二章 ぼろぼろローブの来訪者5

リビングの窓の外に怪しい人物が一人・・・二人。
―って事は・・・

レアの部屋の窓からも同じような連中が見えた。
どうやら嗅ぎつけられたみたいだ・・・
幸い・・・相手側はこっちが気づいたとは思ってない。
地下の倉庫にディラさんと石を隠してしまえば・・・


「失礼するぜ」

ミディ「な・・!」
先手をうったのは相手側だった。
玄関から堂々と一人の男が入ってきていた
包囲はもう済んだと考えた方がいいな・・・

「この男をしらねぇか?」
といって差し出してきたのは人相書きだ。
乱暴に折られた痕が残る紙にはディラさんの顔が正確に描かれていた。
少し動揺してしまったが・・・ここで黙れば怪しまれる

ミディ「いや・・・しらねぇな。」
ごつい男の瞳をキッと睨み返す。
全身から冷や汗が出てきそうだ・・・
ここでばれたら俺達皆、殺されるかもしれないからな
―頼む!引き上げてくれ!!
心の中でそう祈った。

「念のために・・・部屋の中もみせてもらう」

俺の願いは通用しなかった。
リビングをずかずかと入っていって、まずレアの部屋のドアを開ける。

パッと見渡して誰もいないと確認するや、次は俺の部屋の方を見る。
―そっちには行くなよ・・・頼むから・・・
必死の祈りも効果は無かった。
静かに俺は腰の辺りに手を伸ばす。

男は一歩、一歩と部屋へと近づいていく。
やけにゆっくりと見えるのは俺がそいつの動きしか見てないから・・・
男の手がドアノブを掴んだ瞬間。

「ぐわあああ!?」
男は悲痛な声を上げた。
俺の手には血で汚れた剣が握ってあった。
そう。奴の注意がドアにいっていたあの瞬間を狙って斬ったんだ。

ミディ「逃げるぞ!皆!!」

俺は大声で合図をした。
外の連中にも聞こえる大声で。
どうせ予想外の事が起きているのはもう外にも伝わっている。

扉を開けた音が重なった。
俺の部屋から三人が出てくると同時に玄関からは二人、慌ただしく入ってくる。
まだ相手は武器を手に持っていなかった。
慌てて武器を取ろうとするその隙を狙って相手の胴を一人は斬りつけ、一人は刺した。


倒れた事を確認した俺は先導して外へと飛び出した。
続いてレア パラディ 最後にディラさんという順番で。


ミディ「みんな!こっちだ!!」

逃げた方向は町の方角。
しかし市街で戦闘を繰り広げる気なんて毛頭無い。
どっちにせよ町まで走り続ける体力が今のディラさんにあるとは思えない。
だから・・・
町から近くて・・・
それでなお被害が最小限で済む所に。

つまり・・・戦場は家から町へと続く街道となるな・・・

ディラ「このまま町まで逃げるのですか?」
その事をいち早く察知したのがディラさんだった。
ミディ「わかってる。そのつもりだ」

後ろから追いかけてくる相手と向き合う。
手には昨日何度もお世話になった短剣ではなく、それより長い一般的なサイズの剣だ。
で、恩人の短剣は・・・というとレアの方だ。
俺やパラディと比べると弱い。でも戦える方だし、丸腰で放っておけないしな、それに昨日の俺みたいにレアも守ってくれるかも・・・
パラディは昨日と同じ剣に盾まで持っていた。
少し・・・心強い気分だな。

ミディ「皆、怪我はするなよ!」

レア「おっけ~♪」

パラディ「はい!」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第284号
ページ番号
13 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日