第十話 港町「パラディン」
カイス「次行く場所は、ここだ。」
ヒーズ「どこだ?」
草原ともいえる、小さな丘の上で、カイスが地図を広げている。
豪邸から出てきたホワイト一行は、次の目的地、「パラディン」を目指すことになっていたのだが・・・
地図に、地名が「載っていない」。
カイス「ここだ。この線と、この線の間に、小さな崖に囲まれた漁村があるだろう。」
ヒーズ「ここか。成程。では、ここから東の方角だな。丘を降りなきゃいけないのか。」
ホワイト「お~い゛~!」
少し大きなリュックサックを背負って、ホワイトが丘を登ってきた。
人間にとっては軽くても、チャオにとっては鉄アレイ並みの重さだろう。
カイス「遅いぞホワイト。さて、目的地は向こうだ。」
ホワイト「全く反対側に近いじゃねぇーか!」
ヒーズ「さあ、行こう。」
とっとと歩いていってしまう、カイスとヒーズ。取り残されたホワイトは、いい事を思いついた。
ホワイト「中身を少し捨てよう!」
それがカイスにばれたときの、自分の姿が映像として頭によぎったので、仕方なく丘を下っていくホワイト。
カイス「ここを降りるのだが・・・・」
ヒーズ「問題はどうやって降りるか、だと思うが。」
リュックを少し置いて、崖の直前で一休憩取るホワイトとは似つかず、ヒーズらは崖の下を覗き込んでいる。
したには確かに町があるのだが、降りる術が無さそうだ。道具なんて持ってきてないし、周りの崖はほぼ垂直だ。
とてもじゃないが、チカラタイプぐらいじゃなければ、上れもしなければ、ましてや降りることは出来ないであろう。
カイス「そうだ。ここはホワイトを下に投げ込む―
ホワイト「却下!」
ヒーズ「仕方ない。コレしかないか。」
背にかけてある、一本の剣を抜き、右手に構えるヒーズ。
それを一振りすると、滑り台のような氷の下まで続くルートが作られた。
ホワイト「待て・・・俺、本当にぶっ倒れそうッス・・・・」
カイス「・・・・だらしがないな。」
カイスはリュックを片腕でもち、滑り台のようなところをはしって降りていった。
それに続いて、身の開放感を味わいながら、滑り台を滑り降りていった。
滑り終えると、村が真正面に来た所為か、とても大きく見えた。
ホワイト「ふい~。で、どこいくんだっけい?」
カイス「ここに定期船が来るはずだ。確か、兄上がここは昔、大きな港町で、雪が降るところで有名だという。」
???「あんたら、船に乗るのか?」
話を聞いていたのか、バンダナを頭に巻いた黒いチャオが歩いてきた。
ホワイト「おう!・・・で、て前ぇは誰だ?」
クォン「俺はクォン。一応、この町に住んでる。で、本題だが、ここじゃ難だから、こっち着てくれ。」
そのチャオ、クォンに付いて、その町の隅にある小屋に入るホワイトたち。
その家の中は、大して広くなかったが、チャオ四匹だけなら広さがあまるほどだ。
カイス「定期船は、いつくる?」
クォン「定期船ねぇ。今は、こねえんだよ。」
ホワイト「どうして!?」
するとクォンは、表情を暗くして、わずかに答えた。
クォン「海に出ると、船が必ず沈んぢまう。なにか・・・・呪みてぇなもんかな。」
ヒーズ「呪?・・・・興味があるな。」
スクッと立ち上がったヒーズは、剣と手袋を背負って、早速外に出た。
その後から、カイスが行ってしまったので、結局再び、リュックはホワイトが持つことになった。
出て行く寸前、クォンが、話しかけてきた。
クォン「待ってくれ。」
ホワイト「あ?」
クォン「夕暮れ時、港に行ってみな。もしかしたら、船を出せるかもしんねぇ。」
ホワイト「お、おう。ありがとな!」
だいぶなれたのだろうか。ホワイトはリュックを軽々と、片手で持っている。
見ると、もう太陽が沈みかかっていたので、ホワイトはカイスとヒーズにクォンに教わったことを言ってみた。
ヒーズ「そうか。ということは、そろそろ行かないと、間に合わないな。」
ドオォォォォォン、と、地鳴りと同時に爆発が起こった。港からだ。
リュックを持っているホワイトだが、いち早く港に走っていった。カイスらも、それに続く。
港では、黒煙を身体の周辺にまとっている黒いチャオが、港にいた。
船を一隻、真っ二つに割り、沈ませたのは、おそらくこのチャオだ。
ホワイト「ち・・・あの野郎ッ!」
リュックを投げ飛ばして、黒いチャオに掛かっていくホワイト。
しかし、黒いチャオは動かずに、ホワイトを見据えると、微笑した。
ヒーズ「なんだ・・・・・なにか・・・なにかがあいつの体の周りに・・・」
カイス「黒煙だろう?」
ヒーズ「いや、違う。壁・・・・よく見えない壁のようなものが・・・バリアというのか・・・」
その通りだった。ホワイトは殴りかかったものの、そのチャオの身体に届かず、当る直前に止められてしまう。
フュザ「私はフュザ。この町の支配を任されている者だ。貴様は、ホワイトと名乗る者だな?」
ホワイト「そうだけど。支配をまかされてる?・・・・なら、俺がぶったおす!」
左手に青い光を作り出すと、それを剣に変えて、フュザに向かって振り捲くる。
が、矢張りなにか壁のようなものに防がれてしまう。
フュザ「無駄だ。私は幹部並の力を持っている。貴様では、勝てん。」
続く