第6章  とてもとっても長い一日 5

外の風は身を刺す様に冷たい、それも間隔を空けることなく吹き続ける。
用もなく外出するにはいささか抵抗感あり、家でぬくぬく過ごしていたいそんな日和だ。
風が遠くの声を運んでくる、丁度自分の耳には二人の話し声が入ってきている。
先ほど姿を見せなかった二人だろう・・・目星はついている。

サムライ「里を取り返すには奴の存在が必要不可欠。それは以前にも話した。」
リンネ「それはわかっています、でも・・・それだけでは・・・・」
彼女はその先の言葉を発するのをやめた。しかしサムライには充分に伝わっている様だ。
リンネさんの言いたい事。それは・・・
サムライ「戦力不足は否めない・・・それはわかっている。」
するどい眼光が彼女の目を睨みつける、ただ違うのは威嚇を意味する様なものではなく互いにその事を察知し確認しあっている 傍からの視点でそれだけわかれば十分だ。

サムライ「ここの家の住人達を鎧の集団から引き離す、その為にはここの連中の力を当然借りねばならない。」
リンネ「・・・」
サムライ「ここの連中はもう一連の出来事の関係者だ、無事に済むはずが無い。」
水を打ったかの様な静けさ 一拍、間を空けて一言発する。
リンネ「・・・あの、彼等に、ミディさん達に・・・」
サムライ「知りうる限りの情報は話し、仲間として認めろ だな?」
納得の表情を浮かべるリンネさんを確認し、息を改めて整えなおす。
「これでいいか? 童・・・いやミディといったか」

ご指名とあってドキッとするものの、これで二度目とあって驚きよりも関心の方が大きかった。もうばれている為隠れる必要もない、建物の影からスッと身を出す。

ミディ「あぁ。」
リンネ「すみません、でも相手は貴方達を完全にこの出来事の関係者と認めています。」
サムライ「そうなった以上、これが互いにとって最善の方法だ。」
・・・話をまとめてみる。
今の俺達が相手側、つまり鎧の集団に敵として認められているのは確か。
証拠は誰かに見られている様な気配を感じとっている サムライの一種の勘と、もう一つは雑木林で襲撃された時の事。連中の一人が持っていたとするソレはサムライの勘等というあやふやな物と違い確実な物的証拠である。
相手側はおそらく「光石」の確保と同時にその事情を知る者または関わった物の抹殺を目的としており、俺もレアもシェアもパラディもニァでさえも対象となっている。
殺されずに生き抜く為には俺達はサムライ達の存在が必要であり、またリンネさん達も里を取り返すために戦力を蓄える必要がある。
つまりは肩を並べて戦えば簡単には鎧の集団の思い通りにならないという事だ。

ミディ「じゃあ・・・よろしくな。」
サムライ「あぁ」
軽く握手を交わす。初めて会った時とは随分丸くなったな・・・不意にその疑問が浮かぶ。
しかし彼は仲間と言ったのだから・・・信じよう。

ミディ「じゃあ・・・俺は仕事があるから先に抜けるよ。」
立ち去る事はリビングと一緒だが足取りは楽しいスキップの様だった。
意外に話せばわかるものだ。


リンネ「これで貴方の本当の名前が言えますね♪」
サムライ「・・・まだ、それはやめろ」
リンネ「え?」
サムライ「さっきはあぁ言ったがこの策は一つだけ問題があってな・・・」
リンネ「・・・?」
サムライ「奴等が命惜しさに光石を敵に渡す・・・そうなってしまえば俺達にとって最悪の展開を迎える事になるからだ。」
リンネ「ぁ…・・でも!」
サムライ「仮に光石を引き換えに命を助けてくれとなれば、それは俺達が耐えに耐えて、肉体的にも精神的にも追い詰められた時期に裏切られてしまえば・・・連中は事態の早期解決を優先し、おそらくそうする。簡単にいかない相手が自ら折れるとなれば、それ程の好機はないからな・・・」
リンネ「そんな・・・」
サムライ「連中がこの条件を飲んで、守るとしても俺達は別だ。光石についての事を全て吐かされる、拷問され、全てを奴等に知られた上で最後は殺される。用済みと称して。」
リンネ「っ・・・」
サムライ「童達に裏切りの兆しが見えたら全員斬り落とす、兆しが無ければ戦力として一緒に居ればいい、それだけだ。」

サムライ「全てを生かすも殺すもあいつ次第だ・・・」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第307号
ページ番号
50 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日