第四十一話 師との対決

カイス「はぁっ!」

空中で剣を振りかぶり、アールの光儀刀の「断片」を切り裂き、着地するカイス。

両者共に無傷で、戦い始めてからほとんど時間が経っていないように見えた。

アール「どうじゃ、わしの戦術は?」

カイス「私が前に教わっていた頃の方が増しだったぞ・・・師匠?」

ニヤリと苦笑したカイスは、剣を振り上げた。アールは黒く光る光儀刀から、黒い光を幾つも作り出し、それらを「刃」の形に留めた。

放たれる黒い光を斬りながら走るカイス。素早く巧みな剣の腕前の前では、光さえも無力であろう。

そのままアールの目の前に辿り着いたカイスは、剣を振りかぶって、背後までくるりと回りこんだ。

カイス「は!」

上手く回り込み、効果的な一撃を加えたつもりだったが、あっけなく避けられてしまう。

・・・・・・・いや、正確には、「当らなかった」である。振りかぶった剣を、勢いのままに振り下ろしたのだが、空振りだ。

しかし、どう見てもアールの姿は、そこにある。剣があるにも関わらず、透き通っているように。

アール「どうかしたのか・・・のう、カイス!」

カイス「くっ」

黒い光刃の総列が一気に逆回転し、カイスを追跡した。走りまわり、なんとか避けきったが、壁を通り抜けて、再び戻ってきた。

遭えなく黒い光の刃はカイスを吹き飛ばす。金属なので、剣が突き刺さらずに、地面を引きずって立ち上がった。

アール「久しいわしの術に惑わされておるのか。昔はそのような行き様ではなかろう!」

再び黒い光刃の総列が作り出され、アールの光る光儀刀の指示に従うように、待機した。

カイス「何故だ?」

遠い目で、カイスはアールに問いた。

カイス「何故、裏切った?貴方は、兄上の最愛の敵。私の師だった。私に叩き込んだ全ての技術は、貴方から学んだものだ!」

アール「カイス。時は千を変え、又、其を刻む。何度も言ったじゃろうて。」

カイス「いい加減にしたらどうだ・・・貴方は・・・」

そこで、言葉を区切った選択の良し悪しは分からない。ただ、言うか言わないか、考えるには少々の時間が必要だったのだ。

カイス「正義の存在、なのだぞ・・・」

アール「其を私が判っていないと思っていたか?」

大分苛立った口調で、先ほどの老人のような口調は明らかに消え去っていた。

黒い光刃は、突如動き出し、四方八方からカイスを攻めた。時が止まっているように、カイスは動かない。

カイス「貴方は・・・私にかつてこう言った。「正義は自らに盾を作る」と。ならば・・・今の貴方に盾は無い!」

驚くべき光景が広がった。カイスの右手の剣を振るだけで、黒い光ははじけ飛び、消えた。

もう一度、黒い光の刃が作り出され、漸次とカイスを攻め立てるが、一向に進展する様子は見えず、カイスは剣を振り続けているだけだ。

アール「・・・盾なぞなくとも、私は負けん。己が真実を貫くのみが、我が刃だ!」

カイス「時が千を変えるならば・・・私は千の内に入らん。ただ一つ変わったのは、私の力だけだ。・・・とくと見ろ!」

黒い光は、衝撃と共に消え、周囲の金属の壁を切り刻んでいた。

何よりも、カイスの左手に握られているその剣からは・・・光が放たれていた。薄黄色い光だ。

カイス「行くぞ、デスベルグ!」

黒い光と、黄色い光がぶつかり合った。その光の後、立っていたのは・・・アール。

カイスは力尽き、倒れたようだ。だが、何故かアールも相当のダメージを負っている。黄色い光が黒い光を貫けられなかったのだから、無傷のはずだ。

アール「いるのだろう・・・出て来い・・・」

「やっぱり鋭いなあ。それとも当てずっぽうかい?」

出てきたのは、白い光の中から。どう移動してきたのかはわからないが、恐らく相当の力の持ち主であろう。

その姿は、ニュートラル・ハシリ・ハシリで、青い。三本の線が濃いのを見ると、ピュアのようだ。しかもサングラスをかけている。

アール「私にようか?」

「いつもの口調に戻していいぞ?俺はお前を知ってるし。」

気楽な様子でそういうと、カイスを抱えて、宣言した。

「じゃ、カイスは引き取っていく。ヴァルサとの約束でね。また会おう!」

風のように去っていくそのチャオは、アールを何故か、懐かしい気持ちにさせた。

アール「・・・デスベルグ・・・か。」

続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第208号
ページ番号
44 / 74
この作品について
タイトル
WHITE LEGEND
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ第179号
最終掲載
週刊チャオ第217号
連載期間
約8ヵ月24日