第三十一話 疲労する解放
先程までは殆どないに等しかった“彼”の光の気配も、今では大きく輝き始めた。
覚醒の性能は「内なる力の解放」。名の解放の性能は「解放された力の集結」。それらの組み合わせで、更に力を発揮する。
ラリマ「暇ですわ。お父様はお外へ出てはいけないというし。」
カイス「当然・・・です。なあ、セザン。」
セザン「そうですかね、将軍様」
いくら国家連邦中佐、大佐格といえど、一国、しかもガーランド大国の「将軍」となると、頭を下げざるを得ない。
ラリマ「そういえばカイス。共にいらっしゃった、あの白いお方はどこへ?」
カイス「ホワイトの奴・・・ですか。あいつなら今頃・・・なっ?!」
窓の外の景色を眺めているラリマ姫の先が目に入ったカイスは、突然驚いて、叫んでしまう。
ラリマ「どうかされ・・・?」
セザン「青い光・・・?なんだ、この光気は・・・明らかにホワイトのものでは・・・大きすぎ「ますよ」。カイス将軍「様」。」
カイス「い、否・・・あいつなら在り得る・・・だが相手は誰だ・・・?」
そのとき、窓から見える強大な青い光に共鳴するかのように、ラリマ姫の右手が光りだした。
それに気づくものは、最早そこに何千匹とチャオがいようと、いないだろう。
カイス「まさか―バズの奴の光気があると思っていたが・・・またあいつか・・・」
―だが、こいつの「これ」は、その限度を超えている・・・しかも、頭の浮遊物(ポヨのこと)に集まっている、青い光は何だ?
覚醒により溢れ出た光を―名の解放により刀の形へ留まらせ―更にそれを「それ」へ、集結する―
ホワイト「『月儀斬』!」
『月儀斬』(げつぎざん)と、叫ぶ。恐らくホワイトの光儀刀の名である。しかし、それらは明白・・・バズとは違っていた。
『覚醒』によって溢れ出された青い光は、刀の形に留まり、名の解放と共にそれは纏まった。
その上に、青い光が更に「内から」溢れ出されている様・・・・・・・・・・・・しかもそれは、浮遊物(ポヨ)に集まっている。
バズ「成程な・・・分かったぜ。俺も本気を出す。」
ホワイト「へっ・・・こいつをすると疲れるとか言ってやがったんでな!さっさと片付けちまおうぜ!」
物凄い勢いで、剣を振り回すホワイト。恐らく青い光の力をコントロールしているのだろう。
その遠心力で回し易くして、青い光はその中心に留まり、渦を巻き始めた。
バズ「剪・・・定っ!!」
ホワイト「飛ばせてやるぜ!」
『馬鹿な・・・あり得ん・・・』
未だにぱちぱちと言っている、大きな扉を見ながら、驚愕した。
先程の三つの穴には青い光、赤い光、黄色い光が埋まっていて、扉は完全に開いているわけではないが、ほとんど壊れている状態だ。
『一撃でここまで成し遂げ・・・しかも名の解放まで聴いたというのか・・・?・・・ふ。』
――――恐ろしい奴だ――――全く―――――
「・・・そろそろか。」
屋根の上に立つ、ベージュのローブを羽織ったチャオが言った。頭から見ると、黒い体。ダーク・ハシリ・ハシリで、ラインは青だ。
そのローブには、三角形の中心に「V」マークを描いたような模様が縫い付けてある。
「奴目・・・待っていろ。この僕が必ず・・・」
そう呟くと、これまた黒い体に、青い角の巨大な龍に乗って、空へと消えていく。
ホワイト「ふいー」
「頑張りキノコのスープ」という食品名の付いたものを平らげ、ホワイトは満足げに息をついた。
隣のカウンターにはバズの姿が。ここはどうやら、レストランのような場所らしい。
バズ「そろそろ時間だな。」
ホワイト「もうっ?」
不意を突かれたかのように、ホワイトが言った。同時に、大きな「声」が流れた。
『只今より・・・狩猟大会受付を開始致します。受付本部は城の受付となる上、恐れ入りますがこちらまで、足をお運び下さい。』
ホワイト「うしっ。行ってくるぜ。」
バズ「おう。じゃなっ。」
椅子から飛び降り、ホワイトは城へと向かった。頭に、幼い小さな龍を乗せて。
続く