第二十二話 再び船の上で
ホワイト「んなっ!?」
何かが、ホワイトの上から重くのしかかってきたような勢いで、ホワイトは地面に倒れた。
黒いカケチャオは動いていない。・・・と、その時、黄色いミズチャオが動き出した。
アヴェン「危険だ・・あいつ、あの右手の焼印は・・・盗賊団、団長・・・・・」
???「覚悟しろ!!」
再び黒いカケチャオは、振り向いた後、右手を突き出して、黄色いミズチャオを倒した。
「・・・フン。他愛の無い。言われずとも、この町から出て行こう。但し・・・船を一隻、貰おうか。」
???「く・・・そっ・・・」
「―それとも、ここにいる全員の息の根を止めて欲しいというのならば、別だが―」
苦笑した黒いチャオは、黙って状況を把握すると、あたりを見回した。そして、両手を振り上げた。
「さらばだ諸君。君らの無能さに感謝しよう!」
ホワイト「うるせぇっ!」
不意打ちだとはいえ、見事にヒットしたホワイトの右手が、黒いチャオを吹き飛ばした。
外に出た黒いチャオは、すぐさま受身を取り、立ち上がると、ホワイトらを見て、こういった。
「多勢に無勢か・・・・フン。まあいい。貴様ら、名は?」
カイス、ヒーズ、アヴェン、ホワイトに向けて、黒いチャオは聞いたが、何も答えないので、黒いチャオは微笑した。
ガルフ「私はガルフ=ケルビム。覚えておくがいい。では再び垣間見えるときまで―」
そういい残して、ガルフという名のチャオは、去っていった。屋根の上を通っていったので、追いかけようがない。
???「お前ら・・・大丈夫か・・・?」
黄色いミズチャオがゆっくりと歩いてきた。ホワイトは大きくうなずくと、口を開いた。
ホワイト「船は、あんのか?」
セザン「勿論、ある。客か・・・なら、礼として今夜はうちに泊めてやろう。俺はセザン=ハトバドール。宜しく。」
偉そうな口調でそういわれて、凍っている家の中、一夜を過ごした。
ホワイト「暑いなー!しかも・・・なんで俺はこんなところにいるんだよ?」
暑いという苦痛に耐えつつも、なんとか邪気も見えるカイスの後姿に向かって質問する。
そう。ここは、真昼間の、船の上・・?いや、走っているのは「海上」ではなく、「氷上」だ。
極寒の地、ヒュールズに着いたホワイトたちは、盗賊「ケルビム」らと遭遇することになる。
そこには、盗賊の長、「ガルフ=ケルビム」と、ヒュールズのチャオ、セザン=ルイが対面していた。
一夜を過ごし、朝早く起きてランニング。その後、海を見渡して朝日を眺め、敵が現れてホワイトが倒すという夢を見ているうちに、こんなところにいるとは・・・・
―ホワイトには思いつきもしなかっただろう。―いや、思えなかっただろう。
カイス「戯け。何を言うか。貴様の寝相が悪い所為で、私等は一睡も出来なかったのだぞ?」
アヴェン「よくいうぜ。あんたの寝相も十分悪かった。」
一体夜中になにがあったのだろう。そんな顔をしながら、ホワイトは話しを聞いて、伸びをした。
セザン「起きたか。昨夜は凄かったぞ、白いの。あれは一体どういう技だ?」
ホワイト「ん?技?」
カイス「セザン。「寝相」だ。寝ながら寝惚けて打ったんだ。」
アヴェン「まー、この話しは止めにしよーぜ。それよりホワイト・・・・」
その言葉を最後に、セザンは甲板から去っていく。カイスはマストの陰で、休みに行った。
ホワイトはアヴェンと話をしているが・・・・こういうときに限り、ヒーズが居ない。
ホワイト「し―っかし、寒くねーな。なんでだ?」
アヴェン「暑寒境界線を越える直前だからな。そろそろ暖かくなってくるんだ。ほら、氷の音が―」
気づけば遅し。空は雷鳴が響き、雨は船のところどころに穴を開け、破壊していく。どんな雨かと思いきや、「ヒョウ」だ。
カイス「ホワイトのいびきよりもすごいぞ・・・・どうなっているんだ?」
ホワイト「そんな酷かったのか・・・・」
海は荒れてきて、船が大きく揺れた。途端に氷の割れる音が、大きくなったと思うと―
大津波が、船を襲い、ホワイトらは飲み込まれてしまった―大陸移動早々、大惨事である。
―照り付けるのは・・・・太陽の光。私は・・・嵐が起きて・・・・飲み込まれた筈・・・・・―
ホワイト「ひゃっほーぅ!!」
ざざざざざ・・・クルーザーに乗っているかのような音と、快晴な空が、周りを埋め尽くした。
少年の声が高く聞こえ、あたりを見回すと―イルカのような魚の群れ。それに、ホワイトとセザンが乗っている。
セザン「しかしなぁ。こいつは怪物と大して変わりようがない。―のに、白いの、お前はどうやって乗せてもらったんだ?」
ホワイト「あー?知らねえけど、こいつらが「乗せてくれる」っつーから、のせてもらったんだ。」
カイス「・・・・・・・・う・・・ホワイト・・・ここは?」
続く