第十二話 船上と戦場
ホワイト「腹減ったー」
カイス「先程食べたばかりだろう・・・・・しかもだ。その殆どはホワイト、貴様が―」
フロンタ「はっはっは!生きがいいね、お嬢ちゃん!」
そう、何を隠そうここは海の上。・・・真実を言えば船の上だ。カイスの兄、ヴァルサに言われてきたこの町は、港町で有名だった。
だが、既に組織の支配下に及んでいたために、出港など、ありえなかったのだ。そこへ、ホワイトが組織のチャオを倒し、何年ぶりかの出港を果たした。
舵取り場、つまり操縦部屋で、ホワイトは寝そべっている。カイスは腕を組み、ホワイトを見据えていた。
操船士、フロンタは、ご機嫌で舵を取っていたが、ヒーズが見当たらない。その時ヒーズは、かんばんに居た。なぜかというと―
ヒーズ「(ち・・・ホワイトの奴が飯を全て食べた所為で・・・・・)」
皆目である。釣りをしていたのだ。いわゆる、食物不足である。
しかし、組織の強いチャオを倒したのはホワイトなので、ヒーズはカイスほど、非情にはなれない。
その時、ヒーズの目の前に黄緑色のなにかが、現れた。
ヒーズ「な・・・なんだ?」
???「そっちこそ、こんなとこでなにしてんのー?」
その「なにか」は、ヒーズの前から消え、背後に着地した。急いで振り向くヒーズ。そこには・・
黄緑色の、ニュートラル・オヨギのチャオが、目の上に手をかぶせていた。
ヒーズ「き、君は誰だ?」
マイル「あたし?マイル。マイル=ポール。で、なんでここにいんの?」
マイル=ポール。なるほど・・・と、ヒーズは納得した。フロンタも、苗字は「ポール」だ。・・・妹か、姉・・・性格からすれば、妹だろう、と。
ヒーズ「いや、同行者の奴が飯を全部平らげたのでな。」
マイル「ああ、何か食べたかったんだ。そういえばいいのにい。」
マイルは振り向きながら、手をちょいちょい、と動かした。ヒーズはマイルに付いて行った。
かんばんから正反対の位置へ移動し、階段を下りていくと、そこは厨房だった。
ヒーズ「立派な台所だな。」
マイル「・・・抜けてるなあ。ここ、台所じゃなくて、「厨房」!」
ずっと田舎暮らしだった所為か、厨房などというものは見たことも訊いたこともなかった。
確かに、台所にしては立派過ぎたのだ。数々のオーブンレンジ。不思議な形の皿など。
マイル「で、何が食べたいの?」
ヒーズ「なにがあるんだ?」
マイル「なにが食べたいか言えば作るよ。そうだねぇ、じゃ、あの子は何が好きなの?」
ヒーズ「ホワイトか。ホワイトは・・・・そういえば知らないな。」
マイル「そっか。じゃ、気軽に料理しましょー。お兄ちゃんにも作ってあげないとね。」
あっという間に、マイルは火をおこして、豪華な料理を作ってしまった。
それ全部を運ぶのに、五往復ぐらいすると思ったヒーズは、氷の剣を取り出して、お盆を作った。
ホワイト「飯飯!!」
カイス「黙れ。」
ホワイト「だあ!もう我慢できねぇ!」
急に起き上がったホワイトは、すぐドアのほうに向かった。すると、ドアが急に開いて、ホワイトを壁に叩きつけた。
マイル「ご飯だよー!」
フロンタ「おお!マイル!珍しいな、お前が飯を作るなんて。」
ホワイト「飯―!」
グラグラッと船体が大きく揺れて、水上を突き抜けるようなドボーンという大きな音がした。
外ではなにが起こっているのか、ヒーズとカイスがいち早く出て行くが、何も見えない。
―となれば、かんばんだ。かんばんにいくと、海面から水蒸気が噴出していた。
カイス「蒸気だと・・・?まさか、海を蒸発させる程の力を持つものがいるのか・・・?」
ヒーズ「とはいえ、ここで待とう。何が起こるのか・・・・と、ホワイトはどうした?」
ホワイト「ほうほう!ごうじあんあ?」
「おうおう、どうしたんだ?」といいたかったのだろう。口の中にはたっぷりと豪華な食物が入っていた。
操縦部屋の上だ。そこに、ホワイトとマイルがいる。さすがに、あそこまでホワイトのような食欲はないので、ツッコミを入れる気力もないカイス。
ヒーズ「どうやら海の中で何かが―うわっ」
とっさに、ホワイトが飛び出していなければ、ヒーズはひとたまりもなかっただろう。
口の中に食べ物をいっぱいいっぱいにいれながら、ホワイトは剣で、その「剣」を防いでいた。そのチャオは、オニキスのダーク・ヒコウ・チカラ。
カイス「七福神・・・・先頭隊長・・・・」
ビシャス「ビシャス様だぜい!」
キンッとホワイトの剣を弾き、かんばんの先にうまく着地するビシャス。なぜかホワイトは動きが鈍く、目がうつろになっていた。
ホワイト「駄目だ・・・・眠ぃ・・・」
ヒーズ「仕方ないな・・・僕がやるか。」
コールドソード、水色の刃をもった「氷の剣」を華麗に持ち、ヒーズが構えた。
ビシャス「クールだね。君!」
ヒーズ「その言葉、後悔させてやろう。」
ヒーズが微笑した。
続く