第1話

ここは大都会、雨の降る夜。
乱立するビルの一角に、ポツンと明かりが残っている。
その部屋の中で、物語は始まる―――――


月夜とチャオと少女と 第1話


部屋。
未だかつて、心の扉を知らない少女が、そこにいた。
園原 茜(そのはら・あかね)、17歳。
無論、独り。
今夜も冷たい雨を見ている・・・・

彼女は、「扉」を探していた。ずっと。
いつからかは、分からない。
気が付いたら、がむしゃらに「扉」を探している自分がいた。
でも、未だ見つからない。
彼女自身、諦めかけていた。

学校、いつから行ってないんだろう。
親、いつから面倒見てくれなくなったんだろう。
夢、いつから見なくなったんだろう。
他人、いつから話さなくなったんだろう。
自分―――――

気が付いたら、現在を生きる「自分」がいた。でも、他には何もいなかった。

記憶もだんだん「現在」のみになっていく。
過去のことで自らの記憶にあるのは、星降る夜・・・でも、それだけ。
だから、思い出そうとして、必死で夜空を見上げていた。でも、今はそれもできない。
分かっていても、気が付いたら、窓から空を見上げていた。

「そうだ・・・意味無かったんだ・・・」

そう呟くと、窓を閉めた。
気が付いたら、太陽が昇っていた―――――


彼女は買い物に出掛けた。
何故か銀行の自分の口座には、貯金がある。それも、なかなか減らない。むしろ、増えていくような気がした。
でも、昨日の金額なんて覚えてないから、分からないけど・・・

1日分の食料を買い、帰るために大通りを歩く。
ふと左を見ると、そこには洋服が立ち並ぶ。
でも、そんなものには興味は無かった。
だから、右に首を振った。
その彼女の目にある物が写り、足を止めた。
彼女の視線の先には―――――



モニターの中に、チャオがいた。


                続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第5号
ページ番号
1 / 4
この作品について
タイトル
月夜と少女とチャオと
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第5号
最終掲載
週刊チャオ第14号
連載期間
約2ヵ月5日