第十八話 受け売り
ガラスが割れるように、氷は砕けた。剣は、氷の破片と共に床に落ちた。が、ヒーズは、いなかった。
ベンテ「どこ・・・だ?・・・馬鹿言え・・・あいつは動けたはずねぇ・・・んなあっ?!」
剣は確かにベンテの後ろにあるのに、どんどんベンテの剣と身体は、凍っていく。
ヒーズ「その剣術・・・見切った。「零式」は今まで見た限り、剣と素早い動きを使用する。そして、その「十進」は・・・・」
ベンテ「上かっ!」
凍っていくにもかかわらず、上にジャンプし、身体をくねらせて剣を上に突き刺した。だが、そこにはなにもない。あるといえば、氷の破片だ。
ヒーズ「その氷、邪魔だろう?・・・僕に感謝するんだな。感謝し終えたら・・・存分に消えろ。」
剣を持ったヒーズは、ベンテのしたから回転斬りを加え、完全に凍結させた。
ベンテの敗北・・・ヒーズの勝利だ。
カートレッジ塔という、組織の支部に、ホワイトたちはいた。
ノアンという、恐ろしいほど強いチャオに負けたアヴェン、ヒーズ、カイスは、リヴァー・アルトの住民、ネシアというチャオに助けられる。
そんな中、ホワイトがたった一人でカートレッジ塔に向かおうとするが、カイスたちが起きた。
その塔では、最後の七福神のめんめんと、ノアンが居た。
ベンテはヒーズが倒し、カイスとエビル、アヴェンとホテイの闘いが、始まった。
カイス「ゆくぞ、擬宝珠!(ぎぼし)」
床を蹴り、物凄いスピードでエビルに向かって、腹を突くカイス。
しかし、その手はエビルの腕で受け止められ、カイスは弾かれる。
エビル「副隊長の俺が、お前に負けると思うか?」
カイス「思わなければ、やらん。」
剣をゆっくりと抜き、カイスが言った。エビルは黒い煙から、剣を作り出した。
エビルは剣を振りかぶって、走り出すと、カイスの目の前で振り下ろす・・・と同時に、カイスは剣を横にし、防いだ。
もう一度、エビルが剣を振りかぶった隙に、カイスは剣を上に放り投げ、腹を蹴飛ばした。
そのままエビルは、山形に吹き飛んでいった。
カイス「止めだ!八熱―
エビル「剣は・・・俺の手の中さ・・・」
上に放り投げておいた剣は、なかった。急いで正面を向いたカイスは、驚いた。
蹴飛ばしたはずなのに、なぜかエビルはカイスの剣を左手で持っている。
エビル「遅い。全く。そんなだから駄目なんだ。」
カイス「うるさいっ。」
エビル「待ってな。俺が、倒してあげるからな。―零式、「暴乱」!」
構えを取らないうちにカイスは、空中にお手玉され、地面に叩きつけられた。
物凄いスピードと、技術力だ。一瞬のうちにカイスを空中に上げてしまったのだから。
カイス「フフ・・・・狙い通り。」
エビル「泥棒だなあ。」
ゆっくりと立つと、カイスは剣を再び振りかぶった。さきほどの攻撃の中、エビルから剣を取り戻したらしい。
カイス「八熱地獄!」
エビル「零式、「暴乱」!」
二匹の中央部で、剣を押し合っていた。どうやら、互角のようだ。
両方とも、スピードをつかった攻撃なので、それがぶつかり合ったために、相殺したのだ。
カイス「はっ!」
エビルの剣を弾くと、カイスは後ろに飛び上がって、着地した。
エビル「俺に戦いを挑んだこと、後悔させてやるよ。後で悔やむ苦しさ、味わうんだな!」
右手で剣を振りかぶって、エビルはブーメランのように投げた。と思うと、その剣に重なってエビルも助走をつけ、走ってきた。
カイス「後悔?ふ・・・確かに、後悔しないのは無理だが・・・私は、後悔してもいいようにやるまでだ!」
剣とエビルは、空中に舞い上がり、やがて地面に落ちた。
どうやらカイスは、スピードをつけた格闘技、擬宝珠(ぎぼし)と、剣技、八熱地獄を重ねたようだ。
カイス「―これは、誰かの受け売りだがな・・・・」
そして、鞘に剣を収めた。アヴェンと、ホテイの闘いは―
アヴェン「七福神、総統隊長。最後のマリテール一族が、お前を倒そう!」
ホテイ「フフ・・・・マリテールか。いいだろう!」
両方から光が放たれた。アヴェンからは緑の、ホテイからは黒い光だ。
それはぶつかり合うと、勢いが弱まって、消えていく。
いつの間にか、そのぶつかり合っていた場所に、剣をもった二匹がいて、振りかぶっていた。
剣を振り下ろしたアヴェンは、相手の剣を止めた後、空を飛んで、空中から地面に向かっていった。
アヴェン「虚雷丸(こらいがん)!」
ホテイ「マリテールの奴等は・・・そういう戦法しか知らんのか?」
大きな金属音がすると、天井にアヴェンは弾き返された。くるくると回り、体勢を立て直したアヴェンは、空中で静止する。
アヴェン「俺も、暇じゃないんでね。すぐ終わらせてもらうよ。」
ホテイ「そうか。ではこちらも、さっさと行こう。」
両者とも、剣に光を込め、振りかぶっていた。
アヴェンの剣には、緑色の光が外に吹き出ていたが、ホテイの剣には、黒い光が幕のように覆っていた。
ホテイ「零式・・・「終焉」!」
続く