第三十三話 危険地帯
どうやら、言うのをためらっている様だ。それもその筈。見張っておけといわれたのに、逃げ出されたら罰則ではすまない。
そして・・・城中に国王、ゾルグの驚声が響き渡った。
ホワイト「きりがねーな。」
左手の青い光を徐々に消失させつつ、ホワイトが言った。丁度、商業場の獣を全滅させた後だ。
ラリマ「ホワイト・・・何か、近づいてきます。」
ホワイト「あ?そうか?」
どこまでも鈍感な奴だ。―同時に、青い光は消え去った。すると、キョロキョロとあたりを見回し、こっちだ、と、ホワイトが走り出した。
それを追うように、ラリマ姫も走り出した。
ラリマ「処で、ホワイトは如何なる場所からいらっしゃったのですか?」
ホワイト「はい駄目っ。そこは敬語じゃなくてだな。「どこから来たの?」とか、砕けて言うんだよ。」
ラリマ「えーっと・・・どこから・・・来たの?」
流石にホワイトにとっては朝飯前のこの口調でも、ラリマ姫にとっては逆立ちしながらブランコに乗るのと同じぐらい難しい。というより無理だ。
商業場と、飛行場の境目に着いた途端、ホワイトが話し出した。
ホワイト「俺は―違う大陸から。カイスから聞いてねえのか?」
ラリマ「いえ、その前・・・の。違う大陸から来る前。記憶が無いと聞いたから・・・」
ホワイト「あー。覚えてねーな。俺、物心ついたんはラステと一緒にいた村だったからなあ。」
警戒しながら、ゆっくりと歩く。飛行場は水蒸気が霧のようになっており、視界が・・・良くはない。
ラリマ「・・・あの、もう一つ聞きたいことが・・・」
ホワイト「何でも聞いてくれぃ。俺の知ってることなら言うぜ。」
矢張り、少々言うのをためらっている。・・・いや、言うと、信じてもらえないか、という表情だ。
ラリマ「あの・・・私、幼少の頃、とある方に助けてもらったことがあって。その方は、なんというか・・・その・・・」
その時だった。飛行場の数箇所で爆発が起こり、水蒸気が一気に吹き飛んだ。
一層警戒心を強めて、ホワイトはラリマ姫を庇うように立ち歩いた。
ホワイト「来るぜ。戦闘慣れは・・・してねーよな。」
ラリマ「あの・・・その助けてもらった方に少々・・・伝授していただきました。」
ホワイト「ってことは、ちょっとはやれるな?出来るだけ離れとけよっ!」
左手に青い光を生み出し始め、目だけで敵の居場所を捜索すると、上に向けて青い光を放った。
―青い光は跳ね返り、ラリマ姫を抱えて、ホワイトは素早く避けた。
ラリマ「は、跳ね返り・・・!?」
ホワイト「ちくしょっ。どこのどいつだばきゃろー!」
「僕はここだぞ。」
飛行場から出て、宿場のエリアに入ったところだった。突然目の前には、ベージュのローブを纏う、黒い体の、ダーク・ハシリ・ハシリ。
しかも、ラインは青。目つきは、目だけで料理が出来そうなぐらい鋭く、冷蔵庫の代わりにもなりそうなぐらい冷たい。
ホワイト「俺に何か・・・よーか?」
「ホワイト=ザ=ラシアロスト・・・と、麗しき姫だな。ああ、貴様に用がある。」
いきなり正体不明のチャオが右手で差したので、ホワイトはラリマ姫と自分と、相手を見回した。
どうやら指差されているのは・・・・・・・・・・・・・自分だ。
ホワイト「・・・・・・俺が何した?!組織を倒すぐらいしかしてね・・・ってお前・・・組織の奴か・・・?」
「は?何を言うか。僕をあのような下等生物共と同様にしてもらっては困る。貴様が組織の者だろう?」
ラリマ「?」
―どうやら両者の誤解で戦闘モードに入っているようだが、少なくともホワイトの言っていることは、ラリマ姫には理解できない。
ここにカイスやアヴェンなどの、状況分析能力を匠に扱えるものがいたならば問題はないのだが、生憎周囲にはチャオ一匹いない。
ブレスト「そうだな。名乗っておこうか。僕はブレスト。ブレスト=ザ=ルドだ!」
ホワイト「ラリマ、下がってろ。いーか?俺は七福神を倒したんだぜ?てめえなんかに負けるかよ!」
ベージュのローブを脱ぎ捨て、ブレストというチャオは右手に飾られる黒い宝玉に左手を掛けた。
そして、右手から・・・・・・強大な赤い光が、放たれた。
続く