第二十三話 木に身をゆだねて
サメだかイルカだか、得体の知れない生物の上に乗っている―そう思いつつも、海に身を投げ出すわけにはいかない。
カイスはそんな感情を抱きながら、動物と対話できる能力を持つのかと、ホワイトに聞いた。
ホワイト「あ?勘だよ、勘。なー?」
賛成の意見を求め、イルカなのかサメに話しかける。「うきゅうっ」・・・泣き声だけはイルカだ。
セザン「カイス。この白い奴は、一体なんの能力を持っているんだ?こんな能力、持っているといえば大佐レベルだぞ?」
カイス「光力・・・そいつを使えるんだ、ホワイトはな。質問が二つあるぞ。「大佐」とは?この謎の生物はなんだ?」
ホワイト「魚。どうみても魚だろ?」
違う。鋭い歯はむき出しで、ヒレにはとげとげしい鮫肌がある。しかも、これほどスピードの出る魚はいない。
まるでそのスピードは、車ほど速かった。・・・といっても、水上スライダーのようなものだが。
セザン「知らないのか?こいつは「サーベルシャーク」。サメの中でも凶悪中凶悪のサメだ。―それと、国家を知らないのか?」
カイス「国家?組織ではなく?」
セザン「組織は、民を脅かす者達だ。国家は、それを守る、防衛軍。俺は一応、中佐の地位を授かってる。それと―」
数々のサーベルシャークと共にはしゃぎまわるホワイトをなるべくみないようにして、セザンは言う。
セザン「五神殿を守る役目を持ってる。五神殿・・・五獣を護る神殿だ。まあ、支部へいけば分かる。」
カイス「ほう。となると、国家というのも、ラート大陸専門で、支部に分かれているのか?」
セザン「いや、支部に分かれてはいるが、その支部と支部で役目は別だし、しかもラート大陸以外にも守護している。」
陸が見えてきたためか、ホワイトが数々のサメと共に先に行ってしまうのが見えた。
ホワイト「じゃーなー!元気でなー!」
「うきゅうっ」・・・・泣き声はイルカだ。海岸に到着したホワイトが、サーベルシャークを見送っている。
カイス「ところで、ヒーズとアヴェンはどうした?」
ホワイト「いや、俺が起きた時にゃ、いなかった。まあ、あいつらのこったぁ、生きてんだろ。」
黄色い垂れ下がった後姿を前に、ホワイトは自信に満ちた声で、言った。セザンが道案内的なことをしてくれるというのだ。
海岸線に沿って歩いていくと、先のほうに一軒の小屋が見えた。おそらくは、村はずれの小屋だろう。
いかにも、という感じの小屋で、煙突からは青空にぴったりな白い煙が出ている。
セザン「あそこが―俺の知り合いの家でな。今は・・・いないが、空き家にしていて、俺に管理を任せたんだ。」
カイス「ほう・・・そいつも、国家の関係者か?」
セザン「ん?・・・いや、違う。まア、言ってしまえば、この世で並ぶ者のない・・・最強という言葉がぴったしのチャオなんだが・・それにしても一体、白い奴は何者だ?」
白い大きな鳥に囲まれたホワイトを見ると、目を丸くしたセザンがカイスに向かって聞いた。
その質問には、さすがのカイスでも、答えることは不可能だ。
―小屋の中は、なんにもなかった。あるといっても、壁、窓、床。それらだけだ。木製の家で、変わったところは特に見え当らない。
ホワイト「そーいえばよ、これからどうするんだ?」
セザン「組織を、捜しているのだろう?―今日はそろそろ夕暮れ時だろう。休み、明朝、出発しよう。案内したいところがある。」
それっきり、一言も喋らず、セザンは床に寝転がった。続いてカイスも、床に寝たので、仕方なくホワイトも、木に身を委ねた。
続く