第九話 「兄妹対決」
カイス「起きろ!ホワイト!」
恐竜、いや、怪物のような大きな寝いびきをかきながら、ホワイトは寝ていた。
小部屋は、結構広いが、あるのはベッドと、タンスだけだ。
ホワイトたちは「アルビーク・トレインズ」という町に着いた。
カイスの命令に従って、ある大豪邸に着いたものの、そこには疑問しかなかった。
これは、ヒーズの言い分だ。しかし、ホワイトは、飯が食えて、快―
ホワイト「痛ってぇぇぇ!!」
カイス「やっと起きたか。」
どうやら、ホワイトはカイスに殴られたらしく、後頭部を抱えて床にはいつくばっている。
カイス「さあ、いくぞ。」
ホワイト「痛てててて!どこにいくんだよ!ひっぱんな!」
ヒーロー・ハシリ・ハシリというタイプはなんて不便なんだろう。頭の角が掴みやすいではないか。
・ ・・・ホワイトの、そう思ったほんの十数秒だった。
再び大広間に到着すると、既にヒーズがあくびをしながら壁によりかかっていた。
ホワイト「ようヒーズ。」
ヒーズ「ホワイトか・・・・なんだその頭は?」
カイスに引っ張られたせいか、頭の角が少し曲がってしまったらしい。
ホワイト「え・・・・・ドンマイドンマイ。」
カイス「起きたらしいな。話しがあるから少し、来い。」
扉が多すぎて、どこがどこだか理解できそうにないが、とにかく、ホワイトとヒーズはカイスに付いていった。
一つの扉を開けると、そこには下に下りる階段があった。
ホワイト「で?なにすんだよ?」
カイス「なにをいってる。私と兄上の力を披露するんだ。」
ヒーズ「見てるだけだと疲労が溜まるな。僕も―」
そこで、ヒーズに冷たい視線が送られたのは言うまでもない。
地下、と思われる場所に着くと、そこは大広間と余り広さは変わらなかった。
違うといえば、ここの壁は全て、金属で出来ているということだろうか。
ホワイト「広いなー。」
ヴァルサ「全員連れてきたな?」
カイス「はい。それでは、始めましょう。」
新品のようにきらきら光った剣を、カイスがヴァルサから投げ取った。
その剣を鞘から抜くと同時に、ヴァルサが四本中、一本の剣を右手で抜いた。
ヴァルサ「だあ!」
まずは、ヴァルサが剣を振り下ろした。それは、カイスの剣で受け止められるが・・・・
二度目の攻撃、左手で抜いた二本目の剣で、カイスを弾いた。
カイス「・・・・」
ヴァルサ「久し振りにバトるな・・・・よし、勘も取り戻したぜ。さあ、始めよう。」
カイス「はい。では、行きます。」
今度は、カイスの快進撃が始まった。地面を蹴り、すばやく飛び上がると、天井すれすれで剣を振りかぶって、降ろした。
見事なタイミングで、ヴァルサはそれを右手の剣で受け止めると、左手の剣を振りかぶった。
だが振りかぶった直後に、カイスは防いでいる一本の剣を弾き、天井に飛ばした。
ヴァルサ「・・・・天井に突き刺さっちまった・・・・」
カイス「では・・・話し通り。やります。」
ヴァルサ「ああ。いつでもこい!」
ジャンプして天井に突き刺さった剣を抜くと、再び二刀流になる。
そして、地面に二本突き刺しておいて、残り二本の剣を背中から抜いた。
そうすると、ヴァルサは突き刺さっている剣を拾い、計・・・四刀流になった。
ホワイト「四本も剣を持てんのか・・・すげぇな。」
ヴァルサ「準備は良いぞ。」
カイス「はい・・・・ではっ!」
シャキ、と、小さな音がして、剣を腰に構えるカイス。
そして、見切るような目つきをした後、足に力が入ったのをヴァルサは見逃さなかった。
カイス「八熱地獄!」
ヴァルサ「はぁっ!」
一瞬のうちに何が起こったのかは、ヒーズには分からないが、ホワイトには分かっていた。
理由は、ホワイトはカイスとヴァルサに近づいて、戦いを間近で見ていたのだから。
「一瞬」の内に、すばやく八回、剣を動かし、切り裂いていたのだ。
なんとか防いだヴァルサだが、全ての剣が後ろの壁に突き刺さっていた。
カイス「ふう・・・・」
ヴァルサ「おお!完璧じゃねえか!」
カイスは、柄にもなく、笑顔を見せた・・・・・と、口に出したのが災難。
ホワイトは、旅の途中、荷物運びの役になってしまった。当の本人は、「ドンマイ」と言っているが・・・・
そして、この豪邸での一日は、終わった。
続く