第8章 訪問者は突然に 2
奇妙な光景だった。
水面に映る自分の姿が波紋で醜く歪む様に。
頭上に広がる無限の青もそれに置き換えたかの様な状況。
説明のつかない現象、俺の中では一連の原因を勝手に決め付けていた。
ミディ「魔法か・・?」
刹那。
何かを破ったような轟音が周囲にこだまする。
今まで長きに渡って溜められていた力を一気に解放した場面なのかもしれない。
とにかくそれを合図とばかりに空には穴が開いた。
空間の切れ目はあらゆる物を封じ込めようと吸い込み始める。
枯葉、枝、小石や砂、薪、そして俺達自身をも。
軽い物は空間の狭間へとどんどん吸い込まれていくが俺達はまだ重いせいか身体が浮かび上がるようなことはなかった。
しかしそれは確定している訳ではない。
ニァ「にゃニ事?!」
シェア「こっちが聞きたいわよ!!」
皆浮き上がりそうな身体を必死で堪えている。
異常現象は周囲の土までも抉り取り、その猛威を存分に振るっている。
土砂が吸い込まれていく様子はさながら渦潮によって吸い込まれていく白波。
仮にも飲み込まれてしまえば・・・終わりだ。
リンネ「皆さん!大丈夫ですか?」
パラディ「何とか!」
ミディ「同じく!」
周りの音がさっきより聞こえるようになってきた。
どうやら先ほどから鳴り続けている轟音が弱まったのだろう。
勝手に予想してこの異常がもうすぐ終わる物だと心に決める事で恐怖心を振り払おう、俺にはそれが最善の一手だった。
それによがる事しかできない、改めて自分は弱くて無力だと痛感させられる。
ようやく暴風が収まってきた。
体感できる頃には各々位置を変えることができるようになっていた。
散り散りになっていたメンバーは一点に集まり始める、
集まった頃には異変は一つも残っていなかった。
サムライ「無事か?」
全員が全員首を縦に振る、唐突の出来事である為戸惑いの色は隠せなかったが、傷跡等も見当たらない。
結果としてはラッキーだったかもしれない。
それでも一連の出来事には疑問や不満を持つ者で全てを占めていた。
パラディ「今のは魔法か何かかな?姉さん」
サムライ「連中の牽制攻撃かもしれん」
シェア「いや、魔力らしいものは全く無かったから関係ないと思う」
苦々しそうにそう答える。彼女も魔法ではないかと疑っているのだろう。
でも今まで教わった流れだとこれは違う。
勉強し続けた事が自信となってそう答えられるはずなのに・・・
魔法以外の説明がつかないのだろう。
ミディ「とにかくいった・」
背後からまたも轟音が鳴り響く。
咄嗟に判断し全員が自宅の方へとかけ始める。
皆が皆、非難ができたことを確認して固く戸を閉ざす。
それが全員の緊張によって張り詰めてた糸を断ち切る要因となった。
その場で座り込んで脱力したのだった。
再び全員に力が戻るまで、音を発していたのは外と中に接している窓ガラス。
怯える子どものようにガタガタと震えていたのだった。
一足先に皆より力を取り戻した俺は窓から外の様子をうかがった。
しかし今度は先程とは違う、何かがおかしいのだ。
新たな狭間はあらゆる万物を暴風と共に吐き出す。
岩、土、鉄の塊。
思いつきそうな物を一通りばら撒いてから最後に一つ、ある物を落とした。
それはよくみれば物ではない、者であった。