第十九話 「死者を狩る者」
ノアン「穀雨!」
カートレッジ塔の屋上では、ノアンとホワイトの戦いが繰り広げられていた。
やや、ノアンのほうが優勢に見える。カイスも勝ち、ヒーズも勝ち、アヴェンも勝った。あとは、ホワイトだけだ。
剣を両手で持ちながら、ノアンはホワイトの真後ろに居た。ホワイトは左手の青い光を剣に変えずに、振り向いた。
ホワイト「うっしゃぁ!「穀雨」ってのがなにしてんのか、分かったぜ!」
ノアン「がせを。そういうのは、とめてから言え。「穀雨」(こくう)!」
体勢を地面とほぼ平行にしながら、ノアンが両手で剣を振りかぶったのを、ホワイトは見た。
反射的にホワイトは、左手の青い光を自分の下の地面に放った。
空振りになったノアンは、青い光によって地面に叩きつけられ、反動で外に放り出される。
ノアン「なに・・・?」
ホワイト「受け止めてねぇけどな。・・・・そんなもん、通じねぇんだよ!」
空中に舞い上がったホワイトは、左手の青い光を剣に変えると、空中を蹴るようにしてノアンに向かっていった。
近づくと同時に剣を振りかぶると、ノアンの目つきが変わり、ホワイトの心にためらいが生まれた。
まるで―自分が、ものすごい危険なことをしていると思わせる目だった。
ノアン「ふっ」
剣で、ホワイトの攻撃を防いだノアンは、そのままホワイトを受け流し、飛び上がった。
そうすると、ノアンは剣を高く掲げた・・・・
ホワイト「んなっ―!?」
ノアン「刃伝雷雨!(ばでんらいう)」
黒く輝いた、雨のような光が降り注ぎ、ホワイトを切り刻んだ。
剣で防ぐが、あらゆる角度から攻められるので、どうしようもできない。
ホワイト「く・・くそぉ!」
ノアン「―死脈の鼓動―」
ホワイトは、身震いした。身体全体に寒気が奔って、倒れそうになる・・・。
黒い光が一気に増大して、やがて消えていった。
そのとき、ノアンの姿は・・・黒い光に覆われ、紫色のアザのようなものが、体中に出来ていた。
身体は紫というよりも、黒い光によって、黒に近くなっている。
ホワイト「ち、ちくしょう・・・・」
ノアン「最後の教育だ。私が今、使用したのは「覚醒」と呼ばれるものだ。」
そういって、黒い光の中のノアンは、話を続けた。
ノアン「光は、チャオの心から来る。心に秘められた力を解放するには、通常のチャオでは不可能だ。」
ホワイト「く・・・んなもん・・・きいてねぇ・・・」
ノアン「続けるぞ。私は「五帝」らによって、心の「暗黒」が目覚めた。そして、「覚醒」まで出来るようになったのだ。」
微笑するその表情は、悪魔のようだったが、ホワイトはもう声も出なかった。
ノアン「心に秘められたその光は、その心の「有り様」によって、さまざまな色・形を象る。覚醒というのは、その秘められた力を解放し、体外に放出する。」
ホワイト「(声が・・・でねぇ・・ここで・・・やられんのか?・・・)」
そのとき、ホワイトの頭の中に、フラッシュバックのような映像が流れた。
ぼやけている。赤いチャオが、一匹・・・いる。
その手には大きな剣のようなものが握られている・・・・そして、となりには青いチャオが居た。真正面には・・・・・
ノアン「フフ・・・では、そろそろ楽にしてやろう。」
一瞬で、ノアンの両手に強大な黒い光の弾が出来た。それを振りかぶると、一気に突き出し、放った。
ドォォォォォォン!!という爆発音・・・しかし、黒い弾は、様子が変だ。
乱れているような・・・・なにかに、かき乱されている。そして、散った。
ノアン「何が起こったんだ!?」
ホワイト「へっへ・・・そうか、これか。お前が言ってる・・・・」
黒い光の中・・・いや、青い光の中に、ホワイトは居た。
絵のようで、背景は夕日と赤い空。そして、ホワイトは真っ黒で、巨大な「なにか」が突き出ていた。
夕日がやっと沈みかかると、ホワイトの姿が見えた。
青い光が体中から出て、周辺を舞っている・・・そう。ホワイトの―
ホワイト「『覚醒』だ!」
ノアン「覚醒・・・・覚醒だと?それほどの力・・・格が・・・」
ホワイト「なにがなんやら、考えたって仕方ねぇ!てめー見たいな奴には、突っ込んでいくだけだ!」
走り出すホワイト。次第にスピードが上がっていった。気のせいか、それとも光の力によってか。
ノアン「く・・・はぁぁぁあ―
ホワイト「―だぁぁぁぁああ!」
カイス「遅いな・・・ホワイト。」
塔の外では、カイスとヒーズ、それにアヴェンが、ホワイトをまっていた。
ホワイトを探したあげく、どこにもいないので、仕方なく外に出たのだ。
すると、塔は爆発したように、粉々になって、崩れ落ちた。・・・それと同時に、落ちていくのは・・・
なにやら、白く光った石だ。それは、青い光の中に消え、光はカイスたちのほうへ向かってくる。
ヒーズ「なんだ?」
ホワイト「よっ!!」
青い光は消え、そこには、ホワイトの姿があった。
七福神は壊滅し―ノアンたちは、ガレキの中。・・・完全な、ホワイトたちの勝利だ。
続く