gillside~その1・研究所(前)~

いくつもの『何か』が並んでいる。目の前を泡のようなものが浮かんでいく。トイが記憶をたどったときに最初に出てくるのはいつもそれだった。後で他の『仲間』達に聞いてみたところ、彼らも同じだそうだ。フィーサが言うにはそれは『バイヨウキ』とかいうものの中での記憶だそうだ。
 トイはいや、『仲間』達は研究所で『作り出された』チャオだった。それぞれ何かしらの力を持っている。トイの場合は『闇を統べる力』と『魔法を使う能力』だ。ちなみにフィーサは『炎を統べる力』だ。『魔法を使う能力』を持っている仲間は今のところ他にはイート、フィーロ、フィーナだ。他の仲間達がその『能力』を持っているかは分からない。ただ『能力』が発現してないだけかもしれないし、無いのかもしれない。今のところ四人だけが確実に使えることが分かっている。
 いつものように人間がやってきた。彼らが自分たちを作り出した、と言うことをトイは何となく関知していた。勘のようなものだけれど。そして、彼らの言うことを聞く気は全くなかった。
 『私達は、誰も作ってくれと言った覚えはない』のだから。そして、言うなりにつもりも、彼らのために力を使うつもりもなかった。
 トイは灰色のチャオだった。手足と尻尾は生まれつきドラゴンのようになっていた。爪は鋭くとがっている。尻尾は長く貧弱で、とげが生えている。生まれつき翼が無く、人間がどこからかドラゴンを連れてきてキャプチャさせた。翼には二つのわっかが取り付けられている。『仲間』達も体のどこかに二つのわっかがつけられていた。そして変わった姿をしていた。『仲間達全員』の特徴は『手が異様に長』く『翼が大きい』ことだ。
 仲間は全員一次進化をしていたが、トイだけはまだしていなかった。しかし『覚醒』はしていた。
 靴音が響き、トイの前で止まる。
「T−1は・・・まだ進化していないようだな。他のチャオ達は進化しているのに・・・」
「おいおい、また『失敗作』か?同時期に生まれたF−3はもう『覚醒』も終わったようだが」
「いや、『覚醒』はもうしてるようなんだ。まさか・・・進化のできないのか?」
「そうだなな・・・。うーん・・・こりゃ『処分』だな。上には俺が報告しておく。お前は準備でもしとけ」
「いや、僕が報告に行くよ。本当は生き物を「処分」何かしたくないんだ・・・」
 好き勝手ともいえるようなことを言いながら人間はトイの隣のチャオを観察し始めた。トイは考え事をし始めた。人間達はトイは人間の言葉を理解することができないと思いこんでいる。『処分』ということはトイのことを殺すつもりなのだろう。
「自分たちで勝手に生み出しておいて、できが悪ければ殺すのか」
 トイは怒りがこみ上げてきて頭を押さえた。そして、意識がなくなった。




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ハメツヘノカウントダウン

このページについて
掲載号
週刊チャオ第127号
ページ番号
3 / 14
この作品について
タイトル
usuallydays
作者
バロン
初回掲載
週刊チャオ第127号
最終掲載
週刊チャオ第131号
連載期間
約29日