第二十五話 砂と光
ホワイト「隔月斬に、ブルーライト・エネルギーを重ねるとは思わなかっただろ?」
テラン「その力、是非、欲しい!」
突然起き上がったテランは、一秒・・・・いや、もっと速く、ホワイトの目の前に移動し、剣を振りかぶっていた。
持ち前の反射神経で左手の剣をテランに向けて、斬ったが―そこに残ったのはテランの残像。
ホワイト「まずっ―」
テラン「臨みは叶わんな!」
黒い光はテランの持つ剣から一気に放たれ、衝撃と騒音でカイスとセザンが小屋から出てくる。
ホワイトは砂煙の中に消え、どこにいったか、どうなってるかも分からない。
カイス「ホワイト?!」
セザン「ど、どうし―お前は・・・・」
テラン「懐かしいな、弟よ。」
よく考えれば、口調といい、容姿といい、似ている点もいくつかある。が、弟がセザンというのには、余り納得がいったものではない。
その状況を把握したカイスは、砂煙の中を探そうと思ったが、苦笑してテランに向き直った。
カイス「成程・・・・余程その命、要らないと見える。」
テラン「何をいってる?」
カイス「貴様が経った今、ここで私に倒られるということだ!」
剣を素早く抜いたカイスは、そのままテランに向かって走ろうとしたが、背後に感じる風の気配に、振り向いた。
砂煙が巻き上がって、渦を作り出し、竜巻のようになっている。その中心部には、かすかに光が見えた。
セザン「し、自然現象だと・・・・・?」
テラン「生きていたか・・・・ならばとど―」
すると、竜巻は意思を持つように動き、テランの横を通っていった。これで、動きは封じたわけだ。
カイス「な・・・・」
テラン「面白い。そっちがその気なら・・・・やろうじゃないか。」
竜巻の中を走り出したテランは、右手の剣から黒い光を噴出させ、竜巻を縦真っ二つにした。
―そして、竜巻はおさまり、中から二匹のチャオが出てきたのだ。一匹はホワイト。元気そうだ。
もう一匹は―青いダーク・チカラのチャオで、ホワイトと目を合わせると、微笑した。
このチャオは―一点の間違いもない―正真正銘の―ヒーズの父親―
ラステ「国家防衛大佐、ラステ=カーラット、法定によってお前に裁きを下す!」
セザン「大佐!」
カイス「カーラット・・・?・・・ヒーズと関係があるのか?」
テラン「国家の大佐がお出ましか・・・俺も運が良いな。」
余裕の笑みを見せたテランは、ヒーズの実父、ラステを指差しながら、言った。
どうやらラステは、国家の大佐らしく、セザンは助かったというような表情を見せている。
ホワイト「よォ、ラステ。二対一ってとこだよな?」
ラステ「そうなるよな。組織「五帝」、テラン=ハトバドール相手に、よくあそこまで出来たものだ・・・感心したぞ、ホワイト。」
ホワイト「俺にかかりゃ、楽勝だぜ。」
再び左手に青い光を集中させ、剣を象らせると、それは有体の剣となった。続いてラステが右手を挙げると―
周囲の砂が巻き上がり、腕の周りを旋回した。まるで砂を自由自在に操っているようだが、光ではそんなことは出来ない。
テラン「―今時、珍しいな。四大元素を扱う奴など、もう残っていないと思っていたが。」
カイス「セザン。四大元素というのはなんだ?」
セザン「チャオの身体を構成するのは光だと言ったな。その光は多種多様に形を取る。同じように、チャオの身体を作るのが「別のもの」だったら・・・」
ラステ「光儀刀―「砂塵」!」
拳の周りをぐるぐると回っていた砂は、ラステの声を中心に形を整え始め、次第に長細い剣を象っていく。
作り出されたのは砂そのもので構成された剣。形は剣だが、砂なので切れそうもない。
ホワイト「すげぇな・・・・砂を使っちまうのか・・・」
テラン「覚悟はいいか、大佐?」
侮るようにテランは言うと、両腕を高く上げて、黒い光を剣の形にまとめると、そのまま走り出した。
有体となっていない、黒い光の剣は次第に薄っすらと剣の頭角を表していく・・・・・
ラステ「ホワイト。光儀刀の扱いには、慣れたか?」
ホワイト「当ったり前だぜぃ」
ラステ「なら、俺が隙を作る。そこへ、確実に当てろ・・・・青い光を!」
本の一瞬で、足を踏み出したタイミングさえ、分からなかった。ラステはテランの目の前に、その瞬間で移動し、砂の剣を突きつけた。
すると、その速さに驚いたテランは、慌てて剣を横にして防ごうとするが、速さで剣を高く弾き飛ばしたラステは、飛び上がった。
そこへ、ホワイトだ。左手の剣を大きく振りかぶると、その勢いを利用して青い光に変えつつ、放った。
ホワイト「ブルーライト・エネルギー!」
ラステ「後は任せろ。」
空からラステがそう叫ぶと、吹き飛んだテランに向けて右手を重ね合わせた。
途端にテランの吹き飛ぶ地面の先から、砂が巻き起こり、テランの動きを取り押さえた。
テラン「ぐ・・・・次会うときは・・・・必ず勝つ・・・・!」
ラステ「ま、待てっ・・・」
黒い光はテランを覆いつつむように大きく膨れ上がり、消えていってしまった。
ホワイト「へ・・・へっへっへ・・・勝ったぜ馬鹿野郎。」
続く