第一章 ピカピカ宝石 雷雲と共に5
ミディ「来るぞ!」
雨で視界が悪いのでとにかくそう叫んだ。
俺の方は斧を持った奴がこっちに走りよってくる。
「死ねぇ ガキ!」
振り下ろした一撃が身体をかすめる。
少し痛かったがたいしたことはない。
ミディ「子どもをなめるなぁぁぁ!」
さっと懐に近づいて短剣で二回、相手の両腕を斬り裂く。
血しぶきが俺の短剣、そして身体に付いた。
でもすぐに雨が血を洗い流してくれる。
血で汚れた事は気にせず、他の3人を助けに向かう。
雨の勢いは変わらず強く、霧みたいに視界を邪魔する。
音も、雨でかき消されている。
ミディ「みんなぁ~!どこだぁ~?」
周囲を見回してみるも何も見つけられない。
ミディ「お~い!」
すると横からいきなり男が倒れてくる。
見るとさっきの賊の一人らしい。
胴に二回、右腕を一回刺されていた。
小さな声で呻いているが、致命傷をさけている。
パラディ「ミディ! 大丈夫!?」
男が倒れて少ししてからパラディが現れる。
パラディの剣には血がまだ生々しく付いていた。
たった今仕留めた所らしい
パラディ「二人は!?」
ミディ「いや・・・こっちは居ない。」
二人は武器無し ・・・あっ!
ミディ「そうだ!シェアは今魔法を使えるのか?」
シェアはまだ見習いだが魔道師。
あいつが魔法を使ってくれたらこの場を切り抜けられる。
と大きな希望を持つが・・・
パラディ「多分持ってきてないよ・・・石を。」
ミディ「・・・こうしちゃいられねぇ!」
パラディと俺は離れないように固まってシェアとレアを探す。
二人とも大怪我を負ってなかったらいいけど・・・
パラディ「ここは分かれて探したほうがいいよ」
ミディ「いいや・・・そんなことして相手二人に同時に会ったら勝てるのか?」
パラディ「うっ・・・ で・・・でも!」
ミディ「分かっている。このまま放ったりしねぇよ」
とはいえ場所が分からないのはマジでお手上げだ。
どうにかして二人の場所がわからねぇのかよ!!
何処だ・・・何か・・・・・合図でも何でもいい!
パラディ「ミディ!!」
――!!
ミディ「こっちだ!」
俺は何か聞こえたわけでもなければ姿がみえたわけでもない。
いわば勘。
根拠も何もないまま走った。
でも不安でもなかった、むしろ確信さえあった。
こっちにいけば・・・見つけられるんだって!
パラディ「あそこだ!」
先に二人に気づいたのはパラディだった。
シェアとレアが二人 追い込まれていた。
ミディ「行くぞ・・・」
できるだけ気配を殺しつつ、ばれないように背後から・・・
まだ・・・まだ・・・遠い。
雨で相手は気づいてない
今だ!
パラディ「やぁぁぁぁぁ!!」
先にパラディが渾身の力で相手に斬りつけた。
相手は不意を襲われ 抵抗できずに倒れる。
そして俺もパラディに続いてもう一人の背中を二回斬った。
パラディの時と同じように相手はのびてくれた。
ミディ「大丈夫か?」
シェア「ミディ!パラディも!」
本当に間一髪だった。
たいした怪我もしてないし・・・
良かった 良かった。
ふとパラディの背中を見ると斬られた傷が生々しく残っていた。
ミディ「うぇ!? パラディ!おま・・」
言いかけのうちに口を塞がれる。
そして耳元で囁いた。
パラディ「大丈夫、今言ったら姉さんがうるさいから」
ひどい傷だが、心配させないようにと・・・
ミディ「こっから逃げるぞ! さっさと・・・!!」
「どこに行くんだい?」
ミディ「!!」
最初に俺が倒したはずの男はまだ身体は動くし戦意ものこっていた。
現に、俺が短剣を持った手の方をがっしり掴んで放そうとしない。
ミディ「痛てててっ」
強い力で握られ短剣を落としてしまう。
そして男は醜い笑みを浮かべた。
この時をまっていたといわんばかりに。
「よくまぁ暴れたなぁ・・・まぁ一番手はお前だ・・な!!」
ミディ「がっ!!」
近くの木の幹に向かって投げられた俺は衝撃で動けなくなった。
そしてひるんでいる間にも男は近づきゆっくりと斧を高々とあげる。
ミディ「くっ・・っそ・・・」
斧が一番高いとこまで振り上げられる。
視線が定まらず、雨のせいもあってよく見えない。
ただ、最後にこう聞こえた。
「死ね」