Viva la revolution 1
プロフェッサー・ルートは困惑していた。
学会もそれに困惑した。
なぜなら出てきたものがとんでもないものだったからだ。
食べかけの実。それだけなら良い。チャオの歯形がついたそれの化石だ。
しかも、炭素測定するとおそらく2万年前だという。
そう、この年代こそが最大の困惑の理由なのだ。
チャオは最近某生物実験時に偶然生まれた、いわば人工の生物なのだ。
それの歯形が2万年前に出た。それだけでも驚きだ。
いったい本当にいたのか?
いたとしたら何で生物実験のように技術で掛け合わさなければならないような、
高等生物が昔にいたのか?
謎は深まるばかりだ。
ルートは頬杖をつきながら各々の論文を聞くが、
どれもこれもが全く筋が通ってなかった。あぁ、落ちぶれたなぁと、
ルートはつくづく思った。これじゃあ、科学雑誌ヒューストンにも、
あまり有力な説は乗せられないだろうな。と。
今回の会場はそれが見つかった所の近くだったので、
論議が終わると、地質学者や歴史学者が現場に向かっていった。
全員どこか頼りなさげだが、自分は生物学者なので、
チャオのDNAの研究という地道で長い作業をしなければならない。
本当に面倒だが、少しでも昔の生物と関係があればすぐに英雄だろう。
まぁ、実質チャオのDNAはヒトの二倍・・・60億あるのだが。
ルートは車に乗り込もうとした。
彼は人通りのないと言っていいくらいの暗い道に車を止めておいた。
すると、なにやら緑色の宝石がどすんと積んである。しかも巨大で、
しかも浮いている。物理的にあり得ない。
と、緑の宝石がカッと光り、なにやら生物が現れた。チャオだ。
しかし、見たこともない種類だ。
目は無機質なように緑色で、身体は白と水色。全身が光り輝いている。
―・・・おまえは誰だ?
―あぁ、そうですね。私の姿は生物学者のあなたは見たことなくて当然ですね。
歴史学者なら見たことがあるかもしれませんが、
壁画にも私の身体がかかれております。
通称―歴史学者の人たちは、私をライトカオスチャオと呼んでいますね。
日本人の方々がたまにライカとか呼んでいますがね。彼らは略するのが好きなんですね。
―・・・聞きたいことはいろいろあるが、まずはこのばかでかい石は何だ?
―あぁ、今片づけますね。名前はマスターエメラルドと言います。
いや、エメラルドとは言っても、これはすばらしい力があって、
島一つを持ち上げる力があったのですよ。
まぁ、その島はもう消えてしまいましたが。
ゲームではなにかハリ・・・モグラ?みたいなのが「おらぁ!」とかいって、
かけら集めていますが、あんな奴いませんし、丈夫なのですよ、これ。
それでもってこれは混沌の時代より神として受け継がれてきた魔石なんですよ。
―神だって?
―ある意味では神ですよ、全ての元素を比率1:1で含んでいますから。
―・・・なるほどな。イオンを操れば軽くなれるし重くなれるし、
タンパクを合成して、生物生成も可能って訳か・・・ある意味では神だな。
と、言うことは知能はあるのか?
―いえ、知能はあるのですが、知能として無駄なものは使いません。
死を理解する知能、孤独を理解する知能、・・・人間の愚かな知能も。
IQ∞だからこそ、その知能を使わないと言う知能が生まれたんですよ。
ただし、その代わりとして私を生成した訳なのですが。
―なるほどな・・・で、何故俺の車の上に止まっているんだ?
すると、ライカはふふふといって、なにやらペンダントを渡した。
どうやら、マスターエメラルドの欠片のようなものらしい。
―それは通称ユグドラシルと呼ばれます。世界樹ですね。
―これがどうしたんだ?
―知りたいですか?ならば、私と一緒に2万年前の世界に行きましょう。
刹那、周りが光輝いた。
思わずルートは目を閉じてしまった。そして、ゆっくりと目を開けると、
ルートは小高い丘にいた。ペンダントはしたままだった。
―な・・・何だ!あの巨大な木は!
そう、ルートの目の前に見える森のずっと先に雲を余裕で追い抜いている、
5000mはあるだろうかという巨大な木が悠然と立っていたのだ。
―ふふ、驚きましたか?あれが世界樹・・・ユグドラシルです。
―ここはいったいどこなんだ?
―・・・ムー大陸とかよく言いますが、
あの大陸は実は地上ではなく空中に浮かんでいた大陸なのです。
そして、あのユグドラシルの中にマスターエメラルドが入っています。
―それが奪われたとき、この大陸は堕落して、エンドって訳か・・・。
だって、現代にこの島はないもんな。
―その通りです、そして、それを取ったのが・・・行ってみましょう。
そのころ全身ゲルのようなもので構成されているヒューマノイド型生物が、
ユグドラシルの頂上にあるマスターエメラルド前に立っていた。