usuallside~その2・村~
ユージャルは目を擦りながら起きあがった。少し朦朧とする頭で、周りを見回した。隣には、チャイルが倒れていた。
ユージャルは急いでチャイルを起こした。ユージャルと同じく、目を擦りながら起きあがった。そして周りを見回す。
「こ、これは・・・・・」
周りには、がれきの山が広がっていた。そして、異形の者達が動き回っている。その中の一体、目のないドラゴンが二匹に近づいてきた。
それは、目が無く、長い尻尾を持っていて、足が短く、太かった。翼のような物はあるものの、飛ばない。大きさはチャオの6倍ぐらいありそうだ。地面を這うように、ゆっくり二匹に近づいてきた。
それに恐怖を感じたチャイルは辺りを見渡した。そして、武器になりそうなものを探す。視界の隅に、包丁と果物ナイフを見つけ、それにそろそろと近寄り、手に取った。そして、
「ユージャル、これを受け取れっ!」
チャイルはそういってユージャルに果物ナイフを投げた。そして包丁をを剣のように構える。ユージャルはナイフを受け取った。しかしそれをドラゴンに向けようとはしなかった。
「僕は・・・生き物を傷つけたくない・・・・」
ドラゴンはユージャルまで後一メートルほどの所にいた。
「・・・一か八か・・・・こうするしか・・・」
チャイルは、自分にできるだけのスピードで走りながら包丁でドラゴンに斬りつけた。しかし、ドラゴンの皮膚は硬く、包丁の刃が少し欠け、ドラゴンの皮膚が少しめくれただけだった。ドラゴンは驚いて叫び、暴れ始めた。
「ダメだよ、不用意に攻撃しちゃあ。怒っちゃったじゃないか」
いつの間にか黒マントの内の一体が来ていた。クックと笑うと言う。
「そいつは攻撃されると怒り狂うよ。臆病だからね、・・・目がないから」
そういって、いったん言葉を切った。そして言う。
「そんなことをしていていいのかな?ナイツチャオ。そのままだとそいつに踏みつぶされるよ」
ユージャルはナイフを握りしめた。
「僕は・・・・生き物を傷つけたくない・・・。でも・・・・」
ドラゴンはユージャルの上にのしかかるような格好になった。少し苦しみ、そして動かなくなった。
「ユージャル!」
チャイルは、そう叫んでドラゴンの方へ走り寄った。力を込めてドラゴンを持ち上げようとするが、チャオの体の半分ぐらいしか持ち上がらなかった。それでもあきらめずに力を込めると、チャオの三分の二ぐらい持ち上がった。中からユージャルも手助けしていたのだ。ユージャルはドラゴンの下から這い出ると、
「・・・僕は、生き物を傷つけたくない・・・。でも、・・・自分が死ぬのもいやなんだ・・・」
ドラゴンに向かってそうつぶやいた。
「『光を統べる者』は私達の所へ連れて行く。取り戻したかったら、せいぜいあがくのだな」
いつの間にか黒マントはいなくなっていて、それの声だけが響いていた。
「『光を統べる者』ってなんのことなんだ・・・?」
空を見上げてチャイルがつぶやいた。
……………………
ソウ、タビヘツナガル