Before Chapter 6‐2
久々に聞いた気がするさわがしいあいつの声。
毎朝、毎朝さわがしく家へ押しかけていたあの頃が妙に遠い思い出に感じるのは最近の出来事に濃い内容が多いからだろうな・・・
だからこそ今回がとても貴重に感じる。
だからって変に意識せずに・・・いつもと同じ声で、表情で・・・。
俺は扉を開けた。
シェア「ちょっと・・・まちなさ・・・いって・・・」
ミディ「朝から大変だな。」
シェア「・・から・・・ドロボウなのよ・・・・泥棒!」
朝から息切れしてるこいつを見たのは初めてだ。
そして泥棒を追っかける事も初めてだ。
まぁ・・・こいつに捕まるようでは泥棒になれないだろうしな。
ミディ「それで何を盗られたんだよ?」
言いにくそうな表情をするシェア。
表面だけの笑みを浮かべながらもこっちの状況をうかがっているような・・・とにかく覚悟はしておこう。
シェア「・・・あんたの所に差し入れするはずの食料全部」
ミディ「犯人の特徴は?」
それもよくわからないらしい。
さっきと表情が変わっていない、よくまぁ犯人の特徴一つも知らないで追い掛け回せるものだ と少し感心したくなる。
それよりも俺の家の貴重な貴重な食料を勝手に盗むとは俺に対する挑戦状以外の何物でもない、たたき斬ってくれる!
「さわがしいな」
とサムライが
「にぎやかそうですね」
とリンネさんが横から入ってくる。
隠し立てする必要もないので事情を説明すると二人とも犯人捜索に手を貸してくれるようだ。
二人とも快くと言うわけではなくリンネさんに頼まれてサムライはしぶしぶといった感じだったが・・・
ミディ「じゃあリンネさんはそっち、サムライは向こう、シェアはあっちを探してくれ」
と適当に指示を出して自分も自宅周辺をぐるりと回ってみる。
特に怪しい様子もなければ潜んでいる気配でもない。
元々この家に金目のものなんてあるわけないから泥棒だって用もないだろう。
あまり威張れる事ではないが事実は事実なので素直に受け止める。
しかし何か寂しい気分はごまかせはしないのだが・・・
しばらくぶらつき回ってみたが結局異常はなかった。
まぁそれもそうだ、泥棒が俺の家に逃げ込むわけがない。
でも待てよ・・・泥棒が盗んだものって確か・・・
食料。
大豪邸に忍び込んで金目の物には目もくれずに食料だけ盗っていく奴なんて居るか?
よほど腹をすかせていたとしても金品を盗めばすぐにでもお金に換えられる訳だし・・・
頭の中で色々なシミュレーションが進展していくがこれといってパッとくるものがない。
食べ物しか目に映らなかった時くらいか・・・? どれにせよ変な奴だな・・・
扉を開けて一足早く自宅の椅子に深く座り込む。
そして一息ついたところでレア、続いてパラディがいない事に気づく。
後者は朝も見てないからいいとして前者の方は?
ミディ「あれ?どこいった~?」
「にゃ?!いきなり声出したらびっくりするやろ!」
ミディ「・・・はい?」
「食事中に大声出すなんて常識知らん田舎者だにゃ!」
・・・・何だ?
全く理解できない状況。
後ろに伸びた独特な流線型をした頭。
頭の上に変な物が生えてるし、尻尾もどこか違う。
こいつが犯人?
よくわからないけど確かめてみよう。
ミディ「何盗んだの?」
「食料や!・・・・・・・ぁ」
そそくさと荷物を纏めて去ろうとする盗っ子を難なくお縄状態にした。
自白もしてくれたし証拠充分だ。
「うにゃ~!ウチを離さんとどうなんのかわかってんのにゃ~?!」
・・・さてと皆を呼ばないとな。