―第一章"三つ巴の意志"・その3―
僕は家路を急いだ。
これでもかというくらいに。
やっと家が見えてきた。良かった・・・何事も起きては・・・
否。
僕の嫌な予想は当たったようだ。
家の正面に着き、家を見据える。
玄関のドアが破られている。
当然僕は急いで家の中へ入る。幸い親は二人とも出勤しているのでクルトしか・・・
いや、全然幸いじゃない!僕は更に急ぐ。
一階には誰もいない。クルトもいない。
・・・――しておけば―――に済んだのによォ
二階から誰かの、聞き覚えの無い声が聴こえてきた。クルトが危ない!
僕は階段を一段飛ばしで登っていく。二階には三つ部屋があり、手前は空き部屋、奥は僕の部屋、そしてその中間がクルトの部屋だ。
「誰か」がどこにいるのかはすぐに分かった。クルトの部屋のドアが破られている。
僕はすぐさま部屋に飛び込んだ。
すると・・・見慣れぬチャオがクルトの首根っこを掴んで持ち上げていた。
「き・・・よし・・・」
クルトは苦しそうに僕を呼ぶ。
僕はもう、無我夢中で見慣れぬチャオの腹辺りを蹴飛ばした。
クルトは開放され、チャオは壁へと飛んだ。
が、チャオは上手く身をこなし、壁に足をつけてそのまま床に降りた。
「ハッ!突然乱入してきて蹴りはねェんじゃねェの?」
このチャオは見たところ、ダークのハシリのチャオだ。
・・・だが、何か違和感がある。
その違和感に気付いたとほぼ同時だった。蹴った足先が痛みだしたのだ。
そんなチャオが硬かったのだろうか?
僕は驚いて、思わずチャオの方を見る。
すると、蹴った腹部分が鉛色に変色していた。そう、鉄の様に。
「ハッハッハァ!バーカ!このオレ"刃金の肉体"に蹴りなんかするからだ!」
「お前は・・・お前も政府の者なのか!?」
僕が聞くと、そのチャオはこう答えた。
「政府だと?ハッ!バカ言うな!このオレをあんな卑怯者の集まりと一緒にすんな!」
「じゃあ何の目的で・・・」
「オレか?オレはこのチャオに"協力"を求めただけだ!そしたらこのチャオは首を横に振りやがった。
協力出来ねぇっつーんなら政府と同じ、始末するだけだ!」
「協力?何にだ?」
「フン・・・そのチャオにでも聞くんだな。オレは忙しいんだ!じゃあなっ!」
それだけ言うとそのチャオは窓から飛び降りてどこかへ行ってしまった。
名前も言わず「政府とは違う」というヒントだけを残して・・・。
もしかして、僕の知らない所で知らない動きがあるのだろうか?
いや、今はとにかくクルトの介抱だ。幸い特にケガはしていない。
・・・あのチャオといい、「鉛色」といい、一体何だったんだろう。
謎は深まるばかり・・・。