―第一章"三つ巴の意志"その11(前半)―
一同はあっけに取られた。まさか、あの事故にWorldが関わりあいになっているなんて誰も思いもしなかったからだ。
「あのリニアには政府の、ある人物が乗っていた。現官房長長官、黒葉克貴・・・"CHAOS殲滅部隊"を作った人物だ」
この人物は、澄でも顔くらい見たことはあった。20代後半、異例の若さでのし上がった政治家として有名になった男だ。
ポマードか何かで固めた黒髪に蒼白気味の顔、頬はこけていてずる賢そうな眼をしている。
容姿とは違って悪い噂は少なく、並の政治家よりは人気がある。
「あの男はチャオを何故だか毛嫌いしていて、今回の異常能力による事件多発であの部隊を作ることを決意した。
稲葉はそのことを会議にかけ、極秘のうちにあの部隊を組織した。その直後だ・・・リニア横転事故が起きたのは。」
四宮が喋りを止めると部屋はしんと静まり返り、あまりの無音に耳が痛くなった。
クルトの方を見ると、身動き一つせず、興味津々な顔で四宮を見ている。
アルフはアルフで、興味の無いかの様にテーブルに肘(と思われる部分)をついて顔を手の甲に乗せて変な方向を見ているが、
聞くことはしっかりと聞いている。
少し間を置いて、四宮は話を続けた。