Before Chapter 6‐4
「わかりました!」
今度こそわかってくれたようだ。メモ帳をまたも閉じる。
そして俺達に敬礼してこう答えてくれた。
「逮捕にご協力感謝します! さぁこっちに来なさい」
ニァ「い・・・いやニャ!ウチ、行きたくないニャ~」
いざ逮捕の瞬間となると先ほどの強気はどこに行ったのか 泣き出してしまった。流石に俺よりも小さい子どもが連れて行かれるのを見るのは気分が良いものではないけど・・・
シェア「あのねぇ・・・だったら最っ初から盗まなかったらいい話でしょ!」
怒鳴り声が響く、久しぶりに自宅に落雷した。
まぁ被害者であるこいつにしてみたらニァの言う事はわがままでしかないわけだ。
ニァ「だって・・・御主人様とはニャれちゃって・・・お腹空いてぇ・・・場所もわかんニャくてぇ・・・・・・」
シェア「えっ・・・?」
ニァ「我慢してたけど・・・最後には我慢できニャくなって・・・」
事情聴取には一切聞かされなかった話を聞いている内にどうやら相当苦労を重ねてきたようだ。
これには皆の顔にも同情する表情をみせていた。相変わらずの面構えなのはサムライただ一人だけ。
ミディ「・・・・騎士さん、こいつの逮捕をやめさせてもらえるかな?」
「えっ?」
ミディ「何ていうか・・・悪気があってやったって訳じゃあなさそうだし・・・」
「しかし・・・」
唐突な物申しに騎士は困ってしまった。自分の立場という物を考えたらここで逮捕をする事が正義。
しかし犯罪に走った経緯やニァの苦労なんか聞いていたらそれこそ躊躇ってしまう。
どちらつかずの状態でフラフラしているシーソーの様な考え、それを一方に傾ける決定打となったのは俺とシェア達の会話だった。
ミディ「それに元々俺達にくれる物だったんだから俺が許したら問題なし!そうだろ?」
シェア「まぁ・・・それはそうね。」
パラディ「それにさ、ミディが被害届けを出さなければ犯罪にはならないんだから・・・」
三人は期待の目で騎士の顔を見続けた。もうこうなっては傾くしかできないだろう。
その答えを出すのに時間はかからなかった。
「仕方ありませんね・・・」
やや不服そうな返事であったが顔は少し緩んでいた。彼もこういう結果になる事を少しばかりは望んでいたのだろうか・・・?やがてニァを縛り付けていた荒縄のロープは外される。すると・・・
ニァ「おおきにニャ~!」
とその場で嬉しそうに跳ね回る。一時は失いそうになった自由というものをありがたさでも改めて噛締めているのだろう。その後跳ね回るのを終えると静かに俺の元へと歩み寄ってきた。
ニァ「もう大好きニャ~!」
ミディ「のわわわ!ちょ・・・・放せ!」
衝撃が走った。平然と皆の前で抱きつくニァ。
ってかものすごく恥ずかしいからさっさと放してくれって!!
そしてこの一連の動作を終始見ていたシェアの様子がおかしかった。
頭からは黒い煙のような物が立ち込めていて・・・どことなく顔も赤くなってきている。
どこかで感じたようなこの気配・・・
サムライ「般若再び・・・」
ミディ「あの・・・・シェア…さん?」
「・・・・・・この・・・あんたって奴はー!!」
怒声は近隣の町にまで響いた。
その頃。
レア「皆どこ行ったんだろう~?私だけ置いていっちゃって~」
一人文句を言いながら茂みの中等を探すレア。
しかし当の皆は全員自宅にいる為、見つかるはずが無かった。
当てもないし引き返そうと思っていた時である。
レア「あれ?」
森の中には不自然な紙切れが一枚。紙切れと言うには大きすぎる、丁度レポート用紙を一枚切り取った物が落ちていた。拾って中身を読んでみるが・・・
レア「A・N・・・・O・・・・ア・・ノ・・ザー?」
学のないレアには内容どころかタイトルさえ読めなかった為、そのままどこかへ投げてしまった。
やがて風に吹かれてその身をまかせる書面のタイトルにはANOTHER REPORTという走り書きが記されてあった。