二章 ぼろぼろローブの来訪者7

「あんた達!ふせて!!」
その声が暗雲の下に響き渡った。
そして・・・
轟音と共に稲妻が俺達のまわりを囲っていた賊達へと落ちた。
何度か周りが眩く照らされる・・・
輝かなくなったので俺達は周りを見渡した。

さっきまでの絶望的な陣形は崩れ去り周囲には複数の焦げた後・・・つまり幾つか落雷をしたということ。
そして俺達の目の前に立っているのは・・・
遅れてきた五人目のメンバーだ。

シェア「どう?感謝した?」

パラディ「姉さん!」

レア「感謝する~♪」

ミディ「あぁ・・・ありがとな!」
シェアは皆の様子をみてかなり満足そうな笑みを浮かべていた。
こっちもあの魔法のおかげで殺されずに済んだんだ・・・


ディラ「皆さん!」
その一言が周囲の異変を伝える事だと俺を含めた皆が気づいた。
シェアの雷で吹き飛んだ賊達は戦闘不能者もいるものの、まだ戦える連中のが多い。
陣形は崩れたものの数の利は相手側にある。
不利なことに変わりはないな・・・さてどうする・・・?

相手は皆、魔法への恐れよりも子どもにやられたという怒りで満ちている。
こうなると問答無用で命を狙ってくるだろうな・・・

ディラ「あなたは・・・まだ魔法を使えますか?」

張り詰めた雰囲気の中、ディラさんは小声でシェアに聞いた。
対するシェアの返事は・・・

シェア「いけるわよ!これくらいの人数なら!」
その言葉を待ってましたといわんばかりの表情を浮かべたディラさん。

ディラ「皆さん!シェアさんを守る壁になってください!」
次にディラさんは相手連中にも聞こえるような大声で叫んだ。
そして俺達の顔を順々に見て返事を確認する。

ディラ「この方法なら・・勝てます!!」
相手への挑発を含めたこの一言で、連中は動き出した。



「餓鬼どもがぁ!!」
一番に踏み込んできた相手を喰い止めたのはパラディだ。
盾をたくみに操って、敵の足を見事に止めている。

レア「私だって!」
そういってレアも負けじと他の敵の足止めにかかった。
力で負ける分、攻撃をかわして時間を稼ぐ。

ミディ「負けるかぁ!!」
剣と剣が俺の目の前で交差し、乾いた音を上げる。
そのまま剣を通じて相手と力比べだ。

徐々に連中の勢いが強くなっていく。
力比べで互角に押していたというのに、少しずつ後ろへと押されだしている・・・
二人とも同じような状況だろう・・・
相手もまた一つの位置に固まりつつある。
まだか・・・ シェア・・・・・
声には出さず心の片隅でそう祈った。


シェア「・・く・・・・来るわよぉ!!」

ディラ「今です!!離れて下さい!」

この言葉を合図に皆、足止めをやめて後ろへと飛んだ。
そして俺達の動きに困惑し、連中が動作をやめた瞬間・・・

「ぐわああああああああ!?」
敵達の悲鳴が重なって聞こえた。
溜めに溜めた渾身の雷はさっきまで壁となっていた一点に集中した。
落雷は連中を巻き込み、緑の絨毯からは赤い火が上がった。

煙が濛々と上がって、視界を曇らせる。
周囲には俺とたまたま近くにいたレア位しか見当たらない。
敵はいないな・・・

ディラ「気をつけて!」
その一言が戦場の空気に引き戻してくれる。
まだ終わっていない!
視界の悪い今・・・

「死ねぇ!」

ミディ「何だ!?」

現状を理解できたのは視界を遮るカーテンが風になびいた時だった。
禍々しい得物を手に取った男が、杖と石を握った少女に対して力任せの一撃を加えようとする所を。

しかし少女は・・・・この状況下で笑っていた。
宝石は輝く、彼女の確信を後押しするかのように。
そして叫ぶ。
  
シェア「遅いわよ!」
蒼い一筋の光は、振り上げた得物を通して男に流れ込んだ。
悲痛な叫びは轟音と共にかき消され・・・
最後は男を含め、その周囲をも黒く焼き焦がした。 
その焼け焦げた跡は戦闘の結果も示しだしていた・・・

敵が・・・皆逃げていく・・・
ということは・・・・

パラディ「僕達・・・助かったんだ・・・」

シェア「違うわよ・・・勝ったのよ!」

レア「ばんざ~い! ばんざ~い!!」


こうして俺達は二度目の戦闘を無事に乗り越えることができた。
家に辿り着くや、すぐに駐在さんからの事情聴取。
ディラさんに説明してもらい、ここの見回りを強化してくれる事にしてもらった。
これで安心して夜を過ごせる   と皆は上機嫌だったが俺だけ浮かれた気分になれなかった。
俺の知らないところで何かが起こっている・・・
そしてその事に少なからず俺達は巻き込まれているんだ。

賊達の事、石の事、鎧の集団達・・・
真っ暗で何も無い天井にこれらの姿が浮かんでは消える。

そう・・・まるで夜空に瞬く星みたいに・・・

このページについて
掲載号
週刊チャオ第285号
ページ番号
15 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日