第四十話 兄弟仁義
テラン「どうしたあ!?」
少しも本気を出していない様子で、テランが黒い光を撃ち続けている。
繊細な動きで、セザンはそれを軽やかに避けているが、大分焦りが見えてきている。
セザン「お前に狙いを定めているのさ。」
テラン「そーかい!なら、これでどうかな?」
一旦、いや、一瞬、黒い光の連打はやんだが、突如又、先ほどよりも継続性の強い、「レーザー」のような形で、発された。
それには避けようがないので、セザンは仕方なく、ドクロのマークが付いた手袋を填めると、それを黒い光に向けた。
セザン「でいやあっ!」
空中を勢いよく空振りさせると、何もないところの「気流」が乱れ始め、黒い光は上へ弾けとんだ。
その隙に、足にも同じようなドクロマークのついたものを填めると、戦闘体制だ、という感じで、構えた。
テラン「やっとヤル気になったか。なら、俺もいくぜえ!」
黒い光を集結させて、右手に補充した。同時に、セザンも同じような行動を取る。
素早い反応・・・ほぼ同時、全く同時のタイミングで、テランの放った渦を巻く黒い光を、セザンも撃った。
セザン「ふ・・・俺にそんな攻撃が通用すると、思うなよ。」
テラン「ごもっともで!」
物凄いスピードで、テランはセザンの背後に移動すると、黒い光を放った・・・が、それは金属製の地面から作り出された盾で、防がれた。
テラン「金武手套か・・・!道理で・・・いや・・・でも・・・」
セザン「金武手套だ。あっている。だが俺のは、少しオリジナルでな。・・・金武手套に、記憶潜在差異乃理を加えている。」
少し説明を入れると、金武手套というものは、周囲の金属を自由自在に変化させることの出来るものだ。読み仮名は「きん しゅとう」
記憶潜在差異乃理は、自分の記憶にある「映像」を実現化させるもので、なかなか手に入らない一品だ。読み仮名は「きおく せんざい さい の ことわり」
テラン「足にもつけてあるんだな・・・流石は中佐様だ!」
セザン「いったろ。俺のはオリジナルだ。」
ありえないほどのスピードで、天井に飛び上がったセザンは、目の前からくる黒い光を避けた。
見ると、天井にぶら下がっている・・・いや、天井に立っている。まるで、吸い付くように。
セザン「金属に強力な磁力を生み出し・・・その勢いで飛び上がる。これが「磁力の理」。」
テラン「ほお・・・なら、こいつで!」
地面を叩き、テランは黒い光を間欠泉のように噴出した。それらを止まるまで避け続け、見事にセザンはテランと対峙した。
恐らく、所々に「磁力」を生み出し、素早く黒い光の境目に通り、避けていたのだろう。
セザン「さて・・・攻撃に入ろうか。」
テラン「へへっ・・・じゃあこっちも・・・それ相応にやらせてもらうぜ!」
黒い光がどんどん生み出されては集結し、生み出されては集結し続けている。
それらは剣となり、テランの右手に納まった。光儀刀を作り出したのだ。
それに対し、セザンは手袋から何かを出し、それらを束ね、一振りの剣とした。鋼鉄の剣だ。
セザン「はあっ!」
ボールのように弾き飛ばされた稲妻は、部屋のあらゆる所に付着し、繋がった。それらがテランを中心に回りだす。
テラン「光儀刀―『魔伝』」
黒い剣は黒さを更に増し、稲妻を吹き飛ばした。たったの・・・一振りで。
セザン「予測通りだ・・・兄。これで縁を断ち切ろう!」
テラン「こっちの台詞だぜ、弟!」
素早く天井に飛び上がり、部屋をくるくると動き回って、セザンはテランに近づいていく。
剣を振りかぶると、テランも動きを目で追って、剣をふりかぶった―
―一太刀、金属音が響き渡ると、テランはバタリと音を立てて、倒れこんだ。金属によって、動きを封じられていたのだ。
セザン「戦略勝ちだったな・・・兄。最期に認めよう。お前を俺の兄だと。」
・・・・・・・・・・無理してまで立ち上がろうとするところだけだがな・・・・・・・・・・・・
続く