第三十八話 役者は揃った
ホワイト「はあ!?んなこた認めねーぞ!」
ブレスト「僕は構わんが。こんな能無しでも、少しは役に立つだろうからな。」
その言葉で、ホワイトはやってやろうという気持ちにでもなったのか、黙りこくって何も言わなくなった。
意見は万丈一致(トラブルもあったが)、空中要塞の場所や構成について、話すために、セザンが面を向いた。
セザン「空中要塞は、西の国―三大大国の一つ、「デスオーク」の上空に位置する。そこへは、ガーランド大国の飛行船で行こうと思う。」
ゾルグ「異論はないな?」
ラリマ「あります、お父様。」
―風が吹き続ける、上空。太陽は照りつけ、雲は下に見える。ホワイトにしてみれば、珍しい光景だ。
そして、ラリマ姫がこんなに、姫なのに、はしゃぐのも珍しい光景であることだろう。
ラリマ「わぁっ!凄いですよ、カイス!」
カイス「はぁ・・・」
ブレスト「大変だな、彼女も。」
全く黒い体に似合っていない、ベージュのローブを身にまとって、ブレストがホワイトに話しかけた。
ホワイト「・・・いっとくけどな、俺はまだ、お前ぇのことを信用してねえぞ。」
ブレスト「構わん。なら、一つだけ言っておこう。僕の嫌いなものは・・・」
矢張り冷たい目で、ホワイトに背を向けると、ブリッジへと進んでいきながら、言った。
ブレスト「『闇』だ。」
ホワイト「・・・・・・・・・・・・・・・・ちぇっ」
「信用できないな。」
何処かの森。何処かの場所。飛行船で空の旅をしている中、二匹はひたすら歩いていた。
一匹は水色で、青い模様のついた、ニュートラル・ヒコウのチャオ。もう一匹は、青いダーク・オヨギで、手袋をつけている。
―アヴェン=デ=マリテールに、ヒーズ=フローツ=カーラットだ。
ヒーズ「アヴェン、それにしても、あのヴァルサとかいう、カイスの兄は信用できるのか?」
アヴェン「心配するなって。ヴァルサは俺の父さんの親友だよ。それに、あいつの忠実さは俺が一番良くしってる。」
ヒーズ「父さん?初耳だな・・・アヴェンの父親はどんな方だったんだ?」
昔を見つめるように、空を見上げた。丁度そこには、黒い空飛ぶ船の陰が、見えた。
アヴェン「馬鹿で、阿呆で、分け分かんないクソ親父さ。最期は俺を庇って死んでいきやがった。全く馬鹿だ。処でヒーズ・・・」
ヒーズ「・・・なんだ?」
アヴェン「ラステの奴は、死んだって言ってたけど、生きてるぞ。」
不意を突いて、アヴェンは言った。その上空には、再び黒い空飛ぶ船の陰が。
ヒーズ「ありえないな。父さんは確かに―」
アヴェン「否、この際だから話しておくけどな。」
そういって、足早に、そして口早に、アヴェンは何事もなかったように取り繕うこととなった。
これは、秘密だ。あいつにも言うなと言われてた。・・・そういう言葉を期待していたヒーズは、次に出てくる言葉に、驚愕した。
アヴェン「お前はあいつの子供じゃない。」
カイス「失敬な!!」
ラリマ「?」
首をかしげるラリマ姫を横に、ホワイトが怒鳴られている。どうやら何かカイスの勘に障ることでも言ったのだろう。
すると、セザンが来て、そろそろ空中要塞だ、準備しろ、と、告げた。
ホワイト「う、うるせーな。準備だってよ。急げ。」
カイス「こら、ホワイト!姫様を危険な目に遭わすなよ!」
分かってる、といったつもりで、ホワイトは右手を挙げた。
テラン「おやおやぁ、どういうことかな?」
―空中要塞―中枢―
『ふん。決まっておる。ゾルグの差し金じゃ。』
―本部―「五帝」会議室―
そこには、いつしかホワイトを襲った、セザンの実兄、テランと、他の四匹が居た。
一匹は「アール」と呼ばれる、ニュートラル・チカラ・ハシリの、黒いチャオで、老人のような口調のがそうだ。
今一つは、ダーク・ハシリ・チカラの、これまた黒いチャオで、眼の下に赤いインクで刺青を入れてある。
そして、もう一匹は、黒い闇の中に、金色の角のようなものが輝いている。光沢があって、壁によりかかっていた。
最後の一匹は、おろるべき「黒い気」を放つ、あの時のウォリアで、姿が見えない。
テラン「アール、ゼビリット、用意して置けよ。いっちょ交えるぜ。」
ゼビリット「分かっらー。さて、俺は・・・そうだな。「白龍」をいたぶるぜ?」
アール「待たれよ。其はわしの獲物じゃて。」
「白龍」と呼ばれる何者かを巡って、ゼビリットとアールは目線だけで火花を散らした。
ここで、テランと闇の中の誰かが、中和に入って、何とか治まった。
ウォリア「「白龍」は・・・私がやる。テラン、貴殿は実弟を。アール、貴殿は無剣の兵士を。ゼビリット、貴殿は裏切り者を。大佐殿は―」
『俺がやろうか。』
赤い体が、鎧兜から所々、除いていた。腰には一本の長刀と、一本の短刀が鞘に納まっていた。
続く