第4章 フシギなフシギな光る石3
あれからあの鎧の事がいっこうに頭から離れない。
第一リンネさんの話が本当だとしたらその鎧の集団は何かの組織に従属した集団だろう。
しかも武装をして略奪行動をおこしたというのなら俺達では確実に歯が立たない・・・
俺達がとるべき行動は「王国」に助けを求める事。
しかし・・・問題なのはその選択が最善ではない事である。
まず王国の騎士団が動くような物証はない。
少なくとも惨事の舞台となった緑の里には行けない。
里の民も外への行き方はわからないとの事だった。
リンネさんが脱出する時もほぼマグレだったらしいし・・・
そもそも外界に里に関する情報が無い事から襲撃を受けた里の存在を証明できない。
それよりも・・・俺達の言葉に耳を傾けてくれる人がいない。
ディラさんならまだ信じてもらえる可能性があったものの・・・
このメンバーは皆、未成年。
リンネさんがこの中でも年長だがまだ17歳。
大人として接してもらうにはやはり後数年を要する。
ミディ「やはり駄目か・・・」
つい先程、話題にもでてきた「始まりのお話」と書かれた表紙を触れつつ長いため息を漏らした。
どうやっていくものかな・・・
シェア「またまた似合わない顔して~」
レア「お兄ちゃんらしくないよね~」
呑気に顔の大きさ程もあるキャンディーを舐めている二人。
よくこの状況でお菓子が喉を通るもんだな と関心したくなる。
シェア「あたしの雷があれば鎧の十や二十なんて楽勝よ!」
楽勝ねぇ・・・
あれ?
そういえばさっきからリンネさんの姿が見えない。
とりあえず二人に聴いてみっか。
ミディ「リンネさん どこ行った?」
という俺の問いに二人は同時に外の方へ指差した。
―答える時くらい飴を舐めるのやめろよな。
ミディ「ちょっと行ってくる」
シェア「どこに?」
ミディ「いや・・・リンネさんの所だけど?」
シェア「ふーん」
一瞬シェアの顔が鬼のような顔と重なったのは気のせいだろう。
昨日の事といい疲れてるな、今日は早めに寝ようかな。
とやや足早に外へと出て行く。
室内は私とシェアとパラディだけ。
でもパラディは何か夢中になっているから実質二人みたいなもんだね
シェア「な~んかむかつくわね」
レア「へ?」
いきなり何かな・・・
またお兄ちゃんと何かやらかしたのかな・・・
シェア「ねぇ・・・リンネさんの事をどう思う?」
いきなり言われても・・・
レア「う~んすごい綺麗で・・・優しいよね。」
とりあえずはこんな所かな・・・
あ・・・後もう一つは・・・
レア「料理もすっごく上手いから・・・いいお嫁さんになりそうだよね」
バキッ!メキキッ!!
レア「ひぃ?!」
いっきなりひびの入る音が聞こえた。
この家はそんなに古くない・・・じゃなくてシェアの飴の音だった。
何か飴がものすごい勢いで削れ・・・・いや砕いてるよ・・・
外に出てみたのはいいけどやたら風が強いな・・・
雲行きも少し怪しくなってきたし風もすっごく冷たくなってきた。
リンネさんの姿は見えないな・・・
ミディ「あれ?」
よく見たら警備を任されていた駐在さんがいない。
常に二人位いるはずなのに・・・
どこを見渡しても居る気配がしない。
―おっかしいな?
近くの茂み辺りを探してみると近くで物音がした。
茂みを掻き分けていく音だ。 誰か来る!
最近の癖はよく構える事。
ふと頭で今の自分の姿を第三者から見ている所が再生される。
「お前か・・・?」
茂みから現れた男。
とても長い剣、身の丈程もある剣を背中に背負っている。
その姿はとても目立つが、一番見てしまうのはその瞳。
こんな奴初めてだから説明をしにくいけど・・・とても冷たくて鋭利。
「そうか・・・お前だな・・・」
ミディ「な・・・何だよ?」
突如、剣を鞘から抜いてこっちに突きつける。
思った通りというか・・・刀身は長い。
目の前につきつけられている。
まぁこっちもやられてだまっている訳ではない。
長い刀身を手持ちの剣ではじき、距離を置く。
「持っているのだな?」
俺は黙って相手の反応をうかがった。
俺とあいつの間に少しの間、沈黙が流れた。
そしてあいつの顔に、確信の笑みが浮かぶ。
「石を・・・よこせ!!」