~第二回~ ページ1
川べりで、草の中でいまだすやすや眠り続ける真っ白な体を持つチャオの頭を、少女は起こさぬように優しくなでた。
少年は、目の前で眠るチャオをまじまじと観察した。よく見るとチャオの体がうっすら――本当にうっすらと――透けていた。
少年はしばらく小声で「すげー」とか、「きれいだー」などと呟いていた。少女のほうも嬉しくなり、自然と顔がほころぶ。
「このチャオ、なんていう名前なの?」
「ミズ、っていうんだよ」
少年はへーっ、と息を漏らしてから、こう言った。
「コレって、白はんとーめーチャオでしょ!?」
しろ、はんとーめー?
少女は、自分がチャオだったら今、頭の上にはてなマークが浮かんでいるかもしれないと思った。
少年は頭をブルブルと、犬のように激しく振って、水滴を飛ばしながら言った。
「うん、白はんとーめー!すっごくめずらしい色なんだよ!」
しろはんとーめーというのがすごく珍しいということを少年は力説してくれたが、少女はそのすごさを最後まで理解することは出来なかった。
そもそも珍しいことがいいことなのかどうかもわからない。少年は爛々と目を輝かせて、
「すごいよ!みんなうらやましがるよ」
なんて言ってくれていたが。
「すごいなー、きれいだなー」
じっと見つめること数分、少年は言った。
「わたあめみたいでおいしそう」
「…………」
少女は三点リーダを十分に連ねてから、チャオと少年の間に自分の体を割り込ませて、頬をぷぅっ、と膨らませて言った。
「食べちゃダメだよ」