8 二部

二部―8…制限時間…

どうなってるんだよ。
僕は嘆いた。情報を集めるには酒場が一番。
でも、RPGの世界じゃ無い。酒場なんて、そこはただの酒場でしか無い。

情報が集まってるところ…情報…情報…。
かなり無茶苦茶なあの大学は?いや、行っても門前払い…だと思う。

ちょっと遠くなるけど、GUN本部に行くとかは?
相手にされない。

よし。
僕は困った時のお助け者を頼るべく、本屋に向かった。
そこには、僕の叔父がいるはずだ。
とても若い、兄の様な存在のね。


 「お久し……こんにちは、叔父さんいますか?」
 「ああ、店長?今は出かけてるけど…。」
 「どこに行きました?」
 「ミスティックルーイン近辺。って言ってたよ。」
 「ありがとうございます!」

僕は急いで店を出て、ミスティックルーインに向かった。
駅に行く。15分ほどで到着するはずだ。


 「懐かしいなあ…って、懐かしんでる場合じゃ無いや。」

その通り。
僕はここで、初めて手掛りを見つけた。
何と、チャオがいる。いたのだ。
そこに。

 「チャオ…が、何でここに?」
 「ん?あっ…てめえ、それ渡せ!!」
 「何を?」
 「ポケットのそれだ!」

よく見れば、それは、マジリアース・バトル・フィレンツィア会場にいた…。
そう、赤い何とかとか呼ばれてたあいつだ。
ポケットを探ると、石を見つけた。宝石の様に綺麗だ。
まさしく。
「マッドネス」だった。

 「渡せ!今すぐ!じゃねえとぶっ飛ばす!」
 「嫌だ。渡さないよ。そりゃそうだろ。」
 「力付くでも渡してもらうぜ!」

何と、その鬼の形相のチャオは、拳を合わせて、唱え始めた。

 「ラークル・トライド!」

ぱっと開くと、瞬間移動としか思えない速さで、僕の目の前に来た。
だが、悪いが僕の力を見くびってもらっては困る。
これでも、逃げ足は速いんだ。

 「あっ、てめえ!待て!」

僕は、確めてみようかと、ここで初めて思い付いた。
出来るはず…だと思う。
絶対に、彼らはある。いた。何せ、目の前のチャオが証明しているじゃないか。
衆目が無くて良かった。

 「ルーイン・デ・アーク・ミゼリアム...」
 「ん?お前…白魔導師だったのか!?」
 「イービル・クライム!!」

てん、てん、てん。

何も起こんないじゃないか!
僕は急いで逃げ出したが、振り向いた先に赤いチャオがいた。

 「こけおどしかよ。さ、渡しな。」
 「嫌だね。僕には応援しているチャオがいるんで。」
 「何言ってんだ?ああ、電脳空間に入ってる障害、ってやつか?」
 「ああ、えっと、そんなもんじゃないか?」

てん、てん、てん。

 「じゃあ、海に落ちるか?」
 「それが良い。」
 「そうしろ。」

僕の人生もこれで終わりか…。
そう思われた時。
赤いチャオは竜巻のミニサイズバージョンに突き飛ばされた。

 「かはっ…誰だ、邪魔しやがんのは!」
 「〝ガブリエル〟三儀のひとり。とりあえず、風の使い手ってところさ。」
 「おいおい、何だそりゃ。」
 「ああ、失敬。君は〝別世界〟の方かい?なら、力の乱行は止めてもらいたいな。」

てん、てん、てん。
沈黙が流れた。
だが、赤いチャオは強い。次に放たれた風の攻撃をいとも避けて、迫った。
しかし、こっちの風の人も強い。風を盾にして、拳を防いだ。

 「おや、なかなかの拳闘術だね。俗に言う「天術」ってやつかな?」
 「何言ってんだっつの。こちとら、白魔導師だ。ラークル・トライド・グランデス!」

一つの節が追加された呪文は、拳を更に一回り大きく象る、魔力となった。
よもや本当に「魔法」である。
その拳が、風の人を叩く…瞬間だった。

黒い波動が、ビルより高く跳ね上がる。
ぐるぐると回転するその3つの塔は、赤いチャオの動きを完全に封じていた。
かっと光ったと思うと、赤いチャオは黒い檻に閉じ込められていた。
知っている。“崩壊”の「魔法」。
彼か…と思って見ると、そこには叔父さんがいた。

大きな杖を持って。

 「はっはっは。統領、あなたが出てきてどうするんですか?」
 「探し人だよ。シエル?どこら辺だ?」
 「すぐそこに、関係者がいるが。」

すると、叔父さんは僕の方向を見た。
驚いた様な顔つきになって、僕を見た叔父さんは、にやりと笑った。

 「へえ。って事は、あいつが〝選抜〟された訳だ。」
 「叔父さん!何ですか、その格好!それに…その杖!」
 「よう。」

僕の質問には答えず、叔父さんは笑って挨拶した。
というか、その姿は、どう見ても彼の記憶にあった、あの人としか思えない。
だとすれば…。

 「叔父さん、今の“崩壊”の呪文ですよね。何で知ってるんですか?」
 「知ってるも何も、これは俺の創った呪文だよ。属性は氷に帰すけど。」

やっぱりだ。
彼の主人にして、僕の叔父。
更に、“十翼”のリーダー。
「旱」の盗賊団の悪人は、こう言っていた。

 「フェーマ・マジシャンですか。」
 「おう。やっぱ知ってたか。」
 「すんませんが、統領、こいつどうするんですか?」

三部へ。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第252号
ページ番号
16 / 19
この作品について
タイトル
運命の十字架
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ第230号
最終掲載
週刊チャオ第256号
連載期間
約6ヵ月2日