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ホームの左になにかある。2人の死でそれを確認できた。
原因が何かわからないが、その左に近づかなければいい。そう考えた人ごみは、1人、また1人と逃げ出すようにその場を去っていった。
今度は叫び声が出ている。恐怖から少しでも逃げるように、声を出してまぎれさせている。
その恐怖は、足を取り、言葉を失いさせる。
レナルドとアレックスも当然逃げた。残る人などいない。全員が逃げた。
そして、学校へと避難した。家まで戻ろうとしたら、ホームの左側を横目で見てしまうかもしれなかったからだ。
そういった地形になっているので、左側の反対にある、学校へと走った。
遠回りで家に行こうとしていた。
アレックスの他に、引き返してきた人も数人いる。
事故を知り、徒歩でさっさと帰った学生もいるだろう。学校にはまだ人がいる。
レナルドとアレックスは校庭の真ん中に行き、座った。いや、倒れこんだのだ。
冷静になるまで、時間を要した。そして、口を開いた。
レナルド「………頭が痛い」
アレックス「俺もだ。何が起こったのかさっぱり…」
消極的。アレックスは手が途中で途切れるのも目撃していた。ダブルショックである。
レナルド「早く帰ろう。もうだめだ。気分が悪いなんてもんじゃない。」
アレックス「当然遠回りだよな。もう嫌だ…」
もう空は薄暗くなっている。早めに帰らないと、恐怖が自分を乗っ取りそう。そんな感覚が襲う。
そのときだった。レナルドが「走って帰ろうか」と言って真っ先に走り出した。そのときだった。
[[ バタッ ]]
後ろで何かが倒れた。刹那、アレックスのうめき声が聞こえた
何がなんだか分からなかった。転んだのかと思った。
なぜか振り返りたくなかったので、前を向いたままレナルドは言った。
レナルド「アレックス…焦らず歩いてもいいんだぜ?いや、むしろそうしよう。さぁ、俺の横に来てくれ」
…一分くらいだろうか。ずっとレナルドはそこで立っていた。
空はどんどん薄暗くなる。
レナルド「おい…気絶したのか?なぁ、どうしたんだ?」
レナルドに恐怖が襲い掛かった。この言葉を口にしたのはいいが、実際には「どうした…」までしか正確に発音できなかったであろう。
本当に、怖かった。ありえなかった。
騙すような奴じゃない。アレックスはニュートラルだった。
レナルド「……おい、アレックス…」
もはや声すら出ない。そう発音したはずなのに。もう、足が動かない。そこで、警告が自分自身に出された。
「後ろを振り向いてはいけない」