第4章 フシギなフシギな光る石2

「光石・・・?」
ここに居合わせたリンネさんを除く四人の声が重なった。
光石・・・つまりは魔法石のことだろうな。
でもどこかで聞いたような・・・なつかしい響きがする。

リンネ「光に石と書いて・・・・光石、その石の事ですよ」
顔に笑みを浮かべて答えるもどこかぎこちない。
答えにくい事なのだろうか・・・?
そんな疑問は後にして今は聞くことに集中しよう

リンネ「光石は・・・ただの魔法石とは違って・・・マナの含有率が段違いに多いんです」

シェア「何%よ?」

リンネ「この光石は・・・最低でもマナの含有率は85%はあります」

シェア「85!?」

シェア「記録では・・・52%の物が最高だけど・・・」
手持ちのメモ帳を開いて確認するシェア。
あの女の子らしいメモ帳の中身は見るとびっくりする程魔法の情報が書きこまれている。
俺も一度見せてもらったがあれは絶句するな・・・

レア「そんな石で魔法を使ったらとんでもない事になるよね」

リンネ「石の事は皆さん【一度は読んだ事がある】と思います」
と言い終えると同時に少ない荷物の中から一冊の絵本を取り出した。

ミディ「それって・・・【始まりのお話】だよな」
俺も小さい頃読んだ事がある。
絵本だから文字があまり読めないレアもよく読んでたな。
たしか内容が初代国王の物語を子ども向けの絵本にしたやつだ。


リンネ「本に書いてある以上の奇跡を起こす事さえ可能です。」

パラディ「・・・・ではディラさんとの関係は?」

リンネ「ディラさんとは・・・半年程前に出会いました・・・」
彼女は口を動かし続ける。

―この街より離れた場所に・・・私たちの故郷「緑の里」がありました。
そこは都市と比べたら不便ですけどそれでも都市にないものがたくさんありました。
きれいな小川、たくさんの小動物、あふれる緑・・・。
住み心地の良い故郷に住む私達は生まれてから死ぬまで故郷の地を離れることはありませんでした。
村ができてから外の世界の人達が訪れたという記録は一度しかありません。
しかし唯一訪れた人物もたまたま訪れてその後「緑の里」に居住することになりましたから・・・
外の世界は「緑の里」が存在する事を知らなかったのです。
そこに住む民達の事も・・・

・・・突如ディラさんは緑の里に現れたのです。
彼は自分の事を「ただの旅人」と名乗りました。
森で遭難したのでもないのにここに迷いこむはずがない!と・・・反対する方達もいましたが、結局ディラさんをお客として迎え入れました。

それから季節が一巡りするまで、ディラさんは里に留まりました。
外の知識は里にとって有益なものでした。
彼のなにげない一言が深刻な問題を解決する糸口であった事も多々ありました。
そんなこともあって私を含めた仲間達もいつしか彼を対等の友人として接していたんです。

彼は最後・・・誰にも別れを告げることなく立ち去りました。
きっと別れが辛かったから独りで旅立ったのだろう・・・
里の民は皆、口々にそう言ってました。

光石がなくなるまでは・・・

「!?」
全員に緊張が走った。
話が全て真実だとすればディラさんは犯罪者。
俺も、パラディも、レアも、シェアにも到底信じられない話だ。
しかし石を見たときの反応や、世間での石の価値。
追われていた事・・・全て辻褄が合う

ミディ「ちょっと待て! じゃ・・・あの賊はお前達の指示で・・・」

リンネ「それは違います!」
部屋中に響いた声は一瞬全員の動きを止めた。
嘘をついているようにも思えない・・・

―光石を奪われた事に気づいてから緑の里を囲む森の大捜索が行われました。
「素人がそう簡単に森を抜けれはしまい。」
「森の中で何一つ頼れるものはない、今頃迷っているさ」
一ヶ月間森の中を探しましたが見つからず、外界に逃げたという結論と共に捜索隊は解散・・・その夜でした・・・

突如鎧の集団が里を襲撃しました。
家々や木々に火を放ち民を惨殺していきました。
必死の抵抗も通用せず里は鎧の集団によって占拠され、民も私を含む三人を除いて全滅させられました。
おそらく今も鎧の集団は里に陣取っているはず・・・
帰ることのできなくなった私達は光石の発する波長を頼りに旅をしていました・・・
しかしその途中、追撃に会い仲間と逸れてしまい・・・

ミディ「シリウスに辿り着いたというわけか・・・」
静かに頷く彼女・・・

リンネ「おそらく貴方達を襲った賊というのは金で雇われただけの人達です」
最後に付け足すように話すとそのまま黙りこくってしまう。
そしてリンネさんは椅子から立ち上がると外の空気を吸いたいといって外へ出てしまった。
皆、リンネさんの後に続くように椅子から立ち上がるが俺だけはその場を動かなかった

「鎧の集団・・・」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第288号
ページ番号
29 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日