第8章 訪問者は突然に
部屋を紅く染め上げた恐怖の贈り物。鎧の集団が宣戦布告のメッセージを送ってきてから約
三日は経過した。しかしこの三日間というもののいつもと変わらない平凡な時間を過ごしている・・・。これが嵐の前触れというものだろうか・・・?
ミディ「ふぅん・・・」
いつもとさして変わらない日常生活、これはこれで喜ぶべき事なのは大いにわかっているのだがしかしこれでは拍子抜けというものだ。あれほど大胆極まりない行動を起こしてからのこの静けさ・・・答えに辿りつく事の無いこの考えは結果として苦笑いという表情に落ち着いた、しかしそれが何の解決にも導かれるわけではないと思うと頭が重くなりそうだ・・・
レア「ねぇ・・・」
ミディ「あ・・・あぁそこのプリン食べていいから。」
レア「そ~じゃなくてサムライが・・・」
丁度部屋の片隅の所に腰をかけこちらへ来いという手招きをしているサムライの姿があった。その表情は固く、とても落ち着いていると呼べるような雰囲気ではないのは誰の目から見ても明らかだ。俺を呼んでいるのも深刻な問題に関する事だろうな、そう思うと全身に余計な力が加わっていく様だ。
サムライ「気が滅入っているようだな」
ミディ「え・・」
サムライ「・・・無理もないが・・・今は束の間の休息を楽しんでおけ」
ミディ「そんなことないって!!」
叫んで数秒たった後、自分の失敗に気づいた。
何でこんなむきになってるんだよ・・・わかりやすすぎるだろ。
部屋の中にいる皆の視線がくすぐったくて適当に外へと逃げる口実を作ろう!
えっと・・・・・・
ミディ「・・・外の空気吸ってくる」
また・・・やってしまったな。
そう自己嫌悪しつつも逃げるように立ち去った、背中に当たる視線に辛い物を感じた。
庭にたどり着くとどうやら他のメンバー達が作業をしているみたいだ。
俺も仲間に入れてもらおうか・・・。
シェア「あっ・・・ミディ、家の中にいたんじゃないの?」
ミディ「ちょっと気晴らしに・・」
同時についさっきの出来事を思い返し苦笑いの表情になってしまう。
変に思っただろうが流石にそこまで入り込もうとはしなかった様だ。
ニァ「薪割り中にゃ~」
リンネ「さっきから働いているのはパラディ君一人だけですけどね」
パラディ「・・・」
作業現場となっている切り株の隅には大量に割った薪が無造作に転がってあった。
その数もかなりの量でもうそろそろ全ての作業を終えようとしている所だ。
それを一人で黙々とこなしているパラディを見てつくづく努力家だと思う。
ミディ「強くなるよなぁ・・・」
気づけばもう雲が赤く染まり始める夕方時、後一時間もすれば陽も暮れる。
遠くの夕焼け空に見える鳥の姿をジッと見つめては物思いに更けていた。
・・・?
ミディ「雲の流れが速くないか?」
リンネ「・・そういえば風もでてきましたね・・・」
風に揺られて周囲の茂みの葉がざわめき始める、背筋を凍らせるような恐怖感が俺の身体を通った気がした。
その直後・・・
パラディ「え!?」 ニァ「うにゃ?!」
シェア「ミディ! 空が!!」
異変の数分前 【???】
無機質な廊下、とある男はそこを歩いていた。
入り組んだ廊下の一角を曲がり数歩歩いた時であった。
突如足元が不安定になり男は宙を舞う感覚に襲われた。
その刹那。
???「な・・・?」
「お~い!・・・ってあれ?」
「・・・あいつさっきここを曲がったよな?」
彼の姿は完全に消えていた。