第二十四話 朝日はいつもポヨの陰
起きたのは、丁度太陽が出始めた頃だ。ホワイトにしては、早起きである。
未だセザンとカイスは横向きに寝ており、小屋の外へ飛ぶようにでたホワイトは、大きく伸びをした。
頭の浮遊物、つまりポヨを揺らして遊びながら、朝日を眺めているうちに、何気なく視線を感じたホワイトは、振り向いた―
「チッ・・・気づかれちまったか。」
小屋の陰から出てきたそのチャオは、黒いニュートラル・オヨギのチャオで、右腕に金色の腕輪を付けていた。
目は冷酷を思わせる冷たい目をしており、ゆっくりとそのチャオは小屋の陰から出てきた。
ホワイト「誰だ?」
「お前に名乗る、義理はないな。」
ホワイト「名前を名乗らないのは失礼だぜ?」
皮肉にも、いつもカイスからいわれていることをそのまま引用したホワイト。
テラン「・・・テラン=ハトバドールだ。生憎、キミを狙っているものでね。」
ホワイト「へえ・・・そいつぁ楽しみだな。」
ホワイトの言葉の終わりと共に、テランは動いた。まず、ホワイトの背後に移動したテランは、右手を突きつけた。
だが、ホワイトは素早く身体を伏せて、テランの右手から放たれる黒い光線を避けたのだ。
そして、身体をひねり、回し蹴りをテランの腹に食らわすと、その勢いで左手から青い光を生み出した。
ホワイト「ブルーライト・エネルギー!」
テラン「受け止めてみせようか・・・・・」
驚いたことに、テランが右手を青い光に当てるだけで、光は乱れ、空へと消えていった。
ホワイト「・・・・受け止めてねーじゃねーか。」
テラン「止めたことは確かだぞ。」
ホワイト「しゃーねえ・・・んだったらこっちも、本気出すぜ!」
左手の青い光を増大させたホワイトは、それを剣に変えた―と、連続的に体中から青い光をあふれ出させた。
『覚醒』だ。身体の奥に潜む『心』の力は光を象る。その光は心の『ありよう』によって変わる。それを引き出すのが、『覚醒』である。
テラン「面白い・・・・受けて立つ!」
ホワイト「だあぁぁぁぁ!」
がむしゃらに剣を振り回し、テランを追い詰めていくが、一度も当ってはいない。
それどころか、テランの表情には微笑さえ見られ、右手の腕輪から邪悪な気配が漂っている。
その気配は、一瞬で実現化し、ホワイトは剣を振りかぶる隙を見られて、吹き飛んだ。
テラン「これが「真の光儀刀」というものだ。キミの生半可な上辺だけの「剣」とは違う。なあ・・・「天下」!」
その名を叫ぶと、テランの身体から黒い光が、ホワイトのように溢れ出した。―覚醒したのだ。
吹き飛んだホワイトは、なんとか地面に着地すると、剣を両手に持ち変え、「天下」の意味を捉えようとしていた。
テラン「そうか・・・・キミはまだ、名の解放をしていなかったか・・・・」
ホワイト「名の解放?んじゃそりゃ?」
テラン「キミらの技術、光術には、全て「言霊」と呼ばれる物が付属する。―勿論、俺が使う黒い光は別モンだがな。」
右手に持つ剣を、左手でさすりながら、テランは続けた。
テラン「その「言霊」。唱えれば威力、威光は増幅する。それに応用したのが、名の解放だ。」
ホワイト「・・・ってことは、それでコイツに名前を付けた方が強いってことかよ?」
テラン「いや、違う。親切な俺だから教えてやろう。」
その嫌味にはさすがのホワイトもカチンときたのか、いらねーよ!と、叫んでしまった。
それからしばらくしてホワイトは自分の過ちに気づき、苛立ってきた。
ホワイト「続けるぜ、馬鹿野郎!」
テラン「馬鹿なのはどっちかな・・・・」
走り出したホワイトは再び剣を振り下ろしていたが、今度は隙をなるべく作らないよう、小振りにしている。
明らかに見る限り、追い詰められているのはテランだが、未だに表情には微笑が残っている。
ホワイト「くそっ・・・だあ!」
テラン「閃光斬―!」
黒い光はテランの剣を中心に輝き始め、ホワイトの一撃をぐるりと回り、受け止めた。
その衝撃でホワイトは剣を弾き飛ばされ、今では丸腰だ。
テラン「弱いな・・・・ノアンを倒したからどれほどのものか、期待していたのだが。」
ホワイト「うっせー。弱いのは、どっちだ!」
不意を打って、ホワイトは両手から青い光を突き出し、テランに向かって放ったが、一瞬でテランは上空に移動してしまう。
さすがに丸腰では歯が立たないと思い、ホワイトは後ろに走って剣を取ると、急いで飛び上がった。
テラン「ふっ・・・・閃光斬!」
ホワイト「やりィ!」
一度、ホワイトは先ほどと同じように下から剣をテランに振ったが、それは光に遮られてしまった。
剣は弾かれたが、ホワイトはその反動を利用し、テランの背後に回ると、青い光を上から放った。
そのままとてつもない勢いでテランは落下していき、地面に叩きつけられると、ホワイトは着地し、剣を取った。
テラン「ほお・・・・・上出来・・・・組織には相応しいな・・・・」
続く