第2話
月夜と少女とチャオと 第2話
彼女は、足を止めた。
そして、覗いてみた。
「これは・・・・?」
店員が出てきて、答えた。
「これはチャオ。あなたの育て方によって、いろんな進化をするんだ。」
「ふ~ん・・・・買っても・・・いいですか?」
別に何を思った訳でもないが、「何か」を感じたのである。
が、彼女をこの高い買い物に走らせたのは、「暇が潰せそうだから」であった。
ちなみにゲームというものを買うのは初めてである。
微かな過去の記憶によりそれがどういうものかは知っているものの、触れたことは無かった。
ちょっと高い買い物ではあったが、彼女は満足して家に帰っていった。
説明書とシティエスケープ相手に苦心し、ようやくチャオガーデンに辿り着く。
「こんなに頑張ったのは、いつが最後だったかな・・・・。」
「CHAO WORLD」という画面を前に、そう呟いた。
卵。
揺らして待つと、卵が割れた。
ここから、彼女の静かな戦いの日々が幕を明けた。
園長室に通い詰めの日々。
灰色の繭から何も出てこなかった翌日は、ティッシュが無くなった。
レースの応援にも思わず熱が入る。
桜が散り、蝉が鳴き、枯葉が落ち、雪が降る。
仕草に笑い、死に泣き、レースに叫んだ。
いつのまにか、18歳の誕生日を過ぎていた。
そんなある日である。
「ごめんくださーい」
「?」
「園原 茜さんですね。僕は親戚にあたります坂城 祐二、20歳です。」
「・・・用件は?」
「いえ、別にないんです。ただ、元気でいるか確かめたくて。」
「・・・そんな事心配してくれる人なんて、いないでしょ?」
「いや、何かあってはいけないと思って。
・・・もし何かあったら、ここに連絡して下さい。」
といって、彼の住所と電話番号の書いてある紙を置き、去った。
「・・・それじゃ、何で今まで来なかったんだろう・・・」
そう一言、再びコントローラーを握るのであった。
続く