第一章 ピカピカ宝石 雷雲と共に6

ぼやけた物がこっちへと振り下ろされる。
俺の命を抉り取ろうとする死神の一撃だ。
おれは怖くなって目を堅く閉じる。

レア「お兄ちゃん!!」

レアの悲鳴・・・
パラディとシェアが絶望的な目でこっちを見ていたな・・
俺って・・・まだまだ子どもなのにもう死ぬのか?
死ぬなら本当にあっけないものだよな。
たまたまその日に限って行った出来事が積み重なって・・・死。
こんな事ならもっとしっかりと済ませておくべきだった。
皿洗いも中途半端に終わらせてきたし・・・
それよりもレアに料理のコツとかも教えてないから・・・

あれ・・・何とも・・・・・・・ない?
ゆっくりと目を開けると後数センチというところまで斧は迫っていた。
しかしそこから更に動く気配はなかった。

どうやら予定が狂って混乱しているのは相手側だった。
「くそぉ・・・これは・・・魔法!?」
魔法によって、身動き一つとれない状況となっている。
シェアは・・・使えないとか言ってたし・・
パラディ「じゃあ姉さん・・・?」

シェア「今は石がないからできないわよ!」
パラディの様子だと・・使った訳がない。
じゃあ・・誰が・・・?
いや・・・誰でもいい!好都合だ!!
木の根元から転がるように逃げるとさっき落とした短剣を拾った。
そして・・・
一回、二回と斬りつけておいた。


声にならないうめきを上げて最後の一人は気絶した。

何とか勝った・・・
ほっと胸をなでおろす俺。
一時は命の危険もあったが・・・あの魔法をかけたのは・・?
いや、かけた人物をどうこう考えるなんてどうでもいい。
今こうして「生きている」事を素直に喜んだ。 

またも世界が一瞬照らされた。
雷がまたどこかで落ちたらしい。

ミディ「あれは・・・?」
一瞬の灯りで気づいた。
俺達の周りに・・・誰かいる!
出来る限り全神経を集中して何かの正体を探ろうとする。
あれは・・鎧・・・?
しかもかなりの人数だ・・・

パラディ「ミディ、レアが!」
その一言で我に返った。
行ってみるとレアがうつぶせに倒れていた。

シェア「熱がある・・・」

パラディ「風邪をひいちゃったんだよ!」

ミディ「・・・とりあえず俺がレアをおぶるからさっさと逃げよう! こんな所!」





そう言って俺達は戦場となった湖から逃げた。
未知の者達に襲われた恐怖。
もしかして後ろから追いかけてたりするかもしれない。
前に仲間が待ち伏せしてるかもしれない。

シェアとパラディ、二人と別れてからも家の中が怖くて怖くてたまらなかった。
レアをベットに寝かしつけ看病をする事。ただでさえ疲れているのでかなり辛い。
しかもあのとき見えた追っ手がいつ来るかわからないため 寝てるわけにもいかなかった。
ただ一秒でも早くあの窓からいつもと変わらぬ朝日が見れる事を心から願っていた。

続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第282号
ページ番号
6 / 63
この作品について
タイトル
剣と石と・・・
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第281号
最終掲載
週刊チャオ第313号
連載期間
約7ヵ月13日