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アレックスには見覚えがあった。あの女性と同じような状態であった。
仰向けで、血だらけ。嵐が通ったかのような、その衝撃的な光景に2人は足がすくんだ。
「ホームで事故を見てた奴らが急に血を吐いて倒れたんだ!俺はその事故を見なかったから詳しいことはわからねぇけどよ」
警官に情報を提供している、必死な会社員のニュートラルチャオ。
おそらく、悪も正も見てきたんだろう。情報が的確だ。
ヒーローとダークは偏りすぎている。その口から出る言葉はあまり信用はできない。
この会社員と同じニュートラルになることは、チャオの誇りである。
「誰か怪しい人はいませんでしたか?ナイフを持っているとか」
「いたら言ってるって!俺の前を通った奴をずっと見ていたが、急にぶっ倒れた!他の奴も同様にだ!」
「一斉に倒れたのですか?それとも、ドミノ倒しのような…」
「後者だな。どんどん連鎖しているかのように見えた。」
どうやら、同時に起こった殺人ではないらしい。流石に集団自殺では無いだろう。
ホームを見ると、何か輝くものを持っている人がいる。
よく見ると、指輪だった。結婚指輪なのだろうか?ケースも一緒に持っている。
流石に、結婚指輪を持って自殺なんてしないだろう。生きたいはずだ。
血痕の中の結婚指輪。シャレにならない。なにより、傷口も何も無い。
皆、証言どおりに血を吐いて倒れただけだ。ピクリとも動かない。
アレックス「……なぁ、帰らないか?」
人ごみから逃れた2人。アレックスはおどおどしてレナルドに言う。
レナルド「…本当にヤバイ、吐きそうだ」
その言葉を言った直後、ホームに様子を見に行った警官1人が血を吐いて倒れた。
もう1人の警官は立ち尽くす。

ありえない。何が起こっているのか。
目の前で人が死んでいく。もう、その場にいる人には十分に伝わっていることが一つだけある。
「ホームに行ったら死ぬ」
駅員も死んでいるだろう。電車が動くどころの騒ぎじゃない。
神の天罰かのような、変な死に方をする様を見て嘔吐する者もいる。言葉を失い、立ち尽くす者もいる。
キャーキャーワーワー騒がない。沈黙が場を覆う。
レナルド「ヤバイんじゃないか。ここにいると俺らまで…」
アレックス「あぁ、何か変だ。信じられねぇ。通報があってもこんなんじゃ…」
と、そこで先ほど警官に情報を提供していた会社員が飛び出す。
「原因を探らなくちゃこの場は収まらない。…みんな!伏せろ!」
その叫び声で現場にいる人は床に伏せる。
頭を押さえ、何も見ようとせずただ単に恐怖に怯えていた。
どうやら、もう1人の警官と相談をし、飛び込むことに決めたのだ。
警官はダークチャオ。ダークでどうやって警官になれたのかはわからない。実技で評価を買ったのだろう。
その警官は言葉も何も出なかった。だから、代わりに会社員が叫んだのだ。
会社員が叫んだ後、全員が伏せたのを確認して警官とホームへ飛び込んだ。男らしい。
そして、おそるおそるホームを見渡す。
まず右を見る。反対側のホームに渡る橋がある。そこでも死者がいるようだ。
上から見ていて、そして死んだ。その光景に何かを失いそうになっても、2人は耐えた。
そして、次に左を見た。

その瞬間2人は死んだ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第217号
ページ番号
4 / 10
この作品について
タイトル
「後ろを振り向いてはいけない」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第217号