第二十八話 姫はお転婆?
「きゃああああああ!!」
もう少しで国領に入るというところで、明らかに女性のものと思われる奇声。とてつもない音量だ。
カイス「む?何かあったのか?」
ラステ「ひ、姫様あ!」
正面の遠くに見える城の方から、紫色のヒーロー・オヨギ・ハシリのチャオが何かから逃げているように見える。
その背後から火を吹く四足の獣・・・・明らかに何かのゲームに出てきそうな角のはえた獣だ。
セザン「あれが有名なアメジスト姫様ですか?」
ラステ「それどころじゃねー!しかも名前違うぞ。」
それどころらしい。突っ込んでる暇があるのだったら助けに行けよ、と、ホワイトが目で言った。
カイス「確か、ラリマ=アメジスト=ガーランディロートだったな。」
ホワイト「だーもう!なんで助けにいかねえんだよ!!」
そう叫びながら、ホワイトが走り出した。紫色の少女を飛び越えて、獣の角を素手で掴み、投げ飛ばそうとするが、炎が当ったのか、飛び跳ねて戻ってきた。
ホワイト「ちっ・・・なかなかやるぜ」
カイス「お前が馬鹿なだけだと思うが・・・・ふ、まあいい。ここは私がやろう。姫様、危険なのでお下がり下さい。」
ラリマ「カイス!あ、ありがとうございますわ」
親しげに、ラリマ姫様はカイスの名前を呼ぶと、カイスの後ろに廻った。カイスは腰の剣に手をかけると同時に、飛び上がった。
獣は空中を見上げて、飛び上がろうとしているようだが図体が大きいので無理がある。
そのまま剣を抜きつつ、獣に向かって落下していき、一瞬で獣の角は二つとも両断された。
カイス「退け。さもなくば、斬る。」
獣は言葉の意味が分かったのか、それともカイスが怖かったからか、急いで森の方へと帰っていった。
ラリマ「さすがカイス!」
ラステ「あのー。すいませんが。姫様ですよね?」
恐る恐るラステが話しかけると、姫様と呼ばれるそのチャオは頷いた。
セザン「カイス、わけありか?」
カイス「私の異名を忘れたか?無剣の兵士だ。兵士だぞ。「兵」。そう、私は―」
ラリマ「カイスは城の将軍でございますから。」
周知の事実とは、周りがよく知っている事実。いわば常識だ。だが、この事実はアヴェンでさえ、知らないだろう。
ホワイト「へ、兵士?将軍?」
ラステ「・・・・将軍?」
セザン「と、とりあえず姫様。城に戻ったほうが良いかと。大佐と私は任務で来ていますので・・・」
ラリマ「分かりましたわ。」
ガーランド大国の城下町は、中心を城として、周りにそれぞれ町がある。雲を使用する飛行船が入る「飛行場」と、「商業場」と、「宿場」に分かれている城下町だ。
カイスは将軍なので、勿論城に入ることは可能だ。ホワイトもなんとか入れた。
通されたのは王座の間。奥の座椅子に、以前、カイスが付けていたような黒いマントを付けているチャオが、座っていた。
ラリマ「お父様、ラリマ、只今戻りました。」
カイス「久しいな、ゾルグ。相変わらず姫様には世話を焼かされているらしい。」
ゾルグ「カイスか。大きくなったなあ。見ないうちに。ヴァルサの奴は元気か?」
カイス「ああ。兄上なら元気といえば元気だぞ。」
その言葉を最後に、ホワイトがわけもわからないような苦しい話題に移る。
ラステ「国王様。私目は連邦国家大佐、ラステ=カーラットと申すものです。今回、三大大国から狙われているという情報を聞きつけ、参りました。」
ゾルグ「そうか。ご苦労。しかし、我が国の窮地にカイスも、国家も来てくれるとは・・・・嬉しい限りだな。その後ろの者は?」
ラステ「右に見えますのが、中佐にして我が忠実な部下、セザン=ハトバドール。左の者は・・・後ほど。」
ホワイト「なんでだよ・・・・」
半目になりながら、ボソッとホワイトが言ったのは、幸運にも聞こえなかった。
カイス「ではホワイト。お前は城下町で遊んで来い。お前の興味を示すものがあるぞ。」
ホワイト「はあ?!」
聞こえはいいが、要は出てけといっているようなものだ。ホワイトは不機嫌なまま、城を出た。
商業場に出たホワイトは、あたりを見回すが、なにも「興味を示す」ものはなさそうなので、宿場に行こうとしたのだが―
『さー、今日の午後、始まるよ!毎年恒例の狩猟大会!なんと今回の優勝商品は完全錬磨の紅蓮石!!』
ホワイト「狩猟大会?なんだこりゃ・・・」
配られてるビラを見ると、大きく「狩猟大会」と書かれており、その下に、こう書かれていた。
「時間は三十分!国領に散らばる獣を蹴散らし、配布される自動加算システム付のビーストキラーメーターの数字が一番高いものが勝利!
優勝商品は、美姫、ラリマ姫から渡される、完全錬磨、南無三宝の一つ、紅蓮石!!
しかも今年は最強の獣まで導入!強者よ、集え!」
ホワイト「ラリマ姫かあ・・・・可愛かったなあ・・・・どっかの誰かと違って。」
「よー。あんさんも出場者かい?」
続く