第6章  とてもとっても長い一日 6

街へと続く一本道、街の水源「ルナの湖」と港町「シリウス」を繋ぐ為の重要な一本道なので最低限の整備はされてあるもののしかし都会ほど洒落た物ではない。
精々湖と街との距離を示した看板が所々に立てられているくらい。

そんな事はどうでもいい。
とにかく食材を切らしてしまった以上はその食料を調達してこなければならないのだ。
目の前に存在する道をたどっていけば自然と、ある屋敷にたどり着くことだろう。
シェア・・・パラディ・・・この二人のお屋敷、リミット家。
普段なら二人と一緒に行くのだが今日は生憎一人、気まずい事この上ない。
とはいえ体面を気にしていられるほど生活に余裕があるわけではないのだから仕方ない。
ついに決心し一歩目を踏み出す・・・
   「お~い!ちょっと待って!」
ミディ「ん? お」
丁度良いところに来てくれた、これで気持ちは楽になる。
後ろから駆けて来たのはパラディ、あの盾がどうも目立って分かりやすい。
ミディ「忘れ物か?」
パラディ「そんな所、ミディは?」
ミディ「・・・食料調達」
できるだけ皮肉に聞こえない様にしてかつ重要な単語を羅列した。
軽く微笑むとパラディは歩き始めた、どうやら伝わったらしい。
自分より数歩先を歩くパラディが妙に頼れる様に見えた。



【シリウス 駐在所前】
家から屋敷へ最短距離でたどり着くには必ずここの駐在所を通らなければならない。
通らなければならないって別に自分がやましい事をした覚えはないのだがとにかく駐在さんというと少し怖いイメージがある、それは今も昔も変わらない。
ミディ「なぁ・・・早く通り抜けよう」
パラディ「何で?」
ミディ「何かこう・・・嫌ってか怖くないか?」
「はははは!確かに分かるよ、僕もそうだったからね」
最近戦闘という物に慣れてきたのか身体が反射的に構えをとってしまった。
話しかけてきた相手は夜盗でも賊でも何でもない、駐在さんだった。
パラディ「あなたは・・・あの時の!」
「覚えててくれたかい?泥棒騒ぎの時に事情聴取したりした・・・」
ミディ「えっと・・・名前は?」
「私の名はクレイム、この街の治安を守るようにと最近配属されてきたんだ」
パラディ「僕は・・・パラディ=リミット」
ミディ「ミディ・・・家名無し」
クレイム「二人ともよろしく!」
そういうと彼は俺達の手をとり、固く握手をした。
彼は全身を白を基調とした鎧に身を包んでいる、そのせいなのかかなり力が込められて少し痛かった。

クレイム「困った事があったら何時でも相談しに来てくれて構わないからね」
冗談っぽく敬礼をするとそのまま街の人込みの中に消えていった。
それと同じように自分の心の中でも駐在さんという立場がかなり変化をもたらしていた・・・
俺の心の中にあった偏見はものの数分で完全に消え去っていたのだ。

ミディ「とにかく。早く行こう!」
パラディ「怖くないでしょ?」
ミディ「でしょ?・・・って・・・」
パラディ「僕が一旦来た時もあの調子だったんだから」

なるほど・・・。
納得と同時にお屋敷は見えてきた。
大きくて立派な門、近づくにつれいつもと少し違った状況になっているのに気がついた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第307号
ページ番号
51 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日