・・様っ・・・貴方の刀・・・です・・・」
墓標の前に突き刺すと、刀は日光を受けて、きらきらと輝いた。
カイス「・・・・・・・・・私は・・・之より城とは無関係とさせて・・・頂く。二度と・・・この場所には・・・現れませぬ。」
黒い羽織を深く被り、カイスはその場を去っていった。悲しみだけを遺して・・・
墓標の前に突き刺さっている刀が、再度日光を受けて、輝いた。
カイス「・・・ホワイト様・・・貴方が生きていたら・・・真実を聞かせて欲しかった・・・あの物語は・・・どういう結末になるのか・・・」
白い刃の刀を見据えると、その場を去ろうと振り向こうとした。―突然、白い刀は輝き、空中に浮遊した。
まるで、何かと共鳴するように。まるで、何かが近付いて来ているように。と思うと、上空にきらめくものが見えた。
カイス「ホワイト・・・様!?」
流星の如く、地面に落下してきた者・・・そこには、ホワイトの姿があった。地面に激突したので、大変痛がっている様子だ。
脇にラリマ姫を抱えており、のたうち回っている。その隙にラリマ姫が抜け出して、ホワイトを静観していた。
ホワイト「痛ってぇ!!あンの野郎っ!助けるなら最後まで助けやがれぇ!」
ラリマ「あっ!カイス!」
カイス「・・・大丈夫・・・ではなさそうだな。」
空に向かって叫ぶホワイトをみて、カイスが呟いた。と、ホワイトが目の前の刀に気づいて、立ち上がる。
ホワイト「なんだこりゃ?」
カイス「そ、それを触っては駄目だ!その刀は「剣聖」の力が宿っているんだぞ!お前でも触れたら一発で―」
ホワイト「触れたら一発で―なんだよ?」
微笑しながら、ホワイトは軽々と刀を持ち上げた。このとき、三つの考えがカイスの頭を過ぎった。
一つ目。話そのものが偽りである。いやしかし、だとすれば王まで嘘をついていることとなる。
二つ目。刀の種類が違う。いやしかし、だとすればこの刀を運ぼうとした兵士が傷ついたのは何故だ・・・
となれば・・・三つ目・・・だが、これはあからさまに有り得ない。ホワイトが・・・あのホワイト様と同一人物だとしたら・・・
ラリマ「ホワイト・・・それ、持ってるけど・・・どこも痛くない?苦しくないの?」
ホワイト「なんでそんなんなるんだ?全然平気だぜ?」
すると突然、大きな白い刃が、青い光の「鞘」に包まれた。驚いたホワイトは、刀を慌てて手放す。
だが、青い光の鞘は既に光から、実体化した黒い「鞘」へと変わっていた。
カイス「どういう・・・ことだ・・・?ホワイト、貴様、何をした?」
ラリマ「カイス・・・これはもう・・・お父様に言わなければ!」
刀を持ち上げたホワイトの頭を引っ張って、カイスとラリマ姫は城へと向かった。痛がっているホワイトは完全に無視して。
その時、城、王座の間では・・・
ヒーズ「僕が・・・王の息子だと?」
ゾルグ「・・・その通りだ。」
此方も驚いたことに、ヒーズはゾルグの息子だったらしい。つまりは・・・ラリマ姫の兄か、弟ということになる。
ヒーズ「ならば・・・何故隠していた!」
ラステ「王の息子となると、組織から狙われ易いから、ラリマ姫の兄であるお前を即刻、俺が引き取ったのさ。」
ヒーズ「・・・余計な事を・・・まあ、いい。処でこの紅蓮石、本当に貰っていいのか?」
周囲の、セザン、アヴェン、ブレスト、ラステ、ゾルグに答えを求めるように質問するが、答えは返ってこない。
どうやら、「好きにしろ」ということらしい。
ヒーズ「南無三宝の一つ、紅蓮石・・・か。では、頂いておく。」
カイス「王!王はいるか!」
扉を例によって蹴り飛ばし、開け、ゾルグ王が目を丸くしてカイスを見る。ここまで動揺するカイスを見るのは久し振りだというほどに。
ゾルグ「どうかした―!?そいつは、何があったんだ?」
ホワイト「あー痛かったぁ。」
刀を床に落として、角をさする。すると、刀は浮かび上がり、不思議なことに青い光から「縄」が作り出され、ホワイトの腰に装着された。
一番この状況で驚いているのはホワイト当人で、刀をあらゆる角度から見ている。
ブレスト「ほう。歴史上、最強の刀とされる「ミッドライト」を自らに記したか。」
アヴェン「ルド風情が「ミッドライト」を知ってるとは驚きだな。」
口を交わすだけで火花が飛び散るようだった。又か、という具合に、ラステが止めに入る。
続く