三章 わくわく!街へ行こう!3
早速シェアの荷物持ちという名目の死刑宣告を受けた。
俺の数歩前を行くシェアは上機嫌。
重い足取りである俺とは裏腹にシェアは軽快なスキップだ。
シェア「早くしなさいってばぁ!」
そんな無茶を言うなよ・・・
とりあえず聞こえていないフリをして同じように歩こう・・・
このままではいつまでたっても変らない
そう気づいたのか・・・
こっちに歩み寄ってきて・・・何する気?
ミディ「のわぁ!?」
シェア「ほら!行くよ!!」
いっきなり俺の手をつないでそのまま走り出していくシェア。
人ごみを器用にぬけて目的地へと急ぐ。
ってさっきから周りの人たちの視線が異様に気になる。
勢い良く走ってるからってこっち見すぎ って・・・
もしかして俺等ってカップルみたいに映ってる?
ふとそんな疑問が頭に浮かぶ。
繋いでいる手の感触はとてもあったかい・・・
離す気配もないその手をみて、もしかしてシェアって・・・・
・・・いやいや!そんな訳ねぇって!
元々シェアやパラディとは気軽に話し合える身分でもない。
俺とレアは身寄りもないただの孤児。
比べて二人は・・貴族の家柄。
どの道、結ばれるわけが無いんだって・・・
パラディはかわいそうだけど、こうして俺達が遊んでいられる事がおかしいんだ。
シェア「さぁ!ついたわよ!・・・あっ」
小さく呟いたと同時にさっきから放そうとしなかった手をパッと離した。
ようやく気づいたって感じだ。
少し頬を赤らめつつ、こっちを警戒する身振りを見せた事から俺の予想は正解らしい。
まぁ素でこう反応されるとすこし傷つく・・・
シェア「そこでちょっと待ってて!!」
ミディ「本当にちょっとなのか?」
俺が質問をした時にはもう遅かった。
走り出した時と変わらない勢いで本屋のドアを開けて中に入っていく。
―無視すんなよ・・・
と少しふてくされながら本屋の周りをブラブラと歩いてみた。
周りからは落ち着きのない少年だと思われるだろうが・・・
まぁ・・・今はそんなことどうでもいいや
それから二十分程経っただろうか。
シェアが引きずりながら持ってきた紙袋には大量の本が納められていた。
目安でだいたい四十冊近くあり、しかもその内の四割位は辞書並の厚さがある。
これでは持てないよな。
シェア「じゃあ はい!」
無邪気な程の笑顔で渡してくる。
・・・・仕方ない
ミディ「せぇの!」
渾身の力を込めて袋の底を持ち上げる。
・・・どうだ! と持ち上げたのはいいが・・・
とにかくバランスを崩しそうな程重い。
確実に持っている本のが重い だから袋の中で本が傾くと俺も倒れそうにな・・・。
ミディ「お・・わわわわ!」
街中で俺は見事に転んだ。
持っていた袋からは大量の本が道路に転がり、道行く人々の足元がパニック気味になる。
急な出来事であったため、避けれず本を踏まれる事もしばしばだ。
何とか集め終わったと思ったら・・・
シェア「ちょっと!どうしてくれんのよ!本がボロボロじゃない!!」
ミディ「な・・・」
シェア「この本だって・・・探し回ってようやく見つけた貴重な本なのに!」
まるで親に抱きかかえられる赤子のようにシェアの胸にくるまれているその本。
その光景は俺なんかよりその古びた本のが貴重である そう言っているように解釈した。
―そんな本なんかに負けるのかよ・・・俺は!
ミディ「・・・お前にとって・・・・・俺はただの荷物運び【ひとつでしかないらしいな・・・」
シェア「ぇ・・・?」
ミディ「俺はなぁ・・・俺はお前の奴隷なんかじゃないんだよ!!」
腹の底から・・・怒りがこみ上げてくる。
爆発しそうなその怒りの行き先を俺はあのお金を使って地面に放った。
地面に落ちたそのお金はやがて風にその身をゆだねる・・・
しかし・・・それでも今の俺の怒りは収まらなかった。
ミディ「大好きな本と一緒にいとけ!!」
一言吐き捨て、俺は後ろを向いた。
・・・しばらくはこの頭は冷えないだろう・・・
そう思った矢先だった。
後ろの方ですすり泣くような声が聞こえる・・・
もしかして・・・・泣いている・・・?
この時初めて自分がしてしまった事に気がついた。
俺があいつにした事を・・・
・
・
・
振り返りたい。
でもここまで啖呵きったんだ。
俺のプライドがそれを邪魔する。
振り返るどころか・・・
気づいた時には俺はこの場所から立ち去っていた・・・
そう・・・罪悪感から逃げるように・・・