第四十三話 帰ってきたあの二人・・・いや二匹
両者共に、一歩も動かず、にらみ合っている。
片方は燃えるような赤い色に、鎧兜を身に付けた、ニュートラル・ハシリのチャオ。
片方は清めるような青い色に、陽気な表情の、ダーク・チカラのチャオ。
ラステ「お前もか・・・ダート。」
ダート「俺に指図するとは・・・随分偉くなったな、大佐殿?」
微笑と共に、嘲声が響いた。ここではラステ得意の砂術も使用できない。圧倒的にダートが優勢だ。
それを読み取ったのか、ダートが再び、嘲声で言った。
ダート「俺を甘く見ているのか?いくら大佐といえど、砂がなくては何も出来まい。」
ラステ「そうかい?じゃあ俺はお前を甘く見ているんだな。組織に加担する奴には、俺は負けない。」
呆れ返った様子で、ラステは苦笑を浮かべながら、嘲った。これにはダートも癇に障られたのか、腰の剣に手をかける。
ダート「昔からお前は呆けていたな・・・だから俺に勝てないんだ。」
ラステ「あーらそうでございますか奥様。実を言うと私、貴方様にお勝ちに来たのではございませんわよ。」
声色を高くして、気持ち悪いほどにラステは言った。あからさまに挑発している。
しかし、挑発に少しも動じず、ダートが剣をゆっくりと、引き抜いた。
ダート「手加減はせんぞ。」
ラステ「足加減はしてくださいね。」
見えなかった。剣を振りかぶった瞬間さえも見えず、交し合った。
一撃、すれ違っただけで、ダートの持つ剣は割れ、そのひびは全体に広がっていく。
ラステ「あーらら、それは剣加減ですかね?」
右手を握り締めては離し、握り締めては離しと運動させながら、ラステは左手を差した。
ダート「炎―ダイナミック―」
ボォッと燃え上がった炎が、剣のひびを修復した。ラステは右手を挙げて、向かってくるダートに構えた。
刹那、ダートがよろけ、吹き飛ばされ、剣は粉々に砕け散ってしまう。
見ると、ダートの周辺には、黒い砂が散らばっていた。それでも受身をとって、着地するダート。
ダート「・・・なぜ、どこから砂を・・・!」
ラステ「俺は「砂」ならなんでも使えるんだよ、パトラッシュ。そう、砂鉄もね。」
右手に黒い砂がまとわりついているのは、そういうわけだ。ダートの火炎をまっていたというわけである。
火炎が出れば、金属は劣化する。その劣化した部分を叩き割って、そこから砂鉄を取り出せばいい話だ。
ダート「だが・・・残念だったな。砂鉄は黒い光にしか従わん。黒い光で出来ている為に・・・な。」
ラステ「失敬。後ろ見ないとやばいッスよ。」
その言葉を聴いた途端、後ろから緑色の光と、冷気が放たれたので、慌てて飛び上がったダート。
入ってきたのは、水色ピュアのニュートラル・ヒコウ・ヒコウと、青いダーク・オヨギ・オヨギのチャオ。アヴェンとヒーズだ。
ダート「はあっ!」
ヒーズ「氷結核弾刀!」
上から降り注ぐ炎を、氷の剣、コールドソードの回転切りによって吹き飛ばすヒーズ。
両者共に、上手く着地した後、ラステはヒーズと向き合った。
ヒーズ「全て聞いたぞ・・・ラステ!」
ラステ「そりゃどーも。といっても、ヒーズ、お前の両親は・・・。」
ダート「敵は・・・こちらだぞ!」
緑色の光が先手を打ち、ダートを吹き飛ばし、黒い光の中へと消え去った。
ただ、今の段階での闘志は、ラステとヒーズの間で、向き合っているようだが。
アヴェン「あ、あのなあ。ま、水に流そう。」
ヒーズ「何故黙っていた。」
大変腹立たしい様子で、ヒーズが鋭く言った。相変わらずな口調を有りのままに、ラステも反論する。
ラステ「仕方ないだろ。お前の父親との約束なんだから。」
ヒーズ「僕の父親は・・・どこだ?」
ラステ「・・・一緒に着いてくるか?そうすれば、会える。全て教えてやれる。但し―」
そこで区切って、今来た道を後戻りしていくラステ。そこには、再び妙な雰囲気を漂わせるチャオがまっていた。
灰色の、ダーク・オヨギ・オヨギのチャオで、矢張り灰色のマントを身に着けている。
アヴェン「よお。待機ご苦労さん。」
「用は済んだか?―なら、行くぞ。国王がまっている。」
ヒーズ「・・・・・・・・・・・・・・・」
続く