第二十一話 寒さにマケズ
一大陸、組織の支配を解いたホワイト一行。リヴァー・アルトのチャオらの情報によれば、極寒の地「ヒュールズ」という場所から東東北。
「ラート大陸」にいけば、更に組織を追い込むことが出来るらしい。それを理由に、ホワイトたちは極寒の地・・・ヒュールズを目指していた。
もう少しでつこうという頃、ホワイトが喋りだした。その声は、期待が混じったような声だ。
ホワイト「あのさ、「極寒の地」っつーぐらいだから、雪ってもんが見れんのか?」
アヴェン「そうそう。雪なんて挿絵でしか見たことねーし。見たいよなぁ。」
カイス「無理だろうな。」
まるで、カオスチャオのように無表情なカイスが、きつくいった。
カイス「極寒の地ということは、全てが凍る。私等チャオは、体温というものがあるから大丈夫だが。」
ヒーズ「いっとくが、僕は下らない事に剣を使うつもりはないぞ。」
希望の視線を向けたアヴェンとホワイトを無視し、ヒーズが言った。
ホワイト「それにしても、そろそろ休まねーか?」
カイス「疲れていない」
これで、話しは終わりかと思われた。その一言が、きつすぎたのだ。
アヴェンとホワイトは目を見合わせると、ホワイトは座って、アヴェンは走ってカイスたちに追いついた。
ホワイト「ちくしょー!もういい!俺は寝る!意地でも―
アヴェン「街だ。ヒュールズが見えてきたぞ。」
寝転がろうとしていたホワイトと、今のホワイトはまるで別人だ。物凄いスピードで街に向かって走り出したホワイトは、カイスをも沈黙に陥れた。
ヒーズ「・・・全く。そういえば、全てのものが凍ると、言ったな?・・・海は凍っていないのか?」
その疑問には、答えられなかったカイス。だが、アヴェンが言った。
アヴェン「凍ってる。「暑寒境界線」というものが、ラート大陸とヒュールズの海港の間にある。」
カイス「やけに物知りだな・・・急に口調が変わっていないか?」
アヴェン「カイス君。そういうときは、「急にキャラが変わってないかなぁ?」というのだよ。」
はっはっはっと、わざとらしく笑いながら、早歩きでアヴェンは街へ進んだ。とっくにヒーズはいってしまっていたので、カイスは一番後ろになってしまった。
その街はほとんどが氷の結晶で出来ていた。ホワイトの期待していた雪は、どこにもなかった。家も、道の花壇も、木さえ、氷の結晶のようになっている。
ホワイト「うわぁ。ひでぇ。」
アヴェン「どこに目をつけてんだ?「綺麗」だろ?」
後ろからアヴェンが、ホワイトを見下すように放った。どれだけ歩いても、なにもかもが同じ光景に思えたが、水平線が見えてくると、安心した。
港についたとき、その海は、恐ろしいというより、予想通りのものだった。
ホワイト「凍ってんじゃねーか。」
アヴェン「ここはRPG風に、酒場で情報収集をするというのはどうかな?」
港から少し離れたところに、大きな氷の家が建っていた。少々寒そうだが、そこに歩いていくと、家の中から大きな声がした。
「なんだぁ、てめぇ?俺達とやるつもりかぁ?」
「お頭、こいつ、どうします?俺らで十分だと思いやすが・・・」
喧嘩だろう・・・・と、ヒーズが呟いた。ホワイトは何にも気づかない様子で、酒場のドアを開けた。
ホワイト「冷てっ・・・なんだよこのドア・・・・ん?お前ら、誰だよ?俺に何か用があんのか?」
???「ふざけるな、廃盗賊!この町から出て行かなければ、俺が追い払うぞ!」
ホワイトを見ていたのは、奥のカウンターに座っている三匹のチャオと、客数匹だ。
そして、今、ホワイトの目の前にいるのは、黄色いニュートラル・オヨギのチャオである。叫んだのも、そのチャオだ。
カウンターに座る三匹の中の一匹は、全身マントとフードで、隠れている。前衛の二匹は、両者とも黒のダーク・チカラだ。
カイス「ちっ・・・まずい時に来たな・・・処でアヴェン。なぜあそこが酒場だと?」
アヴェン「屋根にあれだけ大きく酒場って漢字で書かれてたら、気づかない奴はいないと思うけどな。」
走りながら、対話している。ヒーズは半分ヤル気の無さそうに、走っているが、アヴェンは楽しそうだ。
酒場のドアのところで止まっているホワイトを、カイスはとび蹴りをくらわし、奥に吹き飛ばした。
ガラスの割れる音と、チャオの悲鳴。・・・いや、奇声。それはまさしく、猛獣を思わせた。
奥には、割れているガラスの破片と、色々なものの下敷きになっている二匹の黒いチャオ。
なんとかカイスの蹴りの痛みから解放されたホワイトは、起き上がって全身マントを着たチャオを向き合う。
ホワイト「てめー、誰だ?」
「フン。貴様に名乗る義理はない。―それとも」
そういって、黒マントのチャオはマントを脱ぎ捨て、その姿を現した。途端に、ホワイトは走る。その姿は、黒のニュートラル・ハシリ・ハシリで、右手をホワイトに向けた。
「私から力ずくで聞きだすか?」
続く