第十五話 アヴェン=デ=マリテール
カイス「終わったな、ヒーズ。」
アヴェン「やるねえ。」
ビシャスにやられたヒーズらは、既に失望しかけていたが・・・・ロジュとクジュという新たな追っ手の手から逃れ、地底洞窟に来ていた。
未だに眠っているホワイトをまち、カイスらは特訓に専念していた。
封ははがれており、壁には黄色い光と水色の光が渦巻いているように見えた。
ヒーズ「やったな・・・・そういえば、ホワイトは?」
ホワイト「おす!」
意外と元気そうな姿では、なかった。なにがあったのか、それとももともとか、体中ぼろぼろで、傷だらけだ。
カイス「ホワイト・・・なにがあった・・・?」
ホワイト「心配すんな!大したことねえ。それよか、あんた誰だ?」
アヴェン「フフ・・・・懐かしいな。俺は、アヴェン=デ=マリテール。お前が、ホワイトだな?」
喜んで頷くホワイト。なにがあったにしても、嬉しそうな顔をしている。
ヒーズ「それでは、地上に戻る方法、教えてもらう。」
アヴェン「条件があるが、いいか?」
「旅に同行させてくれ」。という条件を、飲まずにはいられなかった。
カイスは先程から様子が変だったが、アヴェンの苗字を聞いてから、もっと様子が変だった。
カイス「あのマリテール家が、お前だと?」
アヴェン「物知りだね。俺は最後の子孫、アヴェンだ。もう一度訊く。旅に同行させてくれ。」
ホワイト「かまわねーぜ。マリテール家とかなんだか知んないけど、お前は俺らを助けてくれたんだろ?」
アヴェン「フフ・・・ああ、そうだ。宜しくたのむぞ、ラシアロスト。」
その時アヴェンが、ホワイトの苗字を知っていたことに疑問をもつものは、いなかった。それ以上に、地上に戻る方法が、凄かったのだ。
アヴェンの右手から発された虹色の光は、ホワイトらを取り囲んで、水上に戻した。
そこでは、ホワイトがカイスとヒーズを抱えて、青い光に乗っていたが・・・・・
アヴェンも、緑色の光に乗っていたのに、ホワイトは驚いた。しかし、それ以上に驚いたのが、目の前にいるチャオだ。
ヒーズ「ビシャス・・・・!」
ビシャス「ふふふ・・はーっはっは!やっと来たか、貴様ら!」
先程よりも、黒い煙が大きくなっている気がする。そう思ったヒーズは、嫌な予感がして、ホワイトにジャンプしろ、とささやいた。
予感は当った。突然ビシャスがホワイトの背後に着地し、右手には黒く光った剣を持っていたのだ。
カイス「なんだあれは?!あんなもの、見たことがない!」
アヴェン「多分、ロジュとクジュの光の力を奪ったんだろうね。」
ビシャス「頭いいな、お前ぇ!」
振り向きざまに、ジャンプするビシャス。とっさに、ホワイトはヒーズをアヴェンに放り投げ、左手に剣を作り出した。
ホワイト「だあっ!」
見事にビシャスの突進は受け止められ、金属音が響いた。空中で、ビシャスは身を回転させると、海の中に潜った。
カイス「ホ、ホワイト。降ろしてくれ。」
ホワイト「あ?ああ。でも、それだとお前のいる場所、ないぜ。そだ、アヴェーン!」
先程から一歩も動いていないアヴェンが、ヒーズを緑色の光に乗せながらホワイトに右手を突き出した。
ホワイト「お前の力、見せてもらうぜ!」
青い光を大きくし、そこにカイスを乗せると、ホワイトは座った。微笑しながら、アヴェンは緑色の光を自分の右手に集結させた。
ヒーズは氷を作り出して、そこに乗ったが、なぜかアヴェンは水上に浮かんでいる。
アヴェン「見てな。俺の力っつーやつを!」
ビシャス「話しは終わったか!」
ギリリリリリリっと、ビシャスは剣から火花を出しながら、アヴェンに突進した。
アヴェンは刃の曲がった、柄の紫色、鍔は緑色の剣を作り出すと、それを防いだ。
ヒーズ「速い・・・っ・・・」
ビシャス「お前、どっかで見たことあるけど、誰だ、よ!」
アヴェンの剣に体重をくわえて、その反動で空中に飛び上がるビシャス。
そうすると、剣に黒煙を加えて、黒い光が増し、その剣を振りかぶった。
ビシャス「答えねーなら、失せな!・・・・零式、「幻影」!」
一気に剣を振り下ろすビシャス。その剣から、黒い大きな閃光が放たれた。
その閃光は、アヴェンに向かっていくが、ぶつかる寸前、粉々になって、消えていった。
アヴェン「アヴェン=デ=マリテール。・・・弱すぎな君には、この一撃で、終わらせてあげよう。」
ビシャス「なっ・・・にィ・・・・!?」
それは、ほんの瞬間的な出来事だった。
海に落ちていくビシャスと共に、アヴェンの微笑した姿が、目立っていた。
大きな剣は消えかかっていて、やっと消えたと思うと、アヴェンが水上に浮かんだ。
アヴェン「虚雷丸!」(こらいがん)
ホワイト「すっげぇ~!強ぇぇ!やっほう!」
自分もジャンプして飛ぼうとするが、やはり飛べずに、ドボンと海に落ちるホワイト。
七福神は、残り・・・・三匹だ。と、思うと、ホワイトは心が躍った。
続く