第8章 訪問者は突然に 3
ミディ「生きてるのか・・?」
シェア「これだけ大騒ぎにしておいて死んでるってのは勘弁ね。」
レア「そうよ!おかげで家の雨漏りも絶対ひどくなったし!」
ニァ「そういう問題ニャ?」
とにかく外と同じく家の中も大騒ぎだ。
狭い屋内には色々な思いや考えが飛び交い静まる気配はない。
徐に出かける訳にも行かないから外にも出れず鳥籠に閉じ込められたかのようだ。
サムライ「外には出るなよ」
リンネ「・・・嫌です、助けに行かないと。」
サムライ「そいつみたいに巻き添えを喰らいたいのか?」
リンネ「構いません」
パラディ「ちょっと二人とも!」
リンネ「ごめんなさい、行って来ます。」
・・彼女は自らの身を省みず、倒れている人物の救助に向かった。
遅れて、パラディがその後に続く。
その様子に苛立ちを隠せずに舌打ちをするサムライ。
・・・たった一度のアクシデントでここまで仲間内が分裂してしまうものだろうか?
どうにもその現実を飲み込みたくはなかった。
・・・・こうしてただ仲間が別れていくのを傍観している自分は正しいのか?
それとも・・・割って入るのがいいのか? ―わからねぇ。
しばらく経ってから俺は口を開いた。
とはいってもまだ介抱しに行った二人が帰ってきてないという事はそれほど時間は経っていないのだろう。
ミディ「あれって本当に魔法じゃないんだよな?」
シェア「・・・・多分。」
ミディ「七割八割位?」
シェア「多分ね。」
ミディ「・・・・・多分かぁ・・・。」
その言葉がそれからずっと頭の中で渦巻いていた。
二人が負傷者を連れて帰ってきても。
気を失っているだけだとわかり介抱をしている間も。
・・・もうずっと。
これだけが頭に染み込んでしまったみたいだ。
元々・・俺達は何の為に・・・こんな目にあっているんだ?
何で傷だらけになっても戦っているんだ?
見えない敵におびえながら毎日を送っていかないとならないんだ?
ヤバイ、わからない。目が回ってきた。
壁に立てかけている剣をじっと見つめなおす。
―最近あれを握る事が異様に多かったけど、何故か気にならなかったんだよ。
―今の今までは。
―怖いのか? ―そんな事は・・・・・あるかもな。
でも生身が斬られる時よりも怖い事はあるよ。
死を目前にする事と同じくらい涙が出そうなことはあるよ。
・・・・だから例え斬られなくても例え死にかけなくても逝ってしまいそうな事がある。
その答えが・・・・
返ってきてくれるのか?って事だ。
・・・おれの日常。
くだらない事で笑ってつまらない事で焦ってしょうもない事で時々怒って・・・
そんな毎日は戻ってくるのかな?
光石?緑の里?
そんな物、俺の日常には無かったんだ。
あれを返せば、戻るのか?
「ミディ?もうそろそろご飯作らないと・・・」
ミディ「・・・」
パラディ「・・・・ミディ?」
ミディ「あ・・・・・・ゴメンすぐ作るよ」
パラディ「できたらさ・・怪我している人の分も作って欲しいんだけど・・・駄目かな?」
ミディ「わかった、やってみるよ。」
もう・・・戻れないのかもな。
そんな答えが心の中ではあぶり出しの様にうっすらと、だが確実に色濃くなってきていた。