第五章 おサムライにはご用心!?

家の空気とはうってかわって外は心地良かった。
新鮮な空気、すがすがしい風。
身体にきれいな空気を取り込みそして中に溜まった嫌な空気をすべて吐き出すように深呼吸する。
同時にため息も外へと吐き出しておいた。

ミディ「なんだか・・・すっきりしないな・・・」
心地いい。
だけどすっきりしない・・・。
自分でもよくわからないこの感覚をずっと抱く事には抵抗感がある。
その為にはあの剣士・・・いやサムライだったっけ?
あの人から話を聞く必要が・・・それよりも皆の関係を円滑にしないとな。

周囲をポツポツと歩いていくと、茂みの中でのびている駐在さんがいた。
二人とも後頭部を殴られてのびている、まぁ命に別状はないから良かった。
のびているとはいえ気持ちのよさそうに寝ているというか気を失っているから起こすのはやめとこう。

駐在さんは見つかったけれどもあの二人は全く見当たらない。
いったい何処へ・・・?
まさか里に帰ったとか言わないよな。
妙な不安を抱きつつ獣道を通る。
すると林の奥から話し声が聞こえてきた。
女性の声と、男の声・・・サムライとリンネさんだ!

視界で確認したら太い木の幹に身体を隠し、二人の話を盗み聞きする。
あまり良い気はしないが面と向かって聞いても教えてはくれないからな・・・

「あの童が本当に石を持っているんだな?」

リンネ「えぇ・・・」
歯切れの悪い返事にサムライは苛立ちを覚えたらしい。

「何かあったのか?」

リンネ「輝きが・・・七色ではなくて透明になっていたんです」

「・・・その話と、あの裏切り者の話を吐かせるまでは用がある・・・な」

リンネ「ミディさん達をどうする気ですか!?」
その返事にまたもサムライの怒りに触れたらしい。
抜刀して首元に刃を向ける。
「用が済めば斬る。邪魔する奴も同様にな。」
刃に負けず劣らずの鋭い視線をリンネに向ける。
仲間とはいえ・・・この男ならやりかねない!
体内で鼓動が大きく響くのがわかった。

リンネ「なら・・・先に私を斬って下さい!!」
サムライの表情が少しゆがむ。
躊躇いがでてきたのだろうか・・・
その隙を突いて間髪入れずに言葉を放つリンネさん。

リンネ「私はあの人達を殺させません、斬るのなら私を先に斬って!」
その瞳に躊躇いも迷いも含まれていなかった。
ただ強い覚悟を持った瞳で相手を見つめる。
サムライも観念したのか刃を鞘に収めたが・・・

「あぁ・・・斬らせてもらう、そこの奴を先にな。」

ミディ「ぇ・・・!?」
まさか気づかれた?
なるべく身体が完全に隠れるように一番幹の太い木を選んだけど・・・
そんなことよりも捕まったら・・・
ろくなイメージが湧いてこない。
少なくとも斬撃の一回や二回は確定か・・・
サムライはこっちの方へと着実に歩を進めてくる。
それを俺は覗き込みながら祈っていた。

―こっちへ来るなよ・・・死ぬのは勘弁だ!

この木まで後 三歩、二歩、一・・・

「ぐあぁぁぁ?!」
背中から突如上がる悲鳴。
振り返ると血を浴びたサムライが立っていて・・・
後ろで息を潜めていた刺客が倒れていた。

「リンネとそこの童。」
童・・・俺のことか。
横で俺が居る事に驚いているリンネさんとは裏腹に周囲は殺意で満ちていた。
敵の刺客は約十人位で戦場はこの雑木林の中。

「死にたくなければ手を貸せ」

ミディ「・・・了解!」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第291号
ページ番号
37 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日